不動産投資物件を購入する際は“不動産投資ローン”を利用する方がほとんどです。
この不動産投資ローンは借り換えが可能であり、キャッシュフローの見直しを行いたい時などには有効な手段となっています。

しかし、借り換えによってローン負担額が軽減されるというメリットが得られる一方で、借り換え手数料などといったコストが発生した、月々のキャッシュフローが逆に悪化してしまった、などというケースがあることも見過ごすわけにはいきません。
そこでまずは、不動産投資ローンの借り換えを行う意味からそのメリット・デメリットまでを、しっかりと押さえておきましょう。



目次
1. 不動産投資ローンを借り換えする意味
2. 不動産投資ローンを借り換えるメリット
3. 不動産投資ローンを借り換えるデメリット
4. 不動産投資ローン借り換えの一般的な流れ
5. 借り換えに必要な書類
6. まとめ

1. 不動産投資ローンを借り換えする意味


そもそも“借り換え”とは「物件を購入する際に融資を受けた金融機関から、別の金融機関に借り換える」ことを指します。不動産投資においては不動産投資ローン(アパートローン)を利用しますから、最初の不動産投資ローンから別の金融機関の不動産投資ローンに変更することです。

新たに契約した金融機関から借り入れた融資金で、それまでに利用していた金融機関の残債を一括返済し、その後は新しい金融機関へローンを返済していく、というのが一般的なものとなります。
「現時点で利用している金融機関よりも、さらに低い金利の融資が受けられる金融機関へ借り換える」というのがほとんどであり、低金利のものに変更することによって主に利息や総借入額を減らすことを最大の目的としているのです。


2. 不動産投資ローン借り換えるメリット


不動産投資ローンの借り換えを行うことによって、利息や総借入額を減らすことができるということはお伝えした通りです。
それ以外に借り換えに伴って発生するメリットはこちらになります。


■キャッシュフローの改善
不動産投資ローンの借り換えは、「現在よりも金利の低いものに変更」という考え方が基本です。
金融機関やローン商品によって金利が異なるため、金利の低いものに借り換えれば総返済額や月々の返済額を減らすことができるでしょう。不動産投資での借り入れは高額になりやすいものですから、たとえ1%の金利低下であろうともその恩恵は非常に大きなものとなります。
返済額を減少させることが出来れば利益も上昇することになるため、キャッシュフローの改善を期待することができるのです。


■金利タイプの変更
同じ金融機関の中でも金利のタイプには種類があり、不動産投資ローンではローンの契約時に“固定金利”と“変動金利”の2種類から選ぶことになります。固定金利は完済まで金利が一定で変わらないもの、変動金利は経済状況に応じて金利が上下するものであり、基本的に固定金利適用期間中は変動金利に変更することはできません。
ですが借り換えは別の金融機関で新たに契約を結ぶことになりますから、再び金利のタイプを選択することができるのです。もちろん固定金利から変動金利に変更することも可能ですので、これを機に金利タイプの検討をし直すのも良いでしょう。


■信用度の上昇
借り換えができるということは、それまでローンを遅延なく返済しており、安定した運営が出来ていると認められたことになります。「別の金融機関の不動産投資ローンへ借り換えた」ということはつまり、金融機関の厳しい審査を1度ならず2度目もクリアした、複数の金融機関との付き合いがある、などという点が評価され、それが実績となって信用度が上昇するのです。
信用度が上がれば、新規の投資物件の購入時には審査が通りやすくなるなど、様々なメリットを得ることができるでしょう。


■金利交渉の可能性
運用実績が認められれば、他の金融機関からの借り換えを提案されることもあるかもしれません。
この時、現在の金融機関に「借り換えを検討しているが悩んでいる」というスタンスで話をもちかけることにより、金利を下げるための交渉が出来る場合もあります。あくまでも「付き合いの長いこちらを優先したいが、今の金利では厳しいのでもう少し下げてもらえないか」とお伺いを立てるようにしたほうが受け入れてもらいやすくなります。他の金融機関の金利の相場を調べ、それよりも現在の金利が高いようならばより交渉もしやすくなるでしょう。

不動産投資は金融機関との信頼関係が重要であるため、安易に金利のみで借り換えを判断してしまうと、その金融機関と関係性に影響が出てしまうことも否定できません。今後のことを踏まえ、慎重に検討しなくてはならないのです。
ただし、借り換えの提案をしてきた相手が大規模な金融機関であり、さらに低金利で融資を受けられるのであれば、思い切ってそちらに借り換えるというのも重要な選択肢ではあります。


■節税効果
不動産投資ローンの借り換えは、一括繰り上げ返済手数料や抵当権抹消及び設定登記費用など、様々な出費が発生します。これらは経費として計上することができるため、その年の課税対象となる所得を減少させることが可能です。
不動産所得で赤字が出た場合、他の所得があるならば確定申告によって損益通算することができるため、節税効果を期待することができるでしょう。


