将来の収入のためにと不動産投資を始める人は多いでしょう。
その中でも、不動産投資は「サラリーマンの節税効果が期待できる」と耳にしたことがあるかもしれません。
同じようなサラリーマンの節税方法としては、主にふるさと納税や住宅ローン控除などが有名ですが、この不動産投資による節税効果というものはどういったもので、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。



目次
1. 「不動産投資」で得られる節税効果
2. 赤字でも赤字にならない、減価償却費
3. 節税効果はあくまでも副産物と捉える

1.「不動産投資」で得られる節税効果


“節税”とは、法が想定している範囲内でシステムを適切に使い、税の負担を可能な限り減少させる行為のことを指します。税金を納めるのは国民としての義務ですが、支払わなくても問題のない税金を見つけて、必要以上に払いすぎることのないようにすることが節税の最大の目的となります。
サラリーマンのようないわゆる会社勤めの方であれば、仕事上の必要経費は請求することで会社側から支払われますし、必要書類提出することで会社が管理し計算を行います。毎月受け取る給与はすでに税金・保険料などが天引きされた状態ですし、そもそも自己申告する機会があまりないため、納める税金の額は変えられないと思ってしまいがちかもしれません。

そこで、注目されるのが「不動産投資」なのです。サラリーマンにとって数少ない有効な節税方法ということから、中には節税を一番の目的として始めた、もしくは始めたいという方もいるかもしれません。
そもそも不動産投資による節税効果とは、どのようなものなのかご説明します。

■サラリーマンが節税できる仕組み
サラリーマンが会社から受け取る“給与所得”には税金がかかります。この税金は“給与所得”が多ければ多いほど高くなりますから、経費などをここから引いて給与所得額を低く抑えることができれば、節税が可能になるでしょう。
が、仕事上での必要経費は会社が支払っているため、個人が経費として引くことはできません。

ここで出てくるのが不動産投資になります。不動産投資が赤字であれば、赤字分を経費として給与所得から差し引くことが出来ます。引いたことで給与所得が抑えられ、その分節税することが出来るというわけです。これを「損益通算」と言います。

例として、給与所得500万円のサラリーマンがマンションの賃貸経営をはじめ、そこで100万円の赤字を出したとしましょう。赤字分の100万円を500万から引いた400万円が所得になります。所得税は給与を受け取った時点で既に天引きされているため、その時点で給与額にダイレクトに影響を受けることはありませんが、後に確定申告を行うことで赤字の100万円分に課税された分、つまり払いすぎた税金分が還付されることになる、ということです。

特に不動産投資を開始した初年度は、仲介手数料や司法書士への報酬代、災害保険など各種保険料といった多くの経費、不動産取得税や登録免許税、印紙代や消費税など、様々な税金がかかるため赤字になりやすくなっています。賃貸経営が軌道に乗れば赤字は徐々に減っていくため効果は少しずつ薄れてきますが、負担になりやすい1年目の節税効果には十分期待できるでしょう。



2. 赤字でも赤字にならない、減価償却費


節税効果があるとはいえ、「赤字」という言葉に拒否感をおぼえる方は少なくありません。確かにその分の自己資金の支出が増えていることは事実。しかし、投資をする上でもっとも重視しなければならないのは、一定期間内の資金の流れ(キャッシュフロー)を把握し、手元に残るお金をプラスにすることです。

実は不動産投資の場合、「赤字でも実際には儲かっている」というケースもあり得ます。
それを可能にしているのが「減価償却費」です。建物には構造別に耐用年数が定められており、時間の経過とともに価値が下がっていくものですが、毎年劣化していく分を“帳簿上で経費として計上”することが出来るのです。つまり、実際の支出がないにもかかわらず、経費として収入から差し引くことが出来るため、会計上は赤字になっていても実際にはキャッシュフローがプラスになっている状態になるのです。

それぞれの耐用年数は、木造が22年、軽量鉄骨造が27年、重量鉄骨造が34年、鉄筋コンクリート造は47年になっています。中古物件の場合、築年数がこの耐用年数を超えているか否かで計算方式が変わるため、それぞれのケースで減価償却費を実際に計算してみましょう。

■耐用年数が越えている場合
まず、築25年の木造一戸建てのケースで考えてみましょう。
木造の法的耐用年数は22年ですから、既に築年数が越えています。このような建物で計算する場合、法的耐用年数の20%が耐用年数にあたるため、「22年×20%=4年」となります。例えばこの建物を3,000万円で購入したと仮定した場合、減価償却費は「3,000万円÷4=750万円」となり、1年あたり750万円分を経費として差し引くことができるのです。

■耐用年数が越えていない場合
次は築17年の鉄筋コンクリート造マンションで考えてみます。
越えていない建物の場合、法的耐用年数から経過年数を差し引いた上で、経過年数の20%を加えます。鉄筋コンクリート造の法的耐用年数は47年、築年数は17年という事は差し引きすると30年。「30年+17年×20%=33年」という事がわかります。この建物の購入費が3,300万円だったとすれば、「3,300万円÷33年=100万円」になり、1年あたり100万円分が減価償却費であることがわかります。

つまり、既存の耐用年数が少なくなっている建物ほど年間の減価償却費は大きくなり、帳簿上の経費は増えて利益は少なくなっていきます。ですが、その分徴収される税金も減りますから、結果キャッシュフローがプラスになり「赤字に見えても実際は儲かっている」状態になるのです。



3. 節税効果はあくまでも副産物と捉える


不動産投資が赤字になると、上述したような形で節税が出来るという事はご理解できたでしょうか。
しかし、不動産投資は投資ですから、将来的にその不動産にお金を生み出してもらうことが本来の目的のはずです。節税ばかりに拘って「税金を可能な限り払わない」事を前提にしてしまい、「利益を出さないように」してしまうと言う行為は、まさに本末転倒。いつの間にフォローできないほどの赤字になり、投資の失敗という結果になってしまったら元も子もありません。

あくまでも節税効果は投資する上でのメリットであり“副産物”として捉え、利用可能である限りは上手に利用した上で、将来的に安定した利益を得られるための運営をしていく、という事を忘れないようにしましょう。

小雪