不動産を所有している限り、毎年支払う必要があるものが「固定資産税」です。
不動産投資をするのであればそもそも不動産を所有しなくては始まりませんから、不動産投資と固定資産税は切り離したくても切り離せない必要経費ともいえるものでしょう。

ここでは固定資産税についての基本的な知識から、お得な支払方法やその注意点などについてまで解説していきます。



目次
1. 固定資産税とは?
2. 平均的な固定資産税額はどのくらい?
3. 固定資産税はどうやって納税する?
4. 固定資産税のお得な支払方法と注意点
5. 固定資産税の支払いが難しい場合の制度
6. まとめ

1. 固定資産税とは?


固定資産税とは地方税のひとつで、土地や建物、有形償却資産といった固定資産に対して課せられる税金です。毎年1月1日の時点で、市町村の固定資産課税台帳に所有者として記載されている人が支払いの義務を負っています。

不動産を所有しているのであれば、その不動産に自分が住んでいても住んでいなくても“所有している不動産すべて”が課税対象となります。所得税とは違い、たとえその不動産が赤字経営であろうとも所有者として記載されているのであれば支払いの義務が発生し、またそれによる減免措置なども存在していません。
ただし、不動産投資としては租税公課として経費計上することが可能になっています。


■固定資産税はどうやって出している?
固定資産税は、基本的に「固定資産税評価額×税率」で求めることできます。

固定資産税評価額は“固定資産評価基準”に基づいて各区市町村が個別に決める評価額であり、物件の売買価格などを基準にするわけではありません。
また、固定資産税は地方税のため税率は区市町村によって自由に設定することが可能ですが、ほとんどの自治体では基本税率である“1.4%”に設定されています。もちろん異なることもありますので、不動産所在地の自治体に必ず確認しておきましょう。

なお、同自治体内に同一の者が複数の不動産を所有していた場合に限り、課税標準額の合計が土地で30万円、家屋で20万円、償却資産で150万円に満たないものであれば非課税対象となり支払いの義務が発生することはありません。


●土地の計算方法
土地の固定資産税額の計算式は「課税標準額×税率(標準税率:1.4%)」になります。
この課税標準額は上述した固定資産税評価額を基にして算出されるものです。

そのうち小規模住宅用地や一般住宅容易用地といった「住宅用地」の場合に限り、6分の1もしくは3分の1に減額する特例措置もあります。


●家屋の計算方法
家屋の固定資産税の計算式は「固定資産課税台帳登録価格×税率(標準税率:1.4%)」です。
計算式自体であれば、固定資産課税台帳に登録されている家屋の評価額にそれぞれの税率をかけただけという、比較的簡単なものではあります。が、その固定資産税評価額自体が“再建築価値”や“経年原点補正率”、“評点一点あたりの価額”が計算式に含まれており、非常に複雑であるため自力で正確な数値を出すことは難しいと考えたほうが良いかもしれません。

またこちらも、新築住宅が要件を満たしているのであれば一般住宅で最大3年、中高層大家住宅であれば最大5年の期間、固定資産税額が2分の1に減額される特例も用意されています。


●償却資産の計算方法
不動産投資における償却資産は、エアコンなどといった設備から、街頭や塀、フェンス、郵便受け、ゴミ置き場などが該当します。
こちらの計算式は「課税標準額×税率(標準税率:1.4%)」です。


2. 平均的な固定資産税額はどのくらい?


不動産投資を続ける以上、固定資産税の支払いは避けて通れないものです。
購入予定の物件にかかる固定資産税はもちろんですが、そもそも固定資産税の平均はどのくらいであるのか、気になる方もいらっしゃることでしょう。

ですが残念ながら不動産というものは全く同じものがない存在である上に、地域などの環境にもよって変化するもののため、はっきりとした平均額を出すというのは非常に難しい問題になります。そのため、ここでは大まかな数値や傾向などを見ていきましょう。


■固定資産税評価額に影響を与えるもの
固定資産税評価額は固定資産税をはじめ、都市計画税、不動産取得税、登録免許税の計算式にも用いられるものです。区市町村ごとに個別に決定された“固定資産評価基準”に基づき、主に不動産の“築年数”、“面積”、“構造”の3つの要素が評価額に影響を与えます。


■物件種別による差
物件には一戸建て、アパート、マンションといった種類がありますが、固定資産税評価額はもちろんこの種類によって差が発生します。これは上述した評価額に影響を与える“面積”及び“構造”が大きく異なるからです。