■団信内容の見直し
住宅ローンの場合、融資条件としてほとんどが団信(団体信用保険生命)に加入することが求められますが、不動産投資ローンでは加入が任意である金融機関も少なくありません。しかし“もしもの時”を考えて団信を利用する方も多くいらっしゃいます。
この団信は基本的に、途中で保障内容の見直しをすることはできません。また、後から契約をしようとしても加入が認められていない団信がほとんどです。

借り換えは新規契約になりますから、契約時には再び加入の可否・内容の見直しを行うことが出来ます。特に団信は頻繁に商品が改善されることが多いため、内容の見直しをする良いタイミングとなるでしょう。
また借り換えで金利が下がった分だけ、より条件の良い保障内容の団信へ加入するのも良いかもしれません。




3. 不動産投資ローンを借り換えるデメリット


金利が減少することによって総借入額が抑えられるというメリットがある一方で、当然デメリットがあることも忘れてはいけません。このデメリットを把握せずに借り換えを行った結果、出費が嵩んでしまい損をしてしまったということもあるでしょう。
借り換えを検討する際には、デメリットもしっかり確認することが必要なのです。


■借り換えによるコストの発生
借り換えをするためには、現在契約している不動産投資ローンの残債を一括で繰り上げ返済することになります。その際、金融機関によっては一括繰り上げ返済手数料(返済違約金)が発生することもあるため、その金額にも注意が必要です。
もちろんそれだけでなく、借り換えはこれまでの契約を解除し新たな契約を行うのですから、当然手間も手数料も取られることになります。例えば抵当権抹消登記費用、融資手数料、保証料などをはじめ、新しい抵当権設定登記費用、団体信用生命保険料などのほか、それに伴った印紙代も発生するでしょう。これらの費用の総額が借り換えによる削減額を上回ってしまえば行う意味がなくなってしまいます。そのため、どれほどの出費になるのかをあらかじめ把握しておきましょう。


■毎月の返済額が高くなるリスク
状況によっては、借り換えによって毎月の返済額が高くなってしまうということもあります。
不動産投資ローンの融資期間の上限は、建物の法的耐用年数によって設定されることがほとんどです。新規契約時より築年数は経過しているため、融資期間が短くなってしまうこともあるでしょう。期間が短くなった分、月々の返済額が増えてしまったというケースも存在しているのです。

借り換えによって支払総額は減ったとしても、その目的が「月々のキャッシュフローの改善」だとしたら本末転倒になるため、このリスクも踏まえて考慮しましょう。


■審査が通らない可能性も
借り換えであろうとも新規契約と同じですから、当然ローン審査があります。
契約後に返済の滞りがあった場合はもちろんのこと、車などを購入するための新たなローンを組んだ、転職を行ったなど、審査に影響を与える事実があった場合は融資が受けられない可能性もあるでしょう。
また、借り換えをすることによって団信への加入をし直さなければならないため、団信加入が求められているローン商品であれば健康状態の告知も必須です。最初の契約後に健康状態が悪化してしまった場合は団信に加入できず、審査に通らないことも考えられます。


4. 不動産投資ローン借り換えの一般的な流れ


新規契約とは違い、借り換えの場合はさらに手続きが多くなります。
実際に借り換えを行った場合の一般的な流れを見てみましょう。

1:借り換え先のローン仮審査
2:借り換え先のローン本審査
3:現在利用中の金融機関での残り返済額と返済可能日の確認
4:借り換え先から振り込まれた融資金で、現在利用中の金融機関に一括返済
5:これまで利用していた金融機関で抵当権抹消登記
6:これから利用する金融機関で抵当権設定登記

住宅ローンと比較して不動産投資ローンは利用件数が少ないため、簡単に比較が可能な一括査定サイトのようなものは残念ながら存在していません。そのため、個別にあたっていくしか手はないのです。妥協せずに複数の金融機関を打診し、より良い条件の融資が受けられる金融機関を見つけ出しましょう。




5. 借り換えに必要な書類


金融機関やローン商品などによって必要書類は異なるものの、できるだけ多くの資料があったほうが良いでしょう。
主に必要とされる書類はこちらになります。

・売買契約書
・重要事項説明書
・登記簿謄本及び公図
・レントロール
・収入証明
・借り入れ情報や資産などを証明するもの
・運営費用がわかる書類

他には可能であれば、測量図や建物図面、建築計画概要書、道路台帳なども揃えておくことをおすすめします。質問内容には正確な答えが出来るよう、情報や書類をしっかりと整理しておきましょう。


6. まとめ


不動産投資ローンは借り換えを行うことで、利息や支払総額を抑えられるという大きなメリットが存在しています。金利が低いローンにタイミングよく乗り換えることが出来れば、良い状態で経営を続けることもできるでしょう。
その一方で、違約金や手数料の発生の可能性などといった注意点があることも忘れてはいけません。状況によっては乗り換えをしないほうが良いケースもありますので、より慎重なシミュレーションを行う必要があるのです。

額面上の金利だけで判断するようなことはせず、不安があれば専門家に相談しながら検討を進めていきましょう。

小雪