投資にとって、リスク管理はつきもの。安定した家賃収入や私的年金代わりなど、様々なメリットばかりが前面に押されているマンション経営ですが、やはり投資である以上リスクがあるのは当然のことです。そして、それらのリスクを知らなければ、備えることすら難しいかもしれません。

そのため今回は、マンション経営を始めたいけれど不安を感じている方に向け、代表的なリスクと、その回避・対策法をご紹介します。



目次
1. 不動産価格の基本的な考え方
2. 適正価格の範囲内での交渉を

1. マンション経営のリスク


投資はメリットばかりではなく、相応のリスクを伴っています。もちろん不動産投資も例外ではありません。
マンション経営を行う上で発生しうる、代表的なリスクを押さえておきましょう。


■空室のリスク
「定期的な家賃収入」があることで人気の不動産投資ですが、もちろん“家賃”は“入居者”がいなければ得ることができません。空室が出てしまえばその分の家賃収入はゼロになり、毎月の家賃収入をローンの返済に充てている場合は自己資金から出さなければならなくなるでしょう。

このリスクは立地条件が深く関係しています。マンションを住居に選択する人の多くは利便性を重視する傾向にあるため、投資用物件としてマンションを選ぶのであれば、建っているエリアや駅からの距離などをしっかり吟味することが最大のリスク対策となるのです。
基本としては、人口が密集した東京などの大都市圏エリアの駅近マンションを選ぶこと。
ただし、あまり人気が高すぎるエリアは次々とマンションが建設されるなど供給過多になる可能性も高く、逆にリスクを増加させてしまうことも考えられます。不動産会社からこれまでのデータやアドバイスなどをもらいながら、本当に空室リスクの低いエリアであるか見極めていく必要があるでしょう。
地方都市などはマンションの価格も控えめで利回りが良く、中には賃貸物件の需要が高い地域もあるのですが、変動が激しく判断には一定以上の知識と経験が必須ですので、初心者は避けたほうが無難かもしれません。


■家賃の下落リスク
マンション経営をする上で、空室リスクの次に不安が大きいのはおそらくこの家賃下落リスクなのではないでしょうか。
築年数が経過すれば、新築だったマンションも老朽化します。新しいマンションと古いマンションが同じ家賃であったら、誰もが新しいマンションを選ぶでしょう。一般的に家賃は平均で年に1%ずつ下落すると言われますので、古くなれば家賃が下がるのは自然なことと言えるかもしれません。

ですが、「家賃下落しにくい物件」というものは確かに存在しているのです。
そのポイントとしては、空室リスクの回避方法と同じく〝利便性の高い物件”を選ぶこと。主要駅へのアクセス状況、周囲の環境を含め利便性の高い物件は空室率が低く、築年数が多少経過しても安定して入居者が見つかるために家賃の下落率が緩やかであるという傾向が見られるからです。
つまり大都市圏エリアの利便性の高いマンションを選ぶことが、空室リスクと家賃下落リスク両方への対策となるのです。




■家賃滞納のリスク
空室でなければ毎月家賃収入があり、マンションの運用やローンの返済を行うことができるでしょう。
しかし家賃が滞納されてしまえばその部屋からの収入はありませんし、家賃が未払いでも住民がいる限り新しい入居者を募集するわけにもいきません。その状態のまま部屋の劣化は進みますから、空室よりもさらに深刻な状況とも言えます。

この場合、「いつかは支払ってくれるだろう」と後回しにしてはいけません。常態化してからでは家賃督促の送付や連帯保証人への連絡、最悪の場合は法的手続きなどと取れる手段が少なく、さらに長期化しやすいため後手に回れば回るほどダメージも大きくなるのです。
事前対策として、家賃保証や管理を一括で任せるサブリースといったサービスを利用することが必要でしょう。中には滞納督促の専門部署が存在している管理会社もあるようです。


■災害のリスク
日本に住んでいる以上、災害というリスクを避けては通れません。たとえ人気が高く良い物件であろうとも、地震などで破損・倒壊してしまえば、家賃収入を得るどころか経営を続けること自体が難しくなってきます。そのため、マンションを購入するのであれば耐震性を確認することは必須でしょう。最新の耐震性能を求めるのであれば新築・築浅のみになりますが、中古マンションであれば1981年(昭和56年)の6月1日以降に建築確認を受けた、新耐震基準の物件を選べば基本的には問題はありません。

地震だけでなく、津波や土砂災害、最近では大雨による水害の被害なども増加しているため、国土交通省が公開している「ハザードマップポータルサイト」などを参考にしてエリアを選ぶというのも重要となってきているようです。
また、火災保険や地震保険といった保険に入ることもリスク対策としては必要ですが、補償が充実しているものほど保険料も高額になりますので、収支のバランスを見ながら内容の検討を行いましょう。




■金利上昇のリスク
投資用物件を購入する際にすべて自己資金で賄うケースはまれであり、ほとんどが不動産投資用ローンを利用することになります。この不動産投資用ローンは多くの金融機関が変動金利を採用しているため、市場の動向が金利の大幅に上げる方向に動けば、毎月のローン返済額が上昇し収支のバランスが崩れて赤字経営になる可能性もあるでしょう。

現在は空前の超低金利をなっておりますが、この状態が永遠に続くとは限りません。言い換えれば、将来的に金利の上昇は避けられない状態でもあるのです。ですが金利の上昇はある日突然急激に上昇する、ということはなく何かしらの動きは確実にありますので、それを敏感にキャッチすることが必須となります。
そして、もし上昇の傾向が見られた場合、その対処法としては、自己資金に余裕があれば毎月の支払額を抑えるために繰り上げ返済を行う、余裕がないのであれば物件を売却するという方法があります。金利上昇が起きれば、マンションの価格相場も上がる可能性が高くなるからです。


2. リスクは確実に備えること


マンション経営をする上で、代表的なリスクをご紹介しました。
もちろんこれ以外にも様々なリスクやトラブルがあり、特に避けたい最大のリスクは「管理会社の倒産」かもしれません。比較的倒産しにくいと言われているものの、やはり絶対に倒産しないとはいいきれないのです。これまでの実績や管理体制などをきっちりと調べ上げてから、信頼できる会社を選びましょう。

このようにマンション経営とそれに伴うリスクは、切っても切れるような関係ではありません。そのため、起きないことを祈るのではなく、万が一起きても適切に対処できるよう備えておくこと、リスクを把握したうえで長期的なビジョンを持つこと。これらが必須といえるのかもしれません。

小雪