一般的に、「会社員はローン審査で有利になりやすい」と言われています。個人事業主と比較して収入が安定しているため、金融機関から高評価を得られやすいことが理由となっているからです。その特性を上手に利用した、いわゆる“サラリーマン投資家”も増加傾向となっています。
ですがふと、「会社員を辞めたら不動産投資ローンはどうなるのだろうか」と考えたことはないでしょうか?

そこで今回は、会社員を退職したことによって発生しうる不動産投資ローンへの影響を解説します。



目次
1. 返済中の不動産投資ローンへの影響
2. 独立後を見据えたセーフティネットとしての不動産投資
3. 退職はしっかりと先を見据えてから

1. 返済中の不動産投資ローンへの影響


まず一番気になるのは、現時点で借りている不動産投資ローンへの影響です。
返済期間や金利などで不利になるかもしれないと不安には感じる方もいるでしょうが、実際には影響を受けることはほとんどありません。ローン契約の約款に「届け出事項の変更時の報告義務」が含まれていることが一般的となっているため、その際は忘れずに届け出なければなりませんが、それ以外に大きな変化はないでしょう。
不動産投資ローンの返済は長期にわたるものであり、借入時の状態が必ずしもそのまま続くものではないと金融機関側も理解しています。ですので、退職や転職が影響を与えることはないのです。

■退職後に不動産投資を始めたい場合
ただし、会社員を退職してから新たに不動産投資ローンを組んで不動産投資を始めたい、と考えている方は注意が必要です。
退職金をローン返済に充てることも可能でしょうが、もし想像していたよりも退職金の金額が少なかったら後に破綻するのが見えています。その上たとえ条件の良い企業に転職できたとしても、転職直後は収入が不安定であり、ローン審査の大きなハードルである「安定的な収入」がクリアできないため、審査に通らないことがほとんどになります。

“事業”という形で日本政策金融公庫から融資を受けることは可能ですが、借入期間が10年、最長でも15年と非常に短いため、キャッシュフローで不利になりやすいこと、融資限度額が少ないことなどがデメリットに挙げられるでしょう。



■キャリアアップの転職の場合はどうなる?
転職をして収入が多い仕事に就けた、ポジションが上がったなど、“キャリアアップの転職”であれば問題がないのでは?と思うかもしれません。ですが、やはりこのケースの場合も審査を通るのが難しくなります。
一般的に、勤続3年以上でないと不利になりやすいと言われています。もちろん3年以上であれば必ず審査が通るというわけではありませんが、勤続期間が短いことによって「現在の収入が安定的に継続すると判断するには不安がある」とされ、金融機関が融資を控えやすくなるのです。

「大幅な収入アップ」であったり、「小中企業から大手企業への引き抜き」だったりと誰の目から見ても明らかな状況でない限り、本人にとってはキャリアアップであっても、他人から見れば普通の転職と変わりません。
また、転職回数が多すぎる場合も、審査においてあまり有利になることはないでしょう。


2. 独立後を見据えたセーフティネットとしての不動産投資


上述したように、転職または独立後に不動産投資ローンを組むのは不利であると言っても間違いありません。
そのため「不動産投資を始めるのであれば会社員のうちに」、さらには「転職前に可能な限り買い増しをしておく」ことがおすすめであり、実際にそうしている方も多くいらっしゃるようです。

■もしもの時の生命保険代わりに
中でも、独立開業を予定しているのであれば、退職前に不動産投資を始めておくことに大きなメリットが存在しています。
一般的な不動産投資ローンであれば、融資の条件に「団体信用生命保険(団信)への加入」があり、これがもしもの時のセーフティネットになることが期待できるからです。加入することで、返済中に契約者が亡くなった、または障害を負って働けなくなった場合にローン残債を肩代わりをしてくれるもので、家族にはローンの支払いが不要となった収益物件を残すことが可能となるのです。

■老後の生活のために
自営業者や個人事業主には退職金というものがありません。また退職後、会社員や公務員は厚生年金と国民年金の2種類が受け取れる一方で、自営・個人事業は国民年金のみの支給となり、現役での負担は少ないもののその分年金支給額は低くなっています。
会社員のうちに不動産投資ローンを利用して投資物件を購入しておけば、ローン完済後は家賃のほとんどが手元が入りますので、公的年金の代わりにすることもできます。老後生活の不安を払拭するには、不動産投資は効果的であると言えるのです。



■節税対策に
独立して開業した場合、会社員時代にはそれほど重要ではなかった「節税への対策」を取る必要性が出てきます。
不動産投資が副業として選ばれる理由のひとつに、この“節税対策が出来る”があるのです。
その仕組みは、収支が赤字となった場合、その赤字と本業の事業所得を相殺することが可能なのため、結果的に所得税を抑えることができるというもの。収支が黒字に転じれば節税効果は得られなくなるものの、安定するまでの間は十分期待できるでしょう。


3. 退職はしっかりと先を見据えてから


退職することによって発生するデメリットと、不動産投資によって得られるメリットをご紹介しました。

会社員であるうちは気づきにくいものですが、収入が安定しているなどの理由から、長く勤めていればいるほど社会的信用度は高いのです。転職することによってその時点で受けてるローンの支払いはほぼ変化はないものの、同じ条件で新たに融資を受けるのは難しいと考えて間違いありません。

不動産投資を始めるのであれば退職後に回すのではなく、出来るだけ早めに動きだしたほうが将来的にも安心できるのではないでしょうか。

小雪