まず“面積”による差を考えてみましょう。
物件が建っている土地を全て保有する一戸建てと、区分所有者全員で土地を共有するマンションであれば、一戸建てのほうが土地に対する固定資産税評価が高くなることは当然のことです。中でも都市部では地価が高いことから、土地に対する固定資産税は一戸建てのほうが高額になる傾向にあります。

次に“構造”で考えてみます。
一般的に一戸建てとアパートは木造、マンションは鉄筋コンクリート造で建設されることがほとんどになります。木造よりも鉄筋コンクリート造のほうが残存耐用年数が長いため、建物の価値も高いと判断し評価額も高くなるのです。
それにより、建築構造で見た場合はマンションのほうが高くなる傾向もみられるでしょう。

また“築年数”で見た場合ですと、中古のほうが固定資産税評価額は低いと考えても問題ありません。
ただし前述した新築住宅の軽減措置により、新築でも中古より固定資産税が安い可能性も否定できないので注意したいところです。


■おおまかな固定資産税評価額を知る方法
土地の固定資産税評価額は、国土交通省が定めた“公示地価”から知ることが可能です。
毎年1月1日時点での土地の価格であり、毎年3月中旬頃に1㎡当たりの価格が発表されるもので、国土交通省のwebサイトなどから調べることが出来ます。
この公示地価のおよそ70%ほどが固定資産税評価額となり、その額に税率をかけた数値がその土地のおおまかな固定資産税の額となるのです。

家屋の場合は、再建築費用から知ることが出来ます。
こちらは評価対象の建物と同じものをもう一度建てた場合、どれだけの費用が掛かるのかを算出したものが再建築費用であり、このうちの50~70%程度が固定資産税評価額になるようです。そしてその額に税率をかけたものがおおまかな家屋の固定資産税となります。
ただし、築年数や設備などによっても上下するため、正確なものではないことは覚えておきましょう。


■中古の不動産の場合
これから購入しようとしている不動産が中古であれば、比較的容易に固定資産税の金額を知ることが可能です。
前所有者による納税通知書を参考にする方法と、所在区市町村の固定資産税評価証明書を取得する方法の2種類が存在しています。どちらにしても売主もしくは不動産会社の協力は必須になりますから、相談してみるといいでしょう。

なお新築物件の場合は建物が確定しない限り評価額は算出できませんし、区市町村による評価が一度もされていない状態のため正確な数値を知ることも不可能です。売主である不動産会社に確認することで、おおよそ程度であれば知ることはできるかもしれません。


■都市計画税も徴収されるエリアも
購入する不動産が所在しているエリアによっては、“都市計画税”を徴収されることもあります。
これは都市計画事業・土地区間整理事業の費用に充てることを目的とした税金であり、その対象エリアである“市街化区域”内に土地・建物を所有していれば、都市計画税を納める義務が発生するのです。

固定資産税と一括で徴収され、その税額は「固定資産税額×税率(0.3%以内)」であり、自治体によってその税率は異なります。
市街化区域内であるのかどうかは不動産会社や自治体の窓口の他、インターネットなどでも調べることも可能ですので、購入前にあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

なお、住宅用地であればこちらにも軽減措置が設けられていますので、併せて確認をしておきましょう。




3. 固定資産税はどうやって納税する?


1月1日の時点で不動産を所有していれば、その年の4~6月に振込用紙と納税通知書が送付されてきます。複数の不動産を所有しておりそれぞれが別の自治体に所在している場合は、その数だけ通知書が送付されることになるのです。
多くの自治体では年4回に分けて支払うことがほとんどですが、一括で支払うことも可能です。ただし、一括払いによる割引といったメリットはありません。


■支払う方法は複数
4~6月に納税通知書とともに振込用紙も送付されますから、その振込用紙を持って銀行やコンビニエンスストアなどに行って支払う形が一般的になっています。
近年ではその支払い方法が多様化し、銀行振替やクレジットカード払い、電子マネー、スマホ決済などにも対応している自治体も増加しました。とはいえ、未対応の自治体ももちろんありますので、あらかじめ各自治体のホームページなどで確認することが必須になるでしょう。


