不動産投資を始めようと考えている人にとって、まず最初の選択肢になりうるのが「投資用不動産をどのようなものにするか」。マンション、アパート、一戸建てと、様々なスタイルの投資物件がありますが、中でも特に多いのは“マンション投資(区分マンション投資)”か、“アパート投資”の2択で悩むケースでしょう。
どちらにもメリットとデメリットがあるため、簡単に「こちらが良い」と言い切れない問題ではあるものの、投資スタイルによって「向き不向き」はしっかりと存在していることは確かです。

今回は、マンション投資とアパート投資のメリットとデメリットの両側面を踏まえたうえで、それらを比較し、どのようなタイプの投資用不動産が自分に向いているのかを考えてみましょう。



目次
1. マンション投資とアパート投資のメリットとデメリット
2. マンション投資に向いている人とは
3. アパート投資に向いている人とは
4. 自分に合わせた選択をしよう

1. マンション投資とアパート投資のメリットとデメリット


まず、それぞれの投資スタイルのメリットとデメリットから見てみましょう。
なおここでは、マンション投資はマンションの1部屋を購入して貸し出す“ワンルームマンション投資”もしくは“区分マンション投資”とも呼ばれるもので、アパート投資はアパート1棟土地ごと所有しそれぞれの部屋を貸し出すものを指します。


■マンション投資の場合

・マンション投資のメリット

初期投資が高額になりやすい不動産投資の中でも、マンション投資であれば1室だけを購入するため負担が少ないということが一番のメリットになります。金額が抑えられれば不動産投資ローンの融資も受けやすく、少ない自己資金で始めることも可能でしょう。
また、マンションは駅チカなど立地の良い場所に建てられているものが多く、それに伴って入居者を集めやすいほか、所有規模が小さいため修繕費用も押さえられるというのも挙げられます。

・マンション投資のデメリット
投資規模が小さいということは、総収入額も小さくなります。利回りも低くなりやすく、さらに土地はマンションの区分所有者全員での共有になるため自由にすることはできません。
あくまでもマンション内の1室の所有者であるため、マンションの共有部分はコントロールや管理を行うことは不可能です。


■アパート投資の場合

・アパート投資のメリット

複数の部屋を所有して運用する形になりますので、入居者が多くなる分だけ総収入額も大きくなります。同時に、全ての部屋が空室にならない限りは収入が全くゼロになる可能性も低いといえるでしょう。
さらにアパート投資は土地ごと1棟買い上げるため、たとえ老朽化で建物部分の資産価値がなくなったとしても土地部分は維持することが出来ます。その上で取り壊して建て直すことも、土地を売却して現金化することも可能であったりと、自由度が高いのもアパート投資のメリットと言えます。

・アパート投資のデメリット
一棟購入しなければならないため、投資金額はやはり高額になります。自己資金が少なくても始めることは可能でしょうが、借り入れ金額が高額になればなるほど負担は大きいですし、融資も通りにくくなりがちです。同じ理由で所有規模が大きいほど修繕費用が高くなることもデメリットになります。
その他、地方の場合は家賃が低い上に家賃下落しやすい、売却しにくいといった流動性も低さもあげられます。




2. マンション投資に向いている人とは


それぞれのメリットとデメリット知ることで、どのような人に向いているのかも見えてくるでしょう。
まず「マンション投資」に向いている人はこのような方です。

・初期費用を抑えたい人
土地ごと購入する必要のないマンション投資であれば、地方の相当破格値の中古の一棟マンションやアパートでない限り、比較的安めな価格で手に入れることが出来ます。初期費用は物件価格だけではなく取得に関わる諸費用も必要です。この諸費用は原則現金で支払いますが、物件価格によって金額に差が出てくるため、マンション投資のほうが少ない資金で始められると言えるのです。
不動産投資初心者から見ても現実的な初期投資額となりますので、検討もしやすくなるでしょう。

・リスクを小さくしたい人
一棟マンションや一棟アパートの売買をするのはほぼ不動産投資家だけになりますが、区分マンションであれば一般の方も売買するため物件数は非常に多くなっています。その豊富な選択肢の中から好条件の物件を選び出すことが出来れば、空室や家賃下落といったリスクを抑えることも可能です。

また、木造や鉄骨造、軽量鉄骨造が多いアパートに対して、マンションは鉄筋コンクリート造がほとんどを占めています。この鉄筋コンクリート造は他のものと比較しても耐用年数が長く設定されてるのが特徴です。その分、金融機関からの担保評価が高くなり、融資が受けやすいというメリットも存在しています。担保評価が高いということは、もちろん売却時にも有利にもなります。
それだけでなく、耐震性や遮音性、耐火性などにも優れているのも鉄筋コンクリート造マンションのメリットとして挙げられるでしょう。

・管理業務にあまり時間を割けない人
マンションは一般的に、管理会社や管理組合が管理・修繕といった保守管理を行っています。日常的な清掃や点検、会計、事務管理などから、適切なタイミングでの大規模修繕の決定までを主導しているため、こちらが管理のために行うことはほとんどありません。
これがアパート経営であれば様々な業務をこちらの意志でコントロールすることも可能ですが、自主管理を行うとなれば対応はすべて自分で行う必要が出てきます。それほど時間を割けない兼業の方やサラリーマンの副業などは、マンション全体の維持管理を行う必要のない区分のマンション投資が向いているでしょう。




3. アパート投資に向いている人とは


次に、アパート投資に向いているのはこのような方です。

・まとまった収益を得たい人
アパート投資は一棟まるごと購入して複数の部屋を同時に運用しますので、利回りが比較的高く総収入額も大きくなります。
ただアパート経営をするのであれば、アパートを土地ごと購入するか、土地を所有しているならその土地に、所有していないのであれば土地を購入してから新たにアパートを建設する必要があるということです。
その分所得費用は区分マンションと比較すると高額になるケースがほとんどですが、不動産投資の収益は「保有資産額×利回り」で計算されるため、どちらも高いアパート経営は収益額が大きくなります。
その分、不動産投資ローンが通りにくい、流動性が低いため売りたいときにすぐ売れないというデメリットもありますが、大きな収益をあげたいと考えている方はアパート投資が向いていると言えます。

・土地を資産として残したい人
建物は経年劣化に伴って価値が落ちますが、土地は周囲の状況の変化によって多少上下することはあるものの、数十年経過しても価値がゼロになるということがありません。つまり、建物の価値がなくなっても土地は資産価値として残るということです。
マンションの区分所有であれば、敷地利用権はあるものの建物と土地を切り離して売却することはできません。その点、アパート経営であれば建物が老朽化したら取り壊して新たにアパートを建て直しても、駐車場経営を行っても良いですし、自宅を建設することも、さらには売却して現金化するのも自由なのです。

・自分で管理業務で行いたい人
こちらはマンション投資のケースとちょうど正反対になります。アパート投資は建物一棟まるごと所有していることになりますので、修繕計画や清掃頻度、設備の導入や改築など、経営を続ける上で必要な業務を自分のタイミングで決定することが出来ます。
実はこれらは将来の支出を左右するだけでなく、空室といったリスクも回避する重要な要素なのです。

修繕や清掃などは区分マンションよりも規模が大きくなってしまうため、支出もけっして小さくはなく収益性も下がってしまうでしょう。しかし定期的にそれらを行うことにより資産価値が保てますので、入居者も見つけやすくなり家賃下落も防ぐことが出来ます。同時に入居者の満足度も向上するため退去率の低下にも繋がり、空室のリスクも回避できるのです。
建物全体で投資計画を立てたいであれば、アパート投資のほうが向いていると言えるでしょう。


4. 自分に合わせた選択をしよう


物件取得価格の差や管理の手間の違いなど、それぞれ正反対の位置にあることがわかりました。メリット・デメリットはもちろん重要なものですが、それだけに気を取られて視野が狭まり、本当は自分に合っていない投資スタイルを選んでしまうのは避けたいところです。

「どちらの投資がより優れているのか?」ではなく、まず自分が不動産投資に何を求めているのか、自分の資産運用の方針をはっきりさせると選択しやすくなります。
たとえば、“本業の片手間の副業”として考えているのであれば、手間がそれほどかからないマンション投資がおすすめでしょう。“本格的な不動産投資をしたい”のであれば、投資計画が必須なアパート投資がよいかもしれません。
ですので、自分の投資方針を導き出したうえで、投資用不動産の種類を決定しましょう。

小雪