不動産投資をこれから始めようとしている人の中には「投資用マンションだけど、いずれ自分が住みたい」と考えている方も多いようです。また、「入居者が見つからないようであれば自分が住めば空室リスク回避になるかもしれない」と思う方もいらっしゃるでしょう。

とはいえ、それは実際に可能で、本当に最善策なのでしょうか?
今回はそんな悩みを解決するため、投資用と居住用の違いから、投資用マンションに住む場合、その逆で居住用を貸し出す場合の注意点などを確認しておきましょう。



目次
1. 投資用マンションと居住用マンションの違い
2. 投資用マンションに自分で住む場合の注意点・問題点
3. 居住用を貸し出す場合の注意点
4. まとめ

1. 投資用マンションと居住用マンションの違い


投資用として購入したマンションであろうとも、住むことはできます。
投資用も居住用も、どちらも“人が住むための建物”であることには違いありませんから、事実上は可能となっています。他人から譲り受けたマンションではなく、自分で検討し購入を決めたものであればなおさら、投資用マンションでも「自分なら絶対住みたくない」と思うような物件を選ぶことはないはずです。

しかし、空き家対策であろうとも「投資用マンションに自分で住むことは推奨していない」という意見が圧倒的となっているのが事実です。
なぜ避けたほうが良いのでしょうか?そのためにはまず、投資棟マンションと居住用マンションの違いを詳しく見ていきましょう。


■ローンの差

・投資用マンション

投資用マンションを購入する際、大半の方が使うのが不動産投資ローン(アパートローン)です。
投資用として購入するマンションは収益物件であり、購入者ではない第3者に貸し出してその家賃を得ることを目的として購入します。そのため、返済原資は入居者からの家賃収入であり、投資家である“購入者”が住むことを前提としていません。
審査では運用計画を中心に、購入予定物件の資産価値(担保価値)や契約者の属性などが見られることになります。

・居住用マンション
居住用マンションの購入時は、一般的に住宅ローンを利用することになります。
この住宅ローンは自宅用、つまり自分(もしくはその親族)が住むための物件を購入することが目的です。「住宅は生活の基盤」とされているため、金利は非常に低く抑えられていますし、税控除の対象にもなっています。返済原理は契約者の“給与”であるため、審査では属性を中心に資産価値なども審査されますが、そのハードルは他のローンと比較すればそれほど高くはないようです。

不動産投資ローンよりも非常に有利な条件で組むことができる住宅ローンですが、こちらで投資用物件を購入することはできませんし、住宅ローンが完済するまで投資用物件として第三者に貸し出すことは原則として不可能です。


■広さや設備環境の差

・投資用マンション

賃貸マンションの入居者で最も多いのは、会社員や学生などの単身者層です。そのため投資用マンションは、単身者をターゲットとしたワンルームや1LDKなど比較的コンパクトな間取りのものが中心になっています。
駅までの距離や都心部までの出やすさといった利便性を最重視する傾向が非常に強い一方で、生活は必要最低限の環境さえあれば問題ないと考える人が多いため、シンプルな設計の部屋であることがほとんどです。

・居住用マンション
購入者とその家族など複数人で住むこと前提としていることがほとんどのため、居住用マンションは3LDK以上など部屋数が多く、総面積もゆったりとした広めのものが中心となります。
長期間住み続けることを想定していますので、特に内装や設備などがこだわられているのも特徴。立地も重視されますが、どちらかというと日当たりや窓からの眺望、公園までの距離などといった生活環境を最重視し、利便性よりも住みやすさに重点が置かれています。




2. 投資用マンションに自分で住む場合の注意点・問題点


投資用マンションに住むことが推奨されていなかったとしても、自分で住みたいと思えば住むこと自体は可能です。しかしその際には注意点が発生します。投資用マンションに住むことが推奨されていなかったとしても、自分で住みたいと思えば住むこと自体は可能です。しかしその際には注意点が発生します。

■家賃収入がなくなる
自分で投資用のマンションに住めば空室は無くなりますが、その部屋から得られるはずの家賃は当然得ることはできません。つまり、空室対策にはならないのです。
ローンや固定資産税、修繕費や管理費などを家賃収入から賄っている場合、家賃収入がなくても支払えるかの確認が必要となるでしょう。

■節税が出来ない
経年とともに建物の価値が下がるため、毎年下がる分の価値を経費として帳簿上で計上することが“減価償却費”です。あくまでも“帳簿上”なので実際にお金を支出するわけではないのですが、計上することによって帳簿上は赤字経営となり、実際には黒字であろうとも税金が免除されるケースもあります。

しかし自分で住んでしまえばそれは「賃貸経営」ではなくなってしまいますので、経費の計上が出来なくなるのです。

■入居者がすでにいる場合は
たとえその賃貸物件のオーナーであろうとも、すでに入居者がいる場合は立ち退きを要求することはできません。賃貸借契約で入居者は守られており、それが「正当な事由である」と認められない限りは立ち退きの要求に応じなくても良いのです。ただ自分が住みたいからという理由はこの「正当な事由」とは言い難いため、まず認められることはないばかりか、最悪のケースでは入居者側から損害賠償を請求される可能性もあるでしょう。
そのため入居者がいるのであれば、いくら住みたいと思っていても引っ越すまで待つといった方法を取らざるを得ないのです。




3. 居住用を貸し出す場合の注意点


長い期間住むことを前提としている居住用マンションですが、転勤の可能性がある、または子供が巣立った後は地方へ越したいなど、将来的に居住用マンションを賃貸として出すことを考えているという方も珍しくはありません。また、長年住んだマイホームを売りに出すのは忍びないから、賃貸として貸し出そうとしている方も多いでしょう。

ただし、居住用は設備が充実して住み心地が重視されている分、利回りが低く収益性は見込みづらくなっています。投資用物件で最も重要視しなければならないのは、利回りやキャッシュフローなどといった収益性であり、そもそも居住用は投資用物件として適していないのが実態でもあります。
さらに、賃貸として活用した場合は“収益物件”として扱われ、売却の際に想定される買主は“不動産投資家”になります。もちろん不動産投資家は利回りといった収益性を考慮するため買い手が見つかり辛く、もし見つかっても一般的な居住用で売却したケースよりも安価で取引される傾向にあるようです。

住んでいたマイホームを手放さずに貸し出している方ももちろんいらっしゃいます。しかし居住用マンションで投資用マンションと同じような収益を出すことはほぼ無理であると考えたほうが良いでしょう。


4. まとめ


このようなことから、居住用マンションと投資用マンションは完全に分けて考えたほうが良い、というのが最終結論になります。
居住用マンションを購入するのであれば設備や周囲環境など住み心地を重視し、投資用マンションは他人に貸し出すことを大前提とした投資基準で選ぶことが一番であり、それで間違いありません。

ローン完済後であり、その維持費節約のために空室対策であれば、投資用マンションに自分が住むという方法も考えられるかもしれません。
ですがほとんどのケースではデメリットになってしまいますので、本当の最終手段にしたほうが良いでしょう。

小雪