利便性を考えてマンションに住みたい方、ゆったりとした空間を求めて一戸建てに住みたい方、好みは人それぞれです。
しかし不動産投資として物件の「資産価値」を見るのであれば、マンションと一戸建てどちらがより高いのでしょうか?
ここでは、マンションと一戸建ての資産価値を比較してみましょう。



目次
1. 資産価値とは
2. 一戸建てとマンションの資産価値の特徴と差
3. 大まかな資産価値の鑑定方法
4. マンションと一戸建ての資産価値を比較した場合

1.資産価値とは


そもそも資産価値とは、財産として評価した価格のことを指し、市場での取引価格と等しいものになります。
わかりやすく言えば、資産価値が高い物件であれば、多くの人が住みたい・買いたいと思うようなもので、逆に資産価値が低い物件であれば、値段が安くても買い手がいない・借りる人が見つからないといった状況になりやすくなっています。
その物件に「売り物としての価値があるのか」を表したもの、と理解しても良いでしょう。

不動産の場合は“土地”と“建物”を分けて算定することが多く、土地は立地や区画形質などによって決められ、建物はデザインや劣化状況などの管理状態、立地も含めて決まるとされています。
また、土地の資産価値は経年で変化しない一方、建物は経年で減少していくという特徴も持っています。例えば、築20年を超え建物の価値が下がっても、土地の価値は購入時とほとんど変化することはありません。

■売る際にも貸す際にも重要
この資産価値には、物件を売り物として見た際の価値を示した“売却価値”と、物件を貸し出した際に得られる収入を示した“収益価値”の2つが存在しています。
ただし、これらはあくまでも「目安」であることを心に留めておきましょう。
不動産、中でも中古物件の取引は特に、売主と買主の双方が同時にいて初めて成り立つもの。物件が売り出されているタイミングでその物件を「欲しい」と思う人が現れない限り売買が完了しないため、そのまま売れ残ってしまえば価値が下がっていく可能性もあります。
賃貸物件として収益価値から家賃を設定したとしても、同じタイミングで住みたいと思う人が見つからなければ収益を得ることはできません。その場合でも建物の維持費はかかりますから、赤字経営になってしまうこともあり得るでしょう。

理想的な「資産価値の高い物件」とは、ただ価値が高ければ高いほど良いという事ではなく、短期間で売却もしくは借り手がつき、その上で購入時の価格から可能な限り低減が抑えられる、「バランスの良い物件」ということになります。



2. 一戸建てとマンションの資産価値の特徴と差


資産価値は“土地”と“建物”の2つに分けて評価されるものなので、土地と建物を丸ごと所有する一戸建てと、区分所有建物全員で共有するマンションでは、資産価値の比率に違いがあります。
それぞれの違いと特徴を見ていきましょう。

■一戸建ての資産価値の特徴
一戸建ては木造や軽量鉄骨造で建てられることがほとんどです。法律で定められている耐用年数によると、木造は22年、軽量鉄骨造は34年となっており、これを過ぎると建物自体の資産価値はほぼなくなってしまいます。その代わり土地は経年で価値が下がることがほとんどないため、たとえ建物の資産価値がゼロになったとしても土地の資産価値は保ち続けることが可能なのです。
また、土地と建物の所有者が同一人物であることが大半なため、老朽化のメンテナンスや修繕工事、さらにはリフォームやリノベーションなども容易となっております。これらを行うことで、経年による建物の資産価値の低下速度を緩めることもできるでしょう。

土地の価値が維持できるという事は、売却価値も高額になりやすいという点もあります。利益が出せる家賃も高額になりやすいため、一戸建ては売主や借り手がつくまでに時間がかかりやすいことも特徴として挙げられるのです。

■マンションの資産価値の特徴
土地と建物を区分所有する形になるマンションは、一戸あたりが所有している土地の割合が少ないので、資産価値の評価割合は建物部分が大半を占めていることになります。専有面積当たりの単価を抑えることが出来る上に、マンションは一戸建てよりも耐久性が高いため建物としての価値も長く保ちやすく、総じて収益価値が高いと言えます。

ただし適切に管理されずに建物の老朽化が進行してしまえば、売ることも貸すことも難しくなります。大規模修繕工事を行うにしても巨額の修繕費が必要になりますし、建替えも区分所有者の4/5以上の同意がなければ実施することもできません。マンションを取り壊して更地にしたのちに売るといった行為も、一部の住民が希望した程度ではほぼ不可能です。つまり、売却価値の維持をすることが難しいのがマンションの資産価値の特徴と言えるでしょう。



