政府が「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げるようになって、多くの人が“投資”に興味を持つようになりました。
不動産投資もその例にもれず多くの人が始めるようになり、特にサラリーマンにおすすめの副業として、書店でも不動産投資の本が並べられているほどです。

ですが、“不動産会社はどうして不動産経営をしていないのか?”と思ったことはないでしょうか?
その理由を、不動産投資に発生するリスクなどと併せて考えてみましょう。



目次
1. 不動産会社は堅実性を重視している
2. 不動産投資を行う層とその実状
3. 確実に成功するという保証はない

1. 不動産会社は堅実性を重視している


不動産会社であれば、一般の人はもとより本業の不動産投資家よりも投資物件を多く見ているはずです。
これまでどのような投資物件が存在し、どのような物件がどのくらいの価格で扱われてきたのか、間近で見てきた不動産会社はまさに不動産投資のプロとも言えるかもしれません。その上、サラリーマンを含めた個人よりも会社のほうが社会的信頼度が高いため、金融機関から融資を受けやすいという事実があるでしょう。

しかし、ほとんどの不動産会社は不動産投資を行ってはいません。それは、“リスク”を考慮しているからに他ならないからです。

大半の不動産会社は、売りたい・貸したいと考える人と、買いたい・借りたいと考えている人をつなげる「仲介業」を行い、そのその仲介手数料という形で収入を得ています。
その一方でマンションやアパートの経営は、空室、災害、修繕など様々なリスクが伴うもの。そもそも不動産投資は長い期間で資金を回収するものであり、短期間で結果が出るものではありません。そのような危険を冒してまで不動産投資をするよりも、不動産投資家に投資物件を勧めてその仲介手数料で収益を上げるほうが「堅実である」と考えているのです。


■不動産投資をしている会社も
もちろん、不動産投資を行っている不動産会社も存在しています。大家からアパートを一棟借り上げて管理・運営を行うサブリーススタイルを取っている会社や、土地を購入してマンションや分譲住宅を建設したのちに販売する大規模な会社もあります。
ただしそこまで行う不動産会社は多くはなく、むしろ不動産会社というよりはすでにデベロッパー(開発業者)に近いと言っても良いかもしれません。





2. 不動産投資を行う層とその実状


不動産投資というより、マンションやアパートなどを経営している人の中で最も多い層は、元から土地を所有している地主がメインとなっているようです。地主ならば土地を新たに購入する必要もありませんし、そのまま土地を遊ばせているよりもマンションなどを建てたほうが節税になります。その上、第三者に貸し出すことで家賃収入として利益を得ることができるからです。

しかし地主の場合、すでに所有している土地を利用することが前提ですから、もともと条件の良い土地を所有していた場合を除くと、確実に入居者が望めるようなエリアというわけではありません。また、何もない状態の土地に新築で建設しなければならないため、結局のところ必要ないのは土地代だけであり、建物代などといった初期投資金額が嵩むことも避けられないのです。

また、不動産投資ブームに乗って新たに参入してくる層も増加傾向にあります。
不動産投資をビジネスとしっかりと捉え、知識を身につけることや情報収集を継続的に続けて成功を収める人がいる一方で、株や債券などと同じように、マンションやアパートを購入して持っているだけで利益が得られると捉えていた結果、空室リスクや家賃下落リスクなどに悩まされた末に不動産投資からの撤退を余儀なくされた、というケースも実は珍しくはありません。





3. 確実に成功するという保証はない


不動産投資はたくさんの投資の中でも、特に知識と手間を必要としているものになります。
予備知識もなしに始めて簡単に成功が収められるようなものではないのです。

まず不動産投資者が経験するのは、空室リスクでしょう。
新築の状態であればこれに悩まされることはありませんが、築年数が増え、建物に古さを感じてくるに従ってじわじわと人気が落ち、入居者希望者も減ってくることになります。周囲の新しいマンションに入居者が流れることになってしまえば、こちらは家賃を下げるか、もしくはリフォームなどで心機一転を図る必要が出てくるかもしれません。

同じく、入居者トラブルも発生するものです。
家賃滞納をはじめ、話し声や足音などといった騒音トラブル、ゴミ出しのルール違反、ペット問題など。様々な考え方の人が1つの建物に集まって生活するため、こういったトラブルは避けることが出来ません。放置していても解決するどころか入居者の退去につながってしまうため、放っておくわけにはいかないのです。
昔であれば大家(オーナー)は建物の主であり立場が一番上であったため、ある程度の融通が利きましたが、最近では立場が同じどころか、礼金敷金ゼロ+フリーレントにしたりと「住んでもらっている」という感覚に近いといっても過言ではありません。

このようなリスクやトラブルが発生することを最初から把握した上で不動産投資を始めたのであれば、対応することは難しくありません。しかし「簡単に不労所得が得られる投資」とうわべだけしか見ないで始めた人は、金銭的負担はもちろんのこと、心理的な負担を受けるだけでもやめておけばよかったと後悔してしまうようです。


不動産投資はあくまでも“投資”であるため、確実に成功するという保証はありません。成功する人がいれば失敗する人がいるのが現実になります。
重要なことはイメージや表面的なものだけで判断せず、しっかりとした下調べと必要な知識を得ること、情報収集を怠らないこと。税金や修繕費といったお金の問題、リスクやトラブルなど、見落としがちな不安要素は多く存在しているのです。
ですが、知識や行動でそれらを回避することは不可能ではありません。自身のライフプランや目的なども明確にしてから取り組むことが重要なのでしょう。

小雪