不動産投資に興味があっても「初期費用がどれだけ必要なのかわからない」という不安感から、二の足を踏んでしまっている人はとても多いでしょう。ただでさえ“不動産”という高額な実物資産を購入するのに、さらに初期費用として別にお金が必要になるのですから、不安になるのはある意味仕方のないことです。

ですが、購入する物件によって必要な費用が変わるため、一概にいくらと言い切れないのも事実。
そこで今回は、それぞれのケースでの平均初期費用から、投資用物件購入後に必要なランニングコストまでをご紹介します。



目次
1. 不動産投資の“初期費用”とは?
2. 初期費用の相場はどのくらい?
3. 資金が足りない場合の解決法
4. 不動産投資運用のランニングコスト
5. まとめ

1. 不動産投資の“初期費用”とは?


そもそも、不動産投資を始めるにあたって必要となる初期費用とは、どのようなものなのでしょうか?

まず「不動産投資」と聞いて多くの人が思い浮かべるのが、土地や建物といった不動産、つまり“物件価格”でしょう。しかし、この物件価格分のお金だけでは購入することができません。不動産を購入するためには様々な手続きやそれに伴った手数料といった支払い、つまり「諸費用」がかかることになります。
この諸経費に、現金でローンの一部を支払う「頭金」を足したものが、不動産投資での初期費用にあたるのです。

諸費用としては
・登記費用
・融資手数料
・印紙税
・固定資産税
・仲介手数料
・司法書士報酬
・各種保険料

などがあり、金額の目安としては購入する不動産価格の3%ほどとなっています。例えば、不動産価格が3,000万円のものを購入したいと考えているのであれば、その3%にあたる90万円が諸費用として必要です。
そしてここに頭金を足すのですが、頭金の目安はおよそ不動産価格の10%ほど。つまり、3,000万円の物件であれば、その10%にあたる300万円であり、諸費用90万円と頭金300万円を足した390万円がこの場合の初期費用の金額になるのです。
なお不動産仲介業者を利用して購入するのであれば、仲介手数料がかかることも忘れてはいけません。


2. 初期費用の相場はどのくらい?


おおよその目安はわかりましたが、実際はやはりそれぞれであり、職業や収入によってその額は大きく異なっています。
次はいくつかのケースで考えてみましょう。


■サラリーマンのケース
不動産投資を始めるのであれば、不動産投資ローンを利用するのが一般的です。その際に、頭金なども含めた全額を借りる「フルローン」、諸経費分も借り入れる「諸経費ローン」という選択肢もありますが、近年不動産投資に対する金融機関の審査が厳しくなったことにより、フルローン・諸経費ローンを利用することは難しいと考えたほうが良いかもしれません。
頭金分の資金は持っていたほうがローンの審査も通りやすくなりますので、目安の通り諸経費は物件価格の3%、頭金は物件価格の10%ほどは用意しておきたいところでしょう。


■年収1,000万円以上のケース
公務員や医師、または大手企業の会社員などといった社会的信用が高い職業であり、年収も高ければ融資の審査が通りやすくなるため、フルローンや諸経費ローンを受けられる可能性が高まります。そのため、初期費用10万円程度ほどで始めることも可能でしょう。
ただしこのようなローンは、不動産投資ローンと比較して金利が高い傾向にありますので注意しておきたいところです。


■年収500万円以下のケース
年収が低め、または自営業など安定した収入がない職業の場合、不動産投資ローンを借り入れること自体が難しくなっています。
まず考えられる策としては“預貯金を増やす”こと。また“不動産運用の実績を作ること”も挙げられます。
不動産投資はレバレッジを利かせるためにローンを利用することが一般的であり、現金のみで購入することは効率的ではありません。しかし、実績を作ることを目的とするのであれば、安価な中古戸建てを購入し運用するという方法を取るのもひとつの手かもしれません。




3. 資金が足りない場合の解決法


初期費用が足りない、心許ないと考えてる人は多いことでしょう。また、ローンの審査に不安を感じる人もいらっしゃるかもしれません。
ここでは不動産投資ローンの審査基準や、初期費用の抑え方を見ていきましょう。


■不動産投資ローンの重要性と審査基準
上述した通り、不動産投資を行う上でローンを利用することは重要なポイントです。
物件を一括購入できるだけの予算があったとしても、融資を受ける方がほとんどになります。未経験者だと「ローンなしで買えるのであればそのほうが良いのでは?」と考えてしまいそうですが、レバレッジ効果を活かすのであれば、ローンの利用は欠かせないものとなっているのです。

そもそも“レバレッジ効果”とは、小さな力で大きな効果を得る「テコの原理」を意味しています。
これを不動産投資に当てはめれば「少ない自己資金で大きな利益を上げること」。自己資金額が同じでも融資を受けることによって、自己資金だけでは実現が出来なかった投資効果を得ることも可能になるのです。

そして、その不動産投資ローンを利用するためには、審査を通らなければなりません。
一般的な金融機関では、購入を予定している不動産の“資産価値”や“収益性”などはもちろんのこと、何年もかけて安定した返済ができるのかどうか契約者本人の“属性”などがチェックされます。
属性の中でも収入は重要なポイントですが、ローンの返済というものは長期にわたるため安定を求める傾向にあり、収入が多くても不安定であればマイナス評価となることもめずらしくないようです。