3. 大まかな資産価値の鑑定方法


資産価値に“売却価値”と“収益価値”の2つが存在してるという事をご説明しました。
これらの鑑定方法として、「原価法」、「取引事例比例法」、「収益還元法」の3種類があり、併用して正しい価値を導き出すのですが、どれも複雑なため専門家でない限りまず無理だと思って構いません。
正確な数値を出すことは難しいですが、誰でも気軽に試せる簡易的な鑑定方法を紹介します。

■売却価値の鑑定方法
一番簡単な方法は、不動産情報サイトなどを利用して同様の周辺物件を探し出し、それらを比較することです。
売却物件は需要と供給という市場の原理で決定されるため、立地、面積、築年数、間取り、最寄り駅とその駅までの距離など条件が一致したものを複数比較することが出来れば、おそらくある程度の価格帯が見えてくるはずです。
ただし実際には売却のタイミングなどの条件も関わってくるため、実際にはその価格帯からおよそ±10%程度になるでしょう。

■収益価値の鑑定方法
売却価値と同じく、エリア内の似たような条件の物件をいくつか探し出しておおよその家賃相場を見つけます。この価格に、12をかけて年間収益額を出しましょう。例えば家賃相場が10万円であったら、「10万円×12ヵ月=120万円」となり、この120万円が年間収益額となります。
ここからさらに還元利回りで割ったものが「収益価値」になるのですが、この還元利回りの詳細の数値を算出することは一般の人には非常に難しいものですので、ある程度の誤差は出るものの大まかな数字を出すだけであれば

大都心部:5%
大都市圏:7%
都市郊外:9%

を目安にして計算しても問題ありません。
なぜ大都心部は低く、郊外は高いのかと言うと、東京都心部などは人口密集地であるため賃貸物件の稼働率は高くリスクが低くなります。その分投資価値が高くなるために還元利回りは低くなるのです。逆に郊外などの地方都市は稼働率が低くリスクは高くなりますが、投資価値が安くなるため還元利回りが高くなるのです。

これらを踏まえて、家賃10万円の物件が大都心部、大都市圏、都市郊外にそれぞれが一戸ずつあった場合で計算すると、年間収益は120万円になりますから、

大都心部:120万円÷5%=2,400万円
大都市圏:120万円÷7%=1,714万円
都市郊外:120万円÷9%=1,333万円

と導き出すことが出来ました。
おおよその数値ではあるのですが、ここで出した売却価値と収益価値が近ければ近いほど、資産価値のバランスが取れている物件であると言えます。一般的には売却価値のほうが収益価値より高くなりやすいのですが、この差ができるだけ小さい物件であれば、売りやすくもあり貸して利益も出やすくもある、リスクが最も少ない物件なのです。


4. マンションと一戸建ての資産価値を比較した場合


では実際に、マンションと土地付き一戸建ての資産価値を比較してみましょう。
ここでは、販売価格と面積がだいたい同じ物件であると仮定した上で、まずは収益価値で比べます。

例①
大都心部のマンション 家賃相場12万円の場合
15万円×12ヵ月÷5%=3,600万円

都市郊外の一戸建て 家賃相場18万円の場合
18万円×12ヵ月÷9%=2,400万円

家賃だけで見ると都市郊外一戸建てのほうが高いのですが、大都市部のマンションのほうが収益価値は高いことがわかります。
もう一つの例を見てみましょう。

例②
大都市圏のマンション 家賃相場12万円の場合
12万円×12ヵ月÷7%=2,057万円

都市郊外の一戸建て 家賃相場15万円の場合
15万円×12ヵ月÷9%=2,000万円

こちらのケースではどちらの物件も同程度の収益価値と言う結果が出ました。

収益価値を算出したら、次に同エリア内で似たような物件の価格帯を調べ、売却価値を出します。そして出した数値を実際に比べて、どちらがどれほど高いのかを比較しましょう。
例えば①の収益価値が3,600万円のマンションで考えると、売却価値が3,400万円と収益価値が売却価値よりも上回っていた場合、この物件の資産価値の特徴は「賃貸物件として購入のリスクが少ない」ことになります。これが逆に売却価値が4,000万円と収益価値より高いのであれば、「貸しにくく購入のリスクが高い」物件であることがわかるのです。


マンションであっても土地付きの一戸建てであっても、それぞれの条件が大きく異なるためにどちらのほうが高いと言い切れるものではありません。そして、資産価値だけで購入を決めるものでもないでしょう。しかし、一つの指標にはなり得るものですから、売却価値と収益価値をしっかりと理解しておくほうが良いのではないでしょうか。

小雪