はじめて不動産投資用のマンションを購入した後、数年経過して安定した収入が得られるようになったら「経営に慣れてきた」と感じるでしょう。そろそろ投資物件を増やすことを考えはじめる時期かもしれません。不動産投資は所有するマンション数に応じて収入が増えるのですから、ある意味当然のことです。

ですが、闇雲に買い増しを進めてしまうのは失敗のもと。
新しく投資用マンションを購入する際にはどのような点に注意し、どのタイミングで増やせばいいのでしょうか?
そのメリットとデメリットの両方をを踏まえたうえでご説明します。



目次
1. マンション投資の考え方とは
2. 複数所有のメリットとデメリット
3. 状況に応じた検討を

1. マンション投資の考え方とは


■複利効果を狙う
マンションを増やす前に、まずは投資の考え方そのものからもう一度見直してみましょう。

投資をしていく上で、「複利効果」という言葉を聞いたことはないでしょうか。これは“資産運用で得た利益(利子)を元本に組み入れてさらに投資し、利息を増やす”ことで、いわば利息が利息を生んで膨らんでいく効果を指します。逆に元本を増やさない「単利」は、利率が変わらない限り利息もほとんど変わることはありません。
複利効果はよく雪だるまにも例えられ、小さな雪玉を転がして大きくしていくように元本に利息分を追加、そこへさらに利息分を追加していくことを繰り返して資産を増やしていくのです。複利効果は資産運用を効果的に行いたいのであれば、欠かせな考え方といえるでしょう。

例えば100万円を年率5%で、20年運用した場合で考えてみましょう。ここでは手数料や税金は考慮しないこととします。
単利の場合は5%がそのまま20年続くだけですから、毎月5万円が足されますので20年目には100万円分が増え、合計で200万円になっていることになります。
一方、毎年5万円分の利益を投資に追加するという複利のスタンスで運用した場合、運用益が毎年追加されることにより元本が次第に大きくなり、その結果20年後には265万3,298円まで増えていることになるのです。

単利は毎年同じ額を足す足し算であるのに対し、複利は額が毎年増えていく掛け算になるため、運用期間が長い投資ほど差が出ます。投資期間が長ければ長くなるほど大きな効果が得られるため、長期間運用が一般的な不動産投資ではある意味必要不可欠なものなのです。


■マンション投資で複利効果を活かすためには
複利効果のメリットを踏まえたうえで、マンション投資のケースで考えてみます。
「資産投資で得た利益を元本に組み入れる」ことが複利効果ですが、マンション投資の場合元本は投資用不動産の購入費とその諸費用になりますので、そのままの意味で組み込むことはできません。そのため、あくまでも概念として考えることが必要となります。
つまりマンション投資での複利効果とは、最初の1件目の運用で得られた利益で2件目以降を購入して元本を増やす、という意味と捉えて良いでしょう。

もちろんマンション投資上の様々なリスクを回避するため、利益をローンの繰り上げ返済に充てるという方法もありますし、銀行へ預金し備えておくという手段も悪くはないでしょう。ですがある程度キャッシュフローが改善し、安定が見えたその時が、次の投資用不動産を購入するタイミングであるともいえます。
投資期間が長いほど効果が得られる複利効果の性質から、1件目のローンの完済を待つよりも2件目以降の購入を早めに決定したほうが効率的に資産を増やすという面では重要になるのです。




2. 複数所有のメリットとデメリット


投資用マンションを複数所有することのメリットは、複利効果だけでなく他にも存在しています。
しかしその一方でデメリットもありますので、併せて見ていきましょう。


■複数所有のメリット
1件目のマンションを購入した時点はおそらく不動産投資初心者になりますから、全てが手探り状態になります。物件選びの基準から、多くの契約、確定申告など、様々なことを経験するでしょう。そのため2件目以降は“経験者”の視点からはじめられるのです。
また、金利の状態にもよりますが、ローンをまとめることにより金利の軽減効果を得られる可能性もあります。

・リスク分散
単純に収入が増えるだけでなく、空室や災害などのリスク分散することが出来ます。
1つしか所有していない状態で空室が発生すると、次の入居者が決定するまでは収入はゼロになります。ですが複数所有していれば収入は落ち込むのは事実ですが収入はゼロにはなりません。火災や地震などといった災害発生時にも、1つのマンション内ではなく別の場所のマンションを所有していれば、収入のダメージを軽減することができるのです。

・実物資産になる
マンション投資は、実物資産を所有することになります。実物資産とは、実物として形が存在しており、それ自体が価値のある資産を指し、土地や建物といった不動産の他、純金やプラチナなどといった貴金属も含まれています。これら実物資産は、金融危機や景気変動があったとしても価格が急落せず、一定の価値を保ち続けるものです。
投資用物件の2件目を購入することで単純に資産規模は倍になりますし、家賃収入も増えるでしょう。資産が増えれば融資も受けやすくなるだけでなく、しっかりと返済を行っていれば金融機関への実績にもなり、審査でさらに有利になりやすいというメリットもあります。

・老後の蓄えが増える
「安定した老後のために定期収入を確保しておきたい」と言った理由で不動産投資を始めた方も多いのではないでしょうか。ローンが完済すれば購入したマンションは自分のものになりますし、毎月の家賃はそのまま収入として得ることができるようになります。所有物件数が多ければ多いほど老後の収入も増えますので、複利効果を最大限に活かした結果とも言えるかもしれません。


■複数所有のデメリット

・共倒れになる可能性
リスク分散にもなる複数所有ですが、物件選びを失敗した場合はリスク分散どころか共倒れしてしまう可能性も秘めています。
例えば1件目のすぐそばに似たようなタイプの2件目を購入した場合、所有物件同士で入居者の取り合いが発生してしまうこともあります。地震などといった災害の場合も近すぎると被害があまり変わらないため、複数所有によるリスク回避の意味がなくなるでしょう。
そのため、2件目以降の物件選びの際には、1件目以上に慎重になる必要があるのです。

・年齢による融資の審査への影響
不動産投資は長期的運用が基本のため、1件目を購入した年齢というものがその後に大きく影響を与えます。
最初に購入した1件目が軌道に乗るには、少なくとも5年以上はかかるでしょう。つまり、30歳で1件目を購入した場合は35歳、35歳で1件目を購入した場合は40歳になってから2件目以降の検討を始めるということです。年齢も融資の審査対象になりますから、場合によっては不利になることもあるでしょう。




3. 状況に応じた検討を


複数所有のメリットとデメリットは理解できましたでしょうか。
同マンション内での物件所有はリスク分散の点から考えて避けたほうが良いという考え方もありますが、立地などが好条件で家賃下落や空室のリスクが限りなく低いと判断するのであれば、必ずしも避けなければならないわけでもありません。管理会社とのやり取りも1か所のみになるため手間もかかりませんし、入る管理組合も1つで済むといったメリットもあります。

また、複利効果を重視しすぎるあまり、1件目が安定する前に2件目以降を慌てて購入を決定してしまい、大きな赤字を生んでしまっては本末転倒になります。投資物件を複数所有するということは、収入だけではなく維持管理費やトラブルの発生率、さらにはローンの借入額といったマイナス面も増えるということを忘れてはいけません。昨今は金融機関の審査が厳格化しているため、そもそも2件目以降の融資が必ず受けられるとも限らないのです。
1件目の経営がうまく行ってないのであればその問題をまず解決し、それからじっくりと状況に応じた検討を重ねたうえで2件目以降の投資マンションを増やしていきましょう。

小雪