■年途中に売買した場合は注意を
固定資産税の支払いの義務が発生するのは、その年の1月1日の時点で不動産の保有者です。その翌日の2日に不動産を手放した場合でも、その年の分は支払う必要があります。その逆に、1月2日に購入したのであれば支払いの義務は発生しません。
ただし中古不動産の場合は、1年間の固定資産税及び都市計画税を日割りで計算し、購入後の期間分だけ買主側が売主側に支払う形が通例となっています。すべての不動産取引で行われるものではありませんが、公平性を保つことが目的であると認識しておきましょう


■延滞時にはペナルティも
納税には当然期限があり、これに遅れた場合はペナルティとして延滞税が発生します。この際に各自治体から催告書が送られてきますが、それでも支払いを拒否した場合は、不動産や給料の差し押さえなどが発生することも避けられません。
余計な出費やリスクを避けるためにも期限には遅れないように納付し、もし滞納した場合でも速やかに支払いすることをおすすめします。


4. 固定資産税のお得な支払方法と注意点


固定資産税は毎年支払わなくてはならないものですが、金額が高いと感じる方も少なくありません。
金額そのものを減らすことはできないものの、少しでもお得に支払える方法をご紹介します。


■クレジットカード払い
固定資産税をクレジットカードで支払うことができる自治体は増加傾向にあるようです。
通常の買い物と同様に、固定資産税の納付でもクレジットカードのポイントを貯めることが可能になっています。支払いの額が大きい分だけ、ポイントが還元されるというのはうれしいメリットでしょう。
また、オンライン上で支払いが完結しますのでわざわざ出かける必要がなくなる他、利用額は後日引き落とされるクレジットカードの性質上“後払い”が可能であること、さらには“分割払い”も可能になることもメリットとして挙げられます。

ただしクレジットカードの納付には手数料がかかるため、お得どころか場合によってはマイナスになるということもあるかもしれません。事前にポイント還元率と手数料を確認しておくことは必須となります。
もちろん限度額より固定資産税の金額が大きければ支払うことはできませんし、自治体によってはクレジットカード払いの上限額を設定していることもありますので注意しましょう。


■スマホ決済
近年はスマホ決済が浸透したことにより、自治体によっては固定資産税の支払いも可能となりました。
東京都では2021年の4月時点で「PayPay」及び「LINE Pay」の決済サービスが利用できます。
こちらのスマホ決済でもクレジットカード同様にポイントを貯めることが可能なのですが、クレジットカードとの大きな違いは「原則手数料無料」であること。手数料を取られることなくポイントだけ手に入れられるのはスマホ決済最大のメリットとなります。

とはいえ、こちらの場合も支払い上限が設定されています。納付書1枚あたり、延滞金や加算金を含めた上限は“30万円”となっているほか、決済アプリの設定や契約状態によって制限がかけられていることもありますので、あらかじめの確認が必須でしょう。




5. 固定資産税の支払いが難しい場合の制度


中には固定資産税を支払いたいけど難しいという方もいらっしゃいます。
本来、税金の支払いは国民の義務であり、他の支払いより優先して払わなければならないものであることには違いありません。ですが、状況に応じた支払い猶予や免除などといった制度も、各区市町村ごとに用意されています。


■減免制度と支払い猶予
災害などで家屋や土地が被害を受けた場合、または価値が等しく減少した場合は、被害に応じた減免が受けられる可能性があります。自動的に適用されることはなく申請が必要となる点には注意しておきましょう。

また、納税者または家族の病気や負傷、事業の廃止・休止、盗難など一定の要件に該当した場合も、原則1年間、税徴収が猶予されます。


■特例措置の対象となるケースも
大規模な災害が発生した場合は、さらに特例措置が設けられることが多くなっています。
直近では、新型コロナウイルス感染症に関する猶予制度が設定されました。事業が著しい損害を受けたなど納付が困難と認められた場合、申請することで原則として1年の範囲内で地方税の徴収を猶予することが可能となっています。


6. まとめ


固定資産税の算出方法から支払い方法、災害時などの特例措置についてまでを解説してきました。
固定資産税は不動産投資を行う上で欠かせないものであり、さらに大きな割合を占める経費のひとつです。軽減措置などを利用して節税に務めるのはもちろんですが、まずはどのくらいかかるのかを正確に把握することが重要となります。
各自治体も支払方法を増やすなどといった対応しておりますので、その上で支払方法の見直しなどを行ってみるのも良いのではないでしょう。

小雪