■初期費用を抑える
初期費用の出費が痛いと感じるのであれば、これの額を抑えるのが最大の手でしょう。

初期費用で最大の額となり得るのは“頭金”になります。となればこの頭金の額を減らせば、と考えがちですが、頭金の額というものはローン審査にも関わる上、返済や利息の額にも影響を与えますので、一概に頭金を削れば良いというわけではないのです。
とはいえ現金を手元に残しておくことも必要なため、全体のバランスを見ることが重要となります。

諸費用の見直しも必要なポイントですが、登録免許税や不動産所得税、固定資産税などといった税金関係は削ることはできません。各種保険料や保証料などであれば内容の吟味や支払い方法次第では総額を減らすこともできるでしょう。司法書士報酬などは交渉によって値引きも可能となっているようです。

また、中古物件を不動産仲介会社を通して購入するのであれば必要となる“仲介手数料”。物件価格400万円以上のものであれば、上限で「(不動産購入価格×3%+6万円)+消費税」を支払うことになります。
もちろんこれは上限であり、必ずしもこの額を払わなければならないものではありません。近年は仲介手数料が“半額”、または“無料”という不動産仲介会社もありますので、こういった会社を選ぶことでかなりの額を減らすこともできるでしょう。




4. 不動産投資運用のランニングコスト


不動産投資は購入したら終わりではなく、そのあともランニングコストとして定期的に費用がかかることを忘れてはいけません。
たとえば区分マンションを投資物件として選んだ場合、どのようなランニングコストが必要となるのでしょうか?


■税金
不動産を所有していれば毎年必ず固定資産税の支払いがあります。
その年の1月1日時点でその不動産の所有者に対し、土地と、建物があれば建物にも課税されます。
所有不動産の固定資産税評価額の1.4%が納税額であり、市区町村によって異なるものの「固定資産税評価額は不動産物件価格のおよそ50~60%程度」とされています。

また、所有している不動産が市街化区域内にあれば、同時に都市計画税も請求されます。
こちらも固定資産税評価額から計算されるもので、その0.3%ほど。こちらも毎年支払わなければなりませんので、不動産購入の前には市街化区域に属しているかどうかの確認も重要です。


■管理費・修繕積立金
マンション一棟ではなく、そのうちの1部屋を購入して投資用物件として運用する“区分マンション投資”の場合は、毎月「管理費」及び「修繕積立金」を支払うことになります。

管理費には、エントランスや廊下、エレベーターなどといった共用部分の点検や清掃、電気代や備品代などといったものから、日常的な補修費、管理員人件費など、マンションの管理を続けていく上で必要となる費用が含まれています。
その一方で修繕積立金は、マンションの経年劣化を防ぎ資産価値を維持するため、定期的に行う大規模修繕工事のために積み立てる、いわゆるマンションの貯金と考えても問題ありません。
簡単に言ってしまえばどちらも「マンションを快適な状態で維持するための費用」です。マンションによって金額の差はあるものの、区分所有者であれば必要不可欠な費用となっています。


■保険料
火災保険料をはじめ、地震保険や施設賠償責任保険など、各種保険料の支払いも必要です。
特に火災保険料はローンを借り入れる条件にも含まれているため、加入が必須となっています。保険内容や加入期間、建築構造、保険会社などによって保険料は異なりますが、長期契約であるほうが安い傾向が見られるようです。しかし長期契約は一括先払いを求められるケースが多いため、初期費用を抑えたいのであればまず1年間などの短期で契約すると良いかもしれません。


■修理費
管理費・修繕積立金がマンション本体、全体の修理費であるとしたら、こちらは専有部分の修理費になります。生活をする上で、エアコンや給湯器、トイレや洗面所といった水回りは、生活上必要不可欠な設備です。これらが利用できることを前提に家賃が発生していますので、故障の際にはすみやかにオーナー側の負担で修理を行わなければなりません。
どのタイミングで何がどの程度壊れるかわかりませんし、それに伴って修理費も不明のため、どの程度用意しておくか判断が難しいのも事実です。


■ハウスクリーニング費用
入居前や退去後などには新しい入居者が気持ちよく住めるように、ハウスクリーニングを行います。原則として、このクリーニング費用はオーナー負担が基本です。部屋の広さに応じて料金に差があり、ワンルームなど1人暮らし向けよりも、ファミリー向けなど部屋数が多いほどクリーニング費用は高くなります。
ハウスクリーニングは専門会社に任せるのが一般的ですが、相見積もりを取って比較検討し、納得できる会社に依頼しましょう。初期費用を抑えたいからといって、あまりにも安すぎる会社は注意です。


■リフォーム代
修理費と同じく、マンション本体は管理会社や管理組合が管理してくれますが、専有部分はオーナーが管理しなくてはなりません。経年によって劣化は進みますので、クロスやフローリング、畳の張替えや、キッチン、トイレ、洗面所、浴室などの更新なども必要になります。
また、競合物件に差をつけるため、最新設備にリフォームすることもあるでしょう。

入居者が変わるたびに毎回リフォームをする必要はありませんが、どのくらいで資金が回収できるのか検討した上で行うことが重要となります。


5. まとめ


投資の中でも特に必要となるお金の額が大きいため、始めるハードルが高く身構えてしまうのはしょうがないことです。ですが、どのようなものにどの程度の費用が必要となるか理解できれば、「このくらいの金額なら自分でもなんとかなるかもしれない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

不動産投資は高額所得者や資産家だけが出来る投資ではなく、ある程度の貯蓄や属性があれば始められる投資なのです。もちろん現実的な計画は必要となりますので、しっかりと先を見据えた上で不動産投資を始めてみてはいかがでしょうか。

小雪