2019年5月に令和がスタートし、10月には消費増税、そしてすでに年末も近づいてきました。

大小問わず様々な出来事に加えて、今年は巨大台風による被害も相次いだ結果、これまで以上に不動産市場が読みにくくなっています。
場合によっては100万以上のプラスやマイナスが出ることも珍しくない不動産売買ですから、
しっかりと先を見据えた状態で購入や売却を考えたいもの。

今後、不動産市場がどのように変化していくと予想されているのでしょうか?



目次
1. 不動産価値はこの先どう動く?
2. 不動産の3つのパターンと現状
3. 住宅ローンの金利の動きを見る
4. 消費増税の影響は


1. 不動産価値はこの先どう動く?


不動産を売買しようと考えている時にまず気になるのは“不動産価値”でしょう。

この不動産価値が変動する際に震源地となるのは、東京都心部です。
そこから波が広がっていくような形で東京23区内へ、さらに東京を囲んでいる神奈川や埼玉、千葉へと広がっていき、その後大阪や札幌、名古屋などの各大都市圏へと影響を与えていく形となります。
中古マンションの取引価格は株価の動きに併せて非常に反応しやすく、逆に新築マンションの場合は売主(デベロッパー)の価格コントロールが強いため、すぐに反応はせずにそこからタイムラグが生じます。
中古・新築でそのような差はありますが、不動産市場動向を予想することと、株価動向を予想することは、ほぼ同じ意味を持つことになるのです。
そして日本の経済は海外の経済とも連動しているため、国内だけではなく海外の動きも重視しなければなりません。

世界経済は現時点でもかなり不透明な上に、さらに深刻化が進む貿易摩擦や地政学的緊張の高まり、国際協調の不安感などの理由から、かなりの打撃を受けています。
それに伴って各先進国の不動産市場も減退を見せており、かつては東京よりマンション価格が高騰していた中国、アメリカ、シンガポールなどをはじめとする主要都市でも、頭打ちどころか下降傾向がみられるようになっています。

2012年末に自民党が与党に復帰して以降、日本の景気は右肩上がりで回復を見せていました。
特に東京オリンピック開催が決定してから東京都心では不動産価値が一気に高騰。周囲のマンション価格も含めて上昇を続けています。

しかしここから先は、世界経済の不透明さや不安定さもはっきりと現れていることから、今まで以上に不動産価値が伸びることはほぼないのではないかとの予測がされているようです。
それは頭打ちにとどまらず下降が見えてくる可能性は否めないものの、各先進国の不動産価値の状況や東京都心の不動産の需要などを考慮に入れると、極端と言うほどではなく下落幅はある程度限定的なものになるのではないでしょうか。


2.不動産の3つのパターンと現状


ひとくちに不動産と言っても、大まかに分けると3つのパターンに分けられるようです。

まず1つ目は、“価格上昇・維持”している不動産。都心部や知名度が高い人気エリアなど、空き家や空き部屋が出ても間を開けることなく次の住民が入っているようなエリアです。

2つ目は、極端に下がることはないものの、長い目で見るとじわじわと“価格が下降”を続けている不動産。
都心部からやや離れ通勤・通学に時間がかかったり、駅から離れすぎているエリアなどがこちらに当てはまるでしょう。

そして3つ目は、“無価値・マイナス価値”の不動産です。
無価値はともかく、特に所持しているだけで資産が減っていくようなものは「負動産」とも呼ばれるほど。
例を出すと地方に多い戸建の空き家などが相当し、買手が付かないため売ることもできず、ただ固定資産税を毎年払い続けているような状況が典型的なマイナス価値の不動産に当たります。

なぜここまで差が生まれてしまったのかと言うと、住宅の広さや快適性などよりも、とにかく利便性が最重視されるようになったことが理由のひとつとして挙げられるでしょう。

かつて「マイホームと言えば一戸建て」と言われていた時代であれば、ベッドタウンと呼ばれる都心からやや離れた郊外エリアにマイホームを建て、そこから時間をかけて通勤するというスタイルが一般的でした。
しかし最近では「勤務先に近い」、「都心部に出やすい」、「駅近」など、なによりも交通利便性が優れている立地であることを大前提にして住宅購入を考える傾向が強くなっているのです。
とにかく便利な場所であれば最低限寝る場所さえ確保できればいいと、6畳以下のいわゆる狭小物件がニュースなどで話題になったのがその典型的な例なのでしょう。

