投資物件を購入して安定した収入を得られるようになれば安泰、と考えている方は多いでしょう。長期間の保有を前提にした不動産投資を始めたのであれば、おそらく「投資物件を買い替えする必要はあるのか?」と疑問を感じるかもしれません。

しかし、買い替えを行ったほうが良い物件やタイミングは存在していますし、買い替えによってリスクを回避できるケースもあるのです。
今回は、投資物件の買い替えの必要性やタイミングなどをご紹介します。



目次
1. 投資物件を買い替える必要性とは
2. 投資物件を買い替えるタイミングとは
3. 買い替え時に発生する税金に注意
4. 税金の特例措置と適用条件
5. まとめ

1. 投資物件を買い替える必要性とは


全ての投資物件が必ず買い替えを行う必要があるというわけではなく、中には売却をする必要性が低く所持したままでも問題ない物件も存在しています。
では、どのような物件が「買い替えたほうが良い」ものなのでしょうか?


■追加費用が発生する物件
追加費用を支払う必要性が出た場合、その対策として買い替えを選択する手段があります。
最も代表的な追加費用は“マンションの大規模修繕”です。

大規模修繕は一般的に、12年~15年単位で定期的に行われています。費用は修繕積立金として毎月徴収されていますが、積立金だけでは足らないというマンションが多いのが実状です。その足りない費用を補うため、急激に積立金の値上げがされる、または一括徴収されるケースがほとんどになります。
マンションを投資物件として所有している場合は、この大規模修繕が行われる前に物件を売却し買い替えを行うことで、追加費用の発生を回避することができるというわけです。


■資産価値の低下リスクが上昇した物件
不動産の資産価値が下降する兆候が見られた場合、その評価が変わってしまう前に売却したほうが良いケースです。

投資物件を含めた不動産の価格は一定ではなく、状況に応じて上昇や下降をするものになります。そのため、この先価格が低下しそうと判断したのであれば、価格が下がりきる前に買い替えを行ったほうが損失を最小限に抑えることが可能です。資産価値が低下する前に売却すれば、そのリスクも回避することになります。


2. 投資物件を買い替えるタイミングとは


投資物件を買い替える必要性をお伝えしましたが、具体的にはどのタイミングで買い替えを行えば良いのでしょうか?
具体的に見ていきましょう。


■大規模修繕が予定される前
マンションの大規模修繕実施の前は追加費用を徴収される可能性が高いことから、その前に売却を行うと支払いを回避できる、とお伝えしました。

しかしこの売却するタイミングは、修繕工事直前ではほとんど意味がありません。
マンション理事会や総会で「修繕積立金の値上げ」や「一時金の徴収」が可決されてしまった時点で、売却時にはそれを“重要事項説明書”に記載して買手に説明する義務が発生します。これによりマンションの売却価格に大きな影響を与えることが考えられるのです。

そのため、大規模修繕実施が検討され始める前である、築10年あたりが売却のタイミングになります。築年数が高い中古マンションであれば、過去の修繕記録から次の修繕工事時期の予測を立てるという方法もあるでしょう。


■売却額に変化が見られた時
不動産市場は様々な要因によって変動するものであり、買い替えを検討するのであればこの動きの見極めが必須です。
中でも中古マンションの価格は顕著に影響を受けやすいため、毎日の相場チェックが重要になります。上昇を続けるのか、または下降に転じるのかその変化を読み取り、適切なタイミングで買い替えが行えるようにしましょう。


■周囲環境に変化が見られた場合
周囲環境の変化によっても不動産価格は上下します。
たとえば近場の大学がキャンパス移転した場合、所有する物件が学生向けであれば評価額が著しく下がることは簡単に予想できるでしょう。同じ理由で、周辺企業のオフィス移転、病院や大型商業施設の閉鎖なども大きく影響を受けることは想像に難しくありません。
ほかには、都市開発計画などにより価格上昇が見込めるケースもありますが、その計画変更によって評価額が上昇どころか下降することもありえます。物件の数値を見ることも大切ですが、周囲環境の情報収集を欠かさないこともリスク回避には必須と言えるでしょう。




3. 買い替え時に発生する税金に注意


不動産の買い替えによって、税金が発生することを忘れてはいけません。
それ以外にも手数料などもありますから、それを含めた上で買い替え検討を行う必要があるのです。


■登録免許税
買い替えに伴って新しい投資物件を所得したのであれば、所有権が自分のものになったことを登記する必要が出てきます。また、以前の投資物件売却により、所有権が次の買主に移ったことも登記しなくてはなりません。
その際に発生する税金が、登録免許税です。
この登記は本人が行うことは可能ですが、一般的に司法書士に依頼することが多くなっています。もちろんその場合は司法書士への報酬を支払う必要が出てくるでしょう。


■不動産所得税
登録免許税と同じく新しい物件の所得によって課せられる税金がこちらの不動産所得税です。
相続など一定の条件下では非課税ですが、買い替えであれば課税対象になります。
なお、不動産所得税は物件の購入と同時に支払うというものでありません。所得後4ヵ月から1年半後に納税通知書が届きますので、そのタイミングで納付します。場合によっては高額になるケースもありますので、用意を忘れないようにしましょう。


■印紙税
契約書などの文章を作成した場合、印紙税が課せられます。不動産の取引には当然“売買契約書”を作成しますから、こちらが発生することになるのです。
売買契約書を作成した際にはすでに添付されていることが多く、後からその費用を支払うかたちになります。




4. 税金の特例措置と適用条件


投資物件の売却時に発生する税金や手数料などを無くすことはできませんが、その負担を軽くする特例措置も存在しています。
ただし、特例措置というものは自動的に適用されたり教えてもらえるなどということはほとんどなく、こちらが知ろうとしない限り「あることすら気づいてなかった」ということも少なくはありません。
どのような特例措置が用意してあるのか、こちらで確実に抑えておきましょう。


■譲渡所得が発生したケース
不動産の売却に伴って売却益が出た場合、“譲渡所得”が発生します。
売却益による譲渡所得税は、一般的な所得税とは異なり通常の損益通算を行うことはできませんが、3つの特例及び軽減税率の対象となる可能性があります。

まず、“3,000万円の譲渡所得控除”。この控除を受けるためには、居住用財産であったか、3年以内に居住用財産特例を受けていないか、売主と買主が親子や夫婦などといった特別な関係ではないなど、いくつかの条件があります。

また、居住用財産の買い替え特例と軽減税率もありますが、こちらは所有期間が10年を超えた居住用財産であるか、3年以内に居住用財産特例を利用していないか、今回の売却時にも他の居住用財産特例を受けていないか、などといった条件を満たす必要があるでしょう。


■譲渡損失が発生したケース
不動産は、所得したときの金額よりも売却額が低いことも多くなっています。
このように売却損が出た場合は、“居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例”が受けられる可能性があるでしょう。

条件として、5年以上保有している居住用財産であること、ローンの借入残高が10年以上残っていることなど、いくつかの条件をすべて満たす必要があります。しかし適用されることによって他の所得との損益通算が出来るようになるほか、譲渡損失の繰越控除も可能になりますので、条件を満たしているのであればぜひとも利用したいところです。


5. まとめ


投資物件の買い替えを行う必要性やタイミング、発生する税金などについてを紹介しました。

バブル期の不動産投資といえば、不動産は所有しているだけで自然と価値が上がるものであり、売却時には相当な利益を得ることができました。しかしバブル崩壊後は不動産価格が値上がりすることがほとんどないため、「所有した不動産を第三者に貸し出し、家賃収入を得る」というかたちが不動産投資の一般的なスタイルになっています。つまり、“不動産は長く所有するものである”という考え方はけして間違ってはいません。

しかし、長期保有すればするほど追加費用やリスクが発生する確率は上昇するものです。状況次第では買い替えを行ったほうが損をしない場合もありますので、長期保有にこだわりすぎることなく場合によっては“買い替え”も選択肢に入れておくことをおすすめします。

小雪