投資物件の購入を検討している際、“オーナーチェンジ物件”という言葉を目にしたことがあるのではないでしょうか?オーナーチェンジ物件は、多くのメリットがあり比較的リスクが少ないと考えられている一方で、通常の不動産契約と異なる点が多いため注意が必要な物件でもあるのです。

そこで今回は、オーナーチェンジ物件の基礎知識から、オーナーチェンジ物件ならではの注意点を解説します。



目次
1. オーナーチェンジ物件の基礎知識
2. オーナーチェンジ物件のメリットとデメリット
3. オーナーチェンジで引き継がれるものと引き継がれないもの
4. オーナーチェンジ物件購入の注意点
5. まとめ

1. オーナーチェンジ物件の基礎知識


オーナーチェンジ物件とは、入居者が住んでいる状態で売買取引きされている投資物件を指します。
マンションやアパート、一戸建てなどといった居住用はもちろん、店舗やオフィスビルといった商業用のものまで種類を問うことはなく、入居者はそのままで物件の所有者だけが変わるため、「オーナーチェンジ物件」と呼ばれているのです。

通常、入居者は賃貸物件の所有者であるオーナーと賃貸借契約を結びます。オーナーチェンジ物件は、この賃貸借契約に基づく賃借権を維持したまま、新オーナーにあたる買主に所有権をそのまま転移させたものとなります。その名の通り、“オーナー”のみが“チェンジ”する取引となるのです。

このような取引形態はけしてめずらしいことではなく、主にワンルームマンション物件を中心に多く見られます。


2. オーナーチェンジ物件のメリットとデメリット


通常の物件ではなく、オーナーチェンジ物件を選ぶメリットとデメリットはどのようなものがあるのでしょうか?


■オーナーチェンジ物件のメリット
オーナーチェンジ物件は、特に不動産投資初心者にも扱いやすい物件といえます。
すでに入居者がいる状態での買取になりますから、家賃の設定や入居者の募集といった手間がないからです。
一般的な物件であれば購入後、物件の立地や周囲の相場、時期などを考慮した賃料設定や入居者の募集を行う必要があるでしょう。しかしオーナーチェンジ物件であれば、賃料などもそのまま引き継がれますからそのような手順を踏まなくても、その月からすぐに家賃収入を得ることが可能なのです。

また、実際に収益物件としてすでに稼動している不動産なので、はっきりと数字として確認することが可能であり、初心者であっても資金計画が立てやすいというのもメリットとして挙げられます。金融機関からの融資も受けやすい傾向があるため、資金面の不安も抑えられるでしょう。

その上、オーナーチェンジ物件は用途が“投資用不動産”であり、買主が不動産投資家に限られることから、購入者も絞られ物件価格が比較的安くなっているというメリットも存在しています。



■オーナーチェンジ物件のデメリット
まずオーナーチェンジ物件の最大のデメリットとして挙げられるのは、購入前に室内の現状確認が書類上でしか出来ないという点になります。入居者のプライバシーにも関わるため、たとえオーナーであろうとも入居者が住んでいる部屋の内見はできません。その結果、物件の庇護を見落としてしまう可能性も否定できないのです。

さらに、その時点での入居者は賃貸借契約をすでに締結しているため、家賃の価格変更や新しい条件の追加を強要することはできません。新たな入居者を募集する際には条件を盛り込むことは可能ですが、済んでいる契約はそのまま旧オーナーから引き継ぎますので、それを覆すことはできないのです。そのため、あらかじめ賃貸借契約の内容を十分確認し、納得してからの購入が必須となります。

入居者の属性を事前に把握することが出来ないというのもデメリットになるでしょう。
中には家賃滞納をする方、近隣住民とのトラブルを起こしがちな方も存在しています。可能であればそのような事態は避けたいところですが、入居者をこちらが選ぶことはやはりできません。購入前に知ることは難しく、旧オーナーの情報に頼るしかないものの、不利な情報になるためそれほど期待はできないかもしれません。


3. オーナーチェンジで引き継がれるものと引き継がれないもの


オーナーチェンジ物件は、入居者を含む契約や条件を維持したまま引き継ぐとご説明しましたが、そのまますべてのものが引き継がれる、というわけではありません。
何が引き継がれて、どのようなものは引き継がなくても良いのでしょうか?


■引き継がれるもの
まず、「賃貸借契約」は必ず引き継ぐことになります。同様に、賃借権も継続します。
オーナーが変わるのはオーナー側の事情であり、入居者側の問題ではないため内容を変えることは認められていません。
それに伴い、入居中に発生する修繕対応も当然引き継がれます。修繕中であれば同様に、これから発生するであろう修繕には民法上の規定に沿って、素早い対応が必要でしょう。

賃貸借契約を引き継ぐのであれば、当然入居者への「敷金の返済義務」もそれに則って義務を継承します。
敷金を入居者から預かっているのであれば、退去時に必要となった経費をそこから引き、残りは返金しなくてはなりません。



■引き継がれないもの
敷金は引き継ぐ一方で、家賃滞納といった「滞納賃料債権」は継承しません。
オーナーチェンジによって旧オーナーと入居者の賃貸借契約自体は終了しますが、債権債務関係は双方そのまま継続されるため、こちらが滞納分を請求するようなことはないでしょう。


4. オーナーチェンジ物件購入の注意点


オーナーチェンジ物件の購入を検討する際に気をつけたい点はこちらになります。


■修繕費が嵩む可能性
購入前に内見が出来ない、というのはお伝えした通りです。
入居者が退去してからようやく室内の状況を確認することができるため、状態次第では修繕が必要となることもあるでしょう。この際の修理費はその時点のオーナーが持つため、修繕費としての出費がかかる可能性も否定できません。オーナーチェンジ物件も中古物件であることに変わりはないため、予想以上の修繕費が嵩むこともめずらしくはないのです。
購入前には必ず、過去の修繕歴やリフォーム内容、今後の大規模修繕の予定の有無を確認しておきましょう。


■退去の可能性
オーナーチェンジ物件は確かに「入居者がいる状態での引き継ぎ」ではありますが、入居者がその後も住み続ける保証はありません。場合によっては契約後すぐに退去してしまうこともあるでしょう。
中には入居者がいると見せかけ、稼働率を上げて買主を安心させる“入居偽装”というケースも存在しています。このような入居者は購入後すぐに退去してしまいますので、ほとんどの場合は家賃収入を得ることはできません。
入居実態を掴むことは少し難しいですが、賃貸借契約書を確認し不自然な契約が見当たらないかの見極めが必須となります。


5. まとめ


オーナーチェンジ物件とは、すでに入居者がいる物件になります。
購入後そのまま引き継ぐことになりますので、家賃の設定や入居者募集といった手順を踏む必要がなく、即運用ができるというメリットがあります。何よりもすでに稼働している状態で販売しているため、不動産投資初心者にとっても取り組みやすい魅力的な条件であると言えるでしょう。

ですが一方で、購入前の室内確認が出来ないため修繕費が嵩む、すぐ退去者が出る可能性があるなどといったデメリットやリスクがあることも見逃してはいけません。
購入してから後悔することがないよう、メリットだけではなくデメリットとリスクをしっかりと把握しておくことが重要なのです。

小雪