さらに近年は共働きのファミリー世帯も増加傾向にありますので、通勤はもちろん、商業施設、保育所や学校、病院など生活に必要な場所が集まった都心部を選択するのはある意味当然のことになるのです。
また、30歳代以下の若い世代の自動車所有率が極端に下がっている事も要因になっています。

郊外では電車やバスの本数や路線数が少なく、車移動が前提となっている場所も多いため、車がないと途端に生活することが難しくなります。
逆に、都心部では渋滞が多く、駐車場は少なく、駐車料金も高額であるケースも少なくないでしょう。
公共交通機関も充実していることから、車がなくても生活に困らないどころか、逆に所持していないほうが生活しやすいとも言えるのです。

このようなことから条件の良い人気の場所に人口が集中して価格が上昇し、それ以外の場所は人口減少を起こして買手が少なくなり、同時に価格も下降しているのでしょう。


3. 住宅ローンの金利の動きを見る


住宅を取得しようとしている方が価格の次に気にするのは、おそらく“金利”なのではないでしょうか。
特に、マイホームを購入する際に大半が住宅ローンを利用するだけあって、住宅ローン金利の動向次第では検討のし直しもあり得るからです。

2016年以降、長期金利はコントロールされている状態となっており、一時期世界景気の不安定さによって多少の揺れは見られたものの、よほどのことが起きない限りは大きな変動はないとみられているようです。

しかし、住宅ローンは最長で35年、平均で15年ほどをかけて返済を続けていくもの。
いつ、何が起きるのか誰にもわかりませんし、専門家やプロでも10年、20年先を予測することはほとんど不可能です。
が、現在よりは上昇していると考えておいたほうが間違いはないでしょう。

「低金利の今が住宅購入のチャンス」、などという謳い文句もおそらく何度も聞いているかと思われますが、現時点で変動金利型で住宅ローンを返済している方も「固定金利型に変更するチャンス」とも言えるのです。

固定金利型のデメリットとして、変動金利型より金利がやや高いため割高になることが挙げられますが、変更した時点での金利で固定するため、この先金利が急上昇したとしても支払総額が増えることはないというメリットがあります。確率が0%ではないですがこの先これ以上金利が下がることが望めないのであれば、変動金利型で上昇の動きに怯えるより固定金利型に変更したほうが安心できるでしょう。

もちろん、何より金利が低めに設定されているという変動金利型ならではのメリットもありますから、誰もが固定型に変更したほうが良い、というわけではありません。
返済額が残り少ない場合や、繰り上げ返済の予定があるなど、金利変動型でも見通しが出来ている状態であれば、無理をしてまで変更する必要はないと言えます。

実際に変更するには手間も時間もかかりますし、ケースによっては大したメリットにはならないという事もあります。自分たちの資金計画やライフスタイルに合わせて、住宅ローンの金利タイプを選択したいところです。


4. 消費増税の影響は


2019年10月から消費税が10%に引き上げられました。

しかし、前回の8%導入前後に発生した駆け込み需要とその反動と比べるとそれほど大きな影響はなく、現時点では大きな混乱はみられていません。
増税分が戻ってくる形になる住宅ローン控除の期間延長、すまい給付金の対象者の拡充と限度額の引き上げ、次世代住宅ポイント制度の再開など、様々な手厚い購入支援策が用意された結果が功を成したのかもしれません。

しかし、「増税前と増税後いつ買えば損しないのか、それとも見送ったほうがいいのか?」と多くの方が悩んだでしょう。
確かに、不動産の購入は小さくはない金額の買い物ですから、できるだけ損しないで買いたい、と考えてしまうのが心情です。

ですが、目先の増税額ばかりに気を取られて資産価値に期待できない不動産を慌てて購入してしまうより、多少かかってしまったとしても資産価値の高く落ちにくい不動産をじっくりと選びぬいてから購入を決めたほうが、長い目で見てもお得なのではないでしょうか。

投資目的で不動産売買をしているのならばともかく、家族が長く住み続けられるマイホーム探しをしているのであれば、不動産市場の動きや金利の上昇や下降はそれほど重視するものではないのかもしれません。

多少の損得感情より、結婚した、子供が誕生した、進学させたい学校がある、親と同居したい、夫婦2人にちょうどいい家が欲しいなど「家庭内で家を購入する理由」が見つかったその時が購入タイミングでもあるのです。

外的要因に惑わされることなく、家族全員で相談し無理のない資金計画を立ててから、後悔のない納得のできる物件探しをしたいところです。

小雪