近年、「投資」への注目度が高まっていますが、中でも“NISA(ニーサ)”を利用して投資を始める人が増えているようです。
そしてこのNISAでの投資先として多くの人が選んでいるのが“REIT(リート)”になります。

そこで今回は、NISAとREITはどういったもので、それぞれどのような仕組みなのか、メリットデメリットをまとめました。NISAを活用してREIT投資の検討をしているのならば、ぜひ押さえておきましょう。



目次
1. NISAとはどういったものなのか
2. NISA口座の仕組み
3. REITとはどういったものなのか
4. REITのメリット
5. REITのデメリット
6. NISAでREITを始めるには
7. まとめ

1. NISAとはどういったものなのか


まず“NISA”とはどういったものなのか、詳しく見ていきましょう。

NISAの正式名称は「少額投資非課税制度」というもので、最長5年間、毎年120万円までであれば投資で得た利益が非課税となる制度です。通常、株式投資や信託投資などで得た分配金や配当金などは課税対象であり、20.315%の税金が課せられることになります。
しかしNISA口座を利用して取引して得た利益に限り課税されることはありません。つまり、最大600万円分(5年×120万円)の利益を非課税で運用することが可能なのです。

NISA口座の利用要件として、

・1人につき1口座
・対象利益:資産運用による配当、売却益
・利用期間:2024年まで

というものがあります。
NISAは2014年に開始した制度であり、本来は2024年までを期限としていました。
しかし、令和2年の税制改正によって、

・利用期間:2028年まで
・非課税枠:「20万円/年」または「102万円/年」

と変更されることが決定しました。
大きく変わるポイントは、非課税枠が2階建てになったということです。簡単に言ってしまえば、1階建て部分は初心者向け、2階の部分は投資経験者向けとして考えると分かりやすいでしょう。
なおこちらは2024年からであり、現時点では適応されていません。




2. NISA口座の仕組み


利用者にとって大きなメリットが得られるNISAですが、当然デメリットがあることも見逃してはいけません。
どのような注意点があるのか見ていきましょう。


■損益通算は不可能
投資で利益が出た場合は、一定額であれば「非課税になる」という大きなメリットが存在しています。
しかし、損出が出た場合はそのメリットが享受できないばかりか、「損益通算ができない」という大きなデメリットが存在しているのです。

そもそも損益通算とは、一定期間内の利益と損失を相殺するものになります。
しかしNISA口座では「売買損失はないもの」とされるため、たとえ実際に損失が発生したとしても、他の配当金や売買益等との損益通算はできないのです。またそれに従い、損失の繰り越し控除も認められていません。
状況によっては大きな損失が出ているにもかかわらず、多額の税金が発生してしまう可能性もあるでしょう。


■失敗のリスク
NISAは節税しながら投資が出来る、と考える方も多いでしょう。
ですが投資である以上、失敗というリスクが付きまとうことを忘れてはいけません。低リスクの投資は存在していても、それでも「絶対失敗しない」という保証はないのです。利益を得る可能性があれば、当然損失が出る可能性もあります。
なんとなくやっといたほうがお得そうだから、と気軽に始めるのは後悔のもと。しっかりと投資の知識を身につけてから始めましょう。


3.REITとはどういったものなのか


次に、“REIT”について見ていきましょう。

REITはReal Estate Investment Trustの頭文字を取ったもので、「不動産投資信託」のことを指します。海外にもREITは存在していますが、日本の不動産を対象にしたものはJAPANのJがつけられ、「J-REIT」と呼ばれます。

その仕組みですが、まず投資家から資金を募ります。集まった資金を利用して、オフィスビルや商業施設、マンション、リゾートホテルなどといった複数の不動産を購入。それらを運用すれば家賃収入や売却益を得ることができるでしょう。この収益を、投資家に分配するといったものです。
一言でいえば「不動産の証券化」であり、管理も維持も不必要な投資物件を「複数の投資家(オーナー)で共有している」、と考えても良いでしょう。


4. REITのメリット


不動産投資とREITはよく比較対象になりますが、投資対象がどちらも不動産であるという点は同じです。
では、REITならではのメリットについて考えてみます。


■少額からの投資も可能
不動産投資を始めるのならば、投資物件を所有している必要があります。不動産を相続したというケースもありますが、多くの方はまず投資物件の購入、または建築するところからのスタートとなるでしょう。
少なくとも数千万円の資金が必要となるため、失敗時のリスクは非常に大きなものとなります。また、初期投資金の高額さゆえにはじめるのを躊躇ってしまう人が多いのも事実です。

しかしREITは、複数の投資家から資金を集めて不動産を購入するため、1人が多額の資金を用意する必要がありません。少額からでも始めることが可能なので、リスクも低く開始のハードルもかなり低いと言えