不動産投資初心者や経験が浅い人にとって、最初のハードルとなりやすいのが「利益が出る価格で投資用物件の購入が出来るか」どうかでしょう。物件の購入価格は利回りに直結するため、その後の不動産投資の成否が左右されると言っても過言ではありません。

そのため、可能な限り安い価格で購入したいものですが、どのようにすれば可能なのでしょうか。詳しくご紹介します。



目次
1. 不動産価格の基本的な考え方
2. 販売開始から経過している物件
3. 売主が早く手放したがっている物件
4. 売主より高い交渉力を持っている
5. 適正価格の範囲内での交渉を

1. 不動産価格の基本的な考え方


不動産には「同じもの」が存在しません。同じ地域に同時に建てられた物件であろうとも、土地の形や面積をはじめ、方位や日照条件、接する道路の状況、駅からの距離などに違いがあります。たとえ同じ棟のマンションでも、階層や間取りの違い、部屋の位置、景観の差、さらには部屋の管理状態など、まったく同じものはないのです。
一般的なお店で販売されているもののほとんどは「定価」がありますが、不動産はそれぞれに特徴がありひとつとして同じものがないため、この「定価」が存在していません。売主が自由に価格を設定できるのが不動産価格になります。

しかし、「相場」は存在しています。
基本的に売主はこの相場を基準にして価格設定するものですが、誰しも出来るだけ高く売れたらそのほうが嬉しいもの。相場よりあまりにもかけ離れた高額設定にしてしまうと見向きもされなくなってしまうため、売却を行う不動産会社に受け入れてもらうことはできませんが、相場に多少上乗せされた程度であれば許容されるでしょう。

つまり不動産価格とは、スーパーでの買い物の時のように提示された金額に対して“購入する・購入しない”を選択するものではなく、売主と買主が価格交渉し、取引ごとに最終的に合意をしたその時点で初めて決定するものなのです。


投資用物件を安く購入するためには、売主が提示した価格でそのまま合意するのではなく、交渉を有利に導くこと。とはいえ、交渉をすれば必ず安くしてもらえるというわけでもありません。
値下げ交渉に応じてもらいやすい物件のパターンは存在していますので、ここからはそれぞれを詳しく説明していきます。



2. 販売開始から経過している物件


販売開始から数ヵ月経過している物件は狙い目になります。
不動産会社から販売開始時期を直接聞き取るほか、インターネットであれば物件の掲載開始時期などで知ることが可能です。

不動産が売れ残る大きな理由として「価格が高すぎる」ことが挙げられます。上述した通り、売出価格は売主が自由に設定できるため、販売開始当初は「このくらいの価格でも購入希望者が現れるかも」と強気の価格設定がされていることがほとんどです。
しかし2ヵ月ほど経過しても購入希望者が現れなければ、やはり高すぎたのではと売主も不安になってきます。
不動産会社としても、媒介契約は通常3ヵ月単位で結ばれるため、それを機に契約を切られてしまう、または専任媒介契約から一般媒介契約に切り替えられて他の不動産会社にも売却を依頼されてしまうかもなど、焦りを感じてくる時期になります。

売主とその不動産会社が値下げの検討を始めるタイミングに、「指値」を入れるのです。指値とは不動産売買にあたり、買主が希望する購入価格のこと。売主が提示した売出価格が“売主希望価格”であれば、指値は“買主希望価格”になります。あまりにも度が過ぎた指値はもちろん相手にされませんが、このタイミングでのある程度の指値であれば交渉余地が生まれやすいでしょう。

なお、長い期間売れ残っている他の理由としては、立地に問題がある、再建築不可等の制限がある、忌避施設が近場にあるなどのほか、そもそも安く売る気が売主側にないというケースなども考えられますので、購入する際には確認が必須となります。


3. 売主が早く手放したがっている物件


売主が物件をなぜ売ろうとしているのか、「売却理由」次第では交渉に応じやすい傾向になっております。
その理由が以下のようなものであるならば、早めの売却を希望している可能性が高くなります。


■相続物件
相続物件の場合、早期売却を希望している売主が多いです。
換価分割といった、不動産など現物として残された相続財産を現金に換えて相続人で分割する方法を取る場合など、売主が売却を焦っていることもめずらしくありません。
離婚による財産分与もこちらに含まれるでしょう。


■すでに住み替え先の契約を済ませている
住みかえや買いかえなど、買い先行ですでに引っ越し先の購入契約を済ませている場合、住宅ローンの2重払い(ダブルローン)などを避けるため売却を急いでいることが多くなっています。また、元の物件が売れなければ新規物件の購入が出来ず、その上で違約金を支払わなければならないというケースもありますので、「それならば値下げをしてでも早く売りたい」と考えてもおかしくありません。


■物件に愛着を持っていない
雑草が生い茂り、残留物が多く手入れも掃除すらされず荒れたままで放置されている物件も中には存在しています。
売主が現地ではなく遠方に住んでいる、またはオーナーとして賃貸物件を出していたものの、やる気がそれほどなくほぼ放置されているなど、物件に愛着やこだわりがないので「売れるならばさっさと売却してしまいたい」と思っている方もいるのです。
あまり安すぎる指値は受け入れてもらえませんが、不動産会社の買値は修繕費などが加味されて低い価格になるため、それよりも少し足した金額程度であれば応じてもらえやすくなります。


これらの理由は、不動産会社を通すことである程度知ることができますので、聞いてみると良いでしょう。
ただし、経験豊富な不動産投資家などが売主の場合、安く購入をすることは難しいかもしれません。


4. 売主より高い交渉力を持っている


上述の通り、不動産には定価が存在しません。売主と買主が交渉を行って価格を決定する“相対(あいたい)取引”と呼ばれるもので、駆け引きの要素を強く持っています。売主は出来るだけ高く、買主は少しでも安くと考えているため、すんなりとまとまる交渉はまずないと認識しましょう。

そして、根拠のない値下げ交渉は受け入れてもらえることはありません。
やみくもに値下げを迫るのではなく、近隣の取引相場や建物の状態、土地の路線価など具体的な根拠を提示し、そこから話をつなげていくことが必要となります。
例を挙げますと、「この部分はこちらで清掃やリフォームを入れますので、その分の値下げをお願いできませんか」、「物件の接道の状況はあまり良くないから、近隣の相場から見て〇〇万円の値下げをして欲しい」など、正当な理由と、それを伝えることができる知識・説得力があれば、応じてもらいやすくなるでしょう。

とはいえ、物件の粗探しをしてまで交渉の材料にすることはおすすめしません。
交渉術のひとつではあるかもしれませんが、難癖のようなものをつけてまで値下げ交渉を行えば、売主は「この買主には売りたくない」といった印象を持ってしまうかもしれません。買主はお客様ではありますが、売主が下手に出なければならないわけではないのです。不動産の交渉は、相手の「人」がいることを念頭に入れておきましょう。



5.適正価格の範囲内での交渉を


これらが、不動産投資物件を安く購入するためのコツとポイントになります。
他には不動産競売や個人間売買などで購入するという選択肢もありますが、こちらは手間やトラブルも多かったりと上級者向けとなりますので、それ以外の方であれば不動産会社を介して購入する一般的な取引のほうが安心できるでしょう。

繰り返しになりますが、不動産取引は相対取引であり、交渉を行って価格を決めるものであるということ。売主にも様々な思いがありますので、あくまでも適正価格の範囲内での交渉を行うことが大前提になります。タイミングを見計らい適正な交渉を行うことも重要ですが、駆け引きの要素を強く持っているため、自分のメリットだけではなく相手に与えられるメリットも考えて交渉に挑むことが、良い結果となる可能性が高くなるのです。

小雪