不動産投資に興味がありつつもなかなか手が出しにくい理由のひとつに、「税金問題」を挙げる方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に会社員の場合は“税金は給料から天引きされるもの”という認識を持っているケースが多く、税金はどのくらいでどこへ支払えば良いのか未知数なため、余計に不安を感じやすいのかもしれません。

不動産投資において税金の問題を避けることは不可能であり、あらかじめ認識しておくことが必須となります。
そこで今回は基礎の基礎として、不動産投資を行うにあたってどのような税金がかかるのかを解説していきます。



目次
1. 不動産投資と発生する税金とは
2. 不動産購入時に課せられる税金
3. 運用中に課せられる税金
4. 不動産売却時に課せられる税金
5. まとめ

1. 不動産投資と発生する税金とは


不動産投資に課せられる税金は複数ありますが、それぞれ発生するタイミングが異なっています。
その内訳は大きく分けると

・不動産購入時
・不動産運用時
・不動産売却時

の3回です。
中には1度きりのものから、定期的に発生するものもあり、すべての税金が1度にまとめて課せられるということはありません。もちろん、状況に応じて課税されないものも含まれています。

この発生するタイミングを踏まえて、それぞれどのような税金があるのか具体的に見ていきましょう。


2. 不動産購入時に課せられる税金


不動産投資は、“不動産を所有”しなければ始まることはありません。
そして、この不動産を手に入れることによって、またはその手順を踏む上で税金が発生するのです。


■不動産所得税
不動産所得税は土地や家屋を購入、贈与、建築など「不動産を所得」した時に、「所得した人に対して課税される税金」になります。発生するのは1つの不動産につき1度だけであり、有償・無償どちらのケースであろうとも、不動産登記の有無に関わらず課される税金です。
ただし、相続で所得したなど一定の条件下では課税対象外になります。

不動産所得税は地方税であるため、納税先は不動産所在地の都道府県です。
取得後4カ月から1年半ほどで各都道府県から“納税通知書”が届きますので、それに記載された金額を金融機関に納付しましょう。

●不動産所得税の計算方法
不動産所得税の計算式は
「課税標準額×税率」
です。
この“課税評価額”は固定資産評価基準によって決定されたものであり、原則として固定資産台帳に登録されている金額になります。不動産の購入価格や建設費用などではない事には注意が必要かもしれません。
なお、課税標準額にかける税率は、2021年4月以降現在「4%」となっています。


■印紙税
印紙税とは、契約書などの文書を作成した場合に課されるものになります。
全ての文書作成時に課税されるということではなく、印税法で定められた“課税文書”のみが対象です。
こちらはその課税文章を作成するごとに課されるものですが、不動産投資を行う上で対象となるものは主に

・不動産売買契約書
・金銭消費貸借契約書

この2つですが、仮契約書や予約契約書を作成したときにも課税されることになります。
税額は「文書の契約金額」によって変化し、例えば、契約金額が1,000万円~5,000万円以下であれば2万円、5,000万円~1億円以下であれば6万円、1億円~5億円以下であれば印紙税は10万円が課税されるのです。
なお、契約書などに収入印紙を貼り付けることで納税は完了します。

●印紙税の軽減措置
印紙税には軽減措置が適用されています。
2022年3月31日までに作成された売買契約書の印紙税が対象で、契約書に記載された金額が10万円を超えるものであれば40%から50%ほど軽減されますので、収入印紙の購入前に確認しておきましょう。


■登録免許税
登録免許税は、土地や建物を購入した人がその所有権を登記する際に発生する税金です。
新築の場合は所有権を設定した登記簿を作成、中古の場合は売主から所有権を転移するための手続きなのですが、現時点では必須ではあるものの義務ではありません。とはいえ、未登記のままだと売買や賃貸経営が不可能であったり、融資を受けることが出来なかったりと弊害が大きいため、不動産を所得したら必ず登記は行いましょう。
こちらも登記を受ける時までに現金または収入印紙で納付しますが、ほとんどは収入印紙で行われているようです。

●登録免許税の計算方法
登録免許税にも計算式があります。
「課税標準額×税率」
不動産所得税と式は同じですが課税標準額にかける税率が異なり、“土地の購入、中古建物の購入の場合は2.0%”、“新築建物の購入、融資を受ける場合は0.4%”となっていますので注意しましょう。

●登録免許税の軽減措置
2021年6月現在、土地の売買による登記であれば税率が1.5%となる軽減措置が適用されています。2021年3月31日までとされていたものの、税率改正によって2023年3月31日までと2年延長が決定しました。
なお、建物に対しての軽減措置もありますが、不動産投資物件の場合は対象外になります。




3. 運用中に課せられる税金


不動産投資には「不動産を売って利益を得る」という方法もありますが、基本的に「賃貸物件として第3者に貸し出し、家賃収入として継続的に利益を得る」ことになります。こちらは不動産運用中、つまり不動産を所有している限り発生する税金になります。


■固定資産税
固定資産税は、土地や建物といった固定資産に対して毎年課せられる税金になります。居住しているいないに関わらず、所有している固定資産全てが課税対象となるため、不動産投資を続ける上では固定資産税を切り離すことはできません。
毎年1月1日の時点で固定資産課税台帳に登録されている人が納税対象者となりますが、年の途中で取得した場合は引き渡しの際に日割りで精算することが一般的となっています。

地方税のため、納付先は不動産所在地の市町村(東京23区のみ東京都)です。毎年4~6月に納付通知書が振込用紙とともに送付されてきますのでそこから納税することになります。年4回の分割払いが一般的ですが、一括で支払うことも可能です。

●固定資産税の計算方法
固定資産税の計算式は
「課税標準額×税率」
であり、こちらでも課税標準額を使います。税率はほとんどが基本税率の“1.4%”に設定されていることが多いようです。
が、自治体によっては異なることもありますので、あらかじめ確認しておきましょう。

●固定資産税の軽減措置
不動産投資を行う上で利用できる軽減措置があり、住宅用地については6分の1もしくは3分の1に、家屋については最長5年間2分1に減額される特例も存在しています。
とはいえ固定資産税の場合は、適用される軽減措置があれば「適用された状態」で納付通知書が送付されるため、こちらからは特に申請するものはありません。


■都市計画税
所有している不動産が“市街化区域”にあれば、毎年固定資産税と合わせて徴収されることになります。
都市計画事業や土地区域整理事業の費用に充てることを目的としているため、所有不動産が対象エリア外にあれば発生することはありません。市街化区域は各自治体のホームページなどで公開されていますので、対象エリアかどうか確認しておくと良いでしょう。

●都市計画税の計算方法
固定資産税と計算式は同じですが税率が異なり、上限が0.3%となっています。
対象となっていれば固定資産税と合わせて徴収されるほか、同じように軽減措置も適用されるものがあれば自動で適用されますので特に注意しなければならない点などはありません。


■所得税
会社員は通常であれば、会社側が年末調整時に同様の作業を行っているため、自分で所得税を納める必要はありません。
しかし不動産投資を行って家賃収入を得ている場合は、所得税を支払わなくてはなりません。不動産の賃貸経営によって得た所得は“不動産所得”であり、課税対象です。例えば会社員であれば“給与所得”と同じもので、不動産所得も得ているのであれば当然、合わせて課税されることになります。

●所得税の計算方法
所得税額の求めるにはいくつかの手順を踏む必要があり、まず“賃貸経営で得た所得”を計算しなくてはなりません。不動産所得の場合、収入金額から必要経費を差し引いたものが所得であり、収入金額そのものではありません。
そのため、まず「不動産収入-必要経費」で不動産所得を計算します。
この際、経費が収入よりも多く、所得がマイナスになることもあり得るでしょう。特に減価償却は、実際の支出がなくとも経費として計上できるため、結果的に所得税を大きく抑えることも可能なのです。

この不動産所得に、他の所得があれば「不動産所得+他の所得」で全体的な“課税所得”を求めます。
本業が会社員であれば、給与所得を不動産所得に足すことになるでしょう。

課税所得が導き出せたら、ようやく「課税所得×税率-課税控除額」で課税額を求めることが可能になるのです。
なお、税率及び控除額は課税所得に応じて変化しますので、国税庁のホームページなどで確認することをおすすめします。


■住民税
住民税とは、自治体が行政サービスを提供するために課税される税金です。こちらも所得税と同じく、会社員では自動的に徴収されるものですが、家賃収入を得ているのならば納税しなくてはなりません。
税額の求め方も所得税と同じですが、税率は前年の課税所得に対して一律10%となっています。


■個人事業税
不動産投資が軌道に乗り、規模を拡大させるとこちらの個人事業税がかかるようになります。法律で定められた70業種を営んでいる場合に課税され、そのうちマンションやアパートの賃貸業は“不動産貸付業”に含まれているのです。

ただし、不動産貸付業は小規模であれば課税されることはありません。「事業的規模である」と認められた場合に限り課税対象となり、その認定基準は都道府県によって異なりますが、東京都の場合ですと「一戸建て住宅なら10棟以上、アパートやマンションなどであれば10室以上」であれば課されることになります。
とはいえ、所得税などと同様で赤字の場合は課税されませんし、10室以上であったとしても290万円未満は非課税のため税金が発生しません。そのため、「投資規模が10室(10棟)以上になり、利益が300万円以上になったら個人事業税が発生する」と覚えておけば問題ないでしょう。

●個人事業税の計算方法
個人事業税の計算式は
「(収入-必要経費-事業主控除)×5%」
になります。
事業主控除額は290万円ですので、前述した通り不動産所得が290万円未満は対象外です。




■消費税
様々な税金の中で一番身近な税である消費税ですが、不動産投資においては家賃収入を得ている全員が消費税を支払う義務があるわけではありません。納税対象者となるのは「課税事業者」のみであり、前々年の“課税売上高”が1,000万円を超えた場合など、いくつかの条件で判断されることになります。

この課税売上高は加算されるものと加算されないものがあり、事務所、店舗、倉庫などといった“事業用賃貸”からの家賃収入であれば課税売上高に加算される一方で、マンションやアパート、一戸建てなどの“住宅用賃貸”からの家賃収入であれば課税売上高に加算されません。そのため、契約書などに“住宅用”と明示されている賃貸物件であれば対象外になります。
どちらにしても、課税売上高が1,000万円を超えない限りは納税義務がありませんので、しばらくは知識として抑えておく程度で良いかもしれません。


4. 不動産売却時に課せられる税金


不動産投資を行う上で、出口戦略というものは重要であり必ず考えておかなければなりません。出口戦略、つまり不動産の売却ということですが、売却時にも税金がかかることがあります。


■譲渡所得税・住民税
出口戦略として不動産を売却して利益が出たとしても、そのままその金額が手に入るわけではありません。不動産の売却で売却益が出た場合は、譲渡所得税及び住民税が同時に発生するからです。
なお、この譲渡所得税は不動産運用中の所得税とは違って損益通算が行われません。

●譲渡所得税・住民税の計算方法
まず譲渡所得を求めます。
「譲渡収入金額-(所得費+譲渡費用)」
この計算式の中の“譲渡収入金額”は、不動産を売却したときの金額であり、“所得費”はその不動産を購入した際の金額と費用の合計額、“譲渡費用”は売却する際にかかった費用になります。
なお、建物の部分に関しては経年によって価値が低下するため、所得費から経過年数に応じた減価償却費を差し引くことになり、実際の購入金額と異なりますので注意が必要です。

譲渡所得額が計算できたら、
「譲渡所得×税率」
そこに税率をかけることによって税額を求めることが可能になります。この税率は“不動産の保有期間”によって異なり、5年を超える場合は長期譲渡所得に、5年以下の場合は短期譲渡所得になるのです。
ここで重要なのは、保有期間は“不動産を売却した年の1月1日時点”での期間を見られることになります。つまり売却時点でたとえ保有から5年越えていたとしても、1月1日の時点で5年に満たないのであれば短期譲渡所得の税率が適用されますので注意しましょう。
なお、こちらも詳しい内容や税率などは国税庁のホームページをご確認ください。


5. まとめ


不動産投資にかかる税金に関しての解説をしました。税金の種類やタイミングを事前に知っておくことで、少しでも不安を解消することができるでしょう。

大半の投資からは、税金というものを切り離すことはできません。不動産投資も例外ではなく、購入時、運用時、売却時とそれぞれのタイミングで税金が発生します。しかしその税金はどのくらいに金額になるのか、あらかじめ計算しておくこともできますし、条件によっては軽減することも可能なのです。中には申請しないと軽減されないものも含まれており、これを知っているか知っていないかでは、最終的な結果が変わってくる可能性もあるかもしれません。

不動産投資を始めるにあたって将来的に、または現在支払っている税金についてしっかりと見直し、考えてみるのも良いのではないでしょうか。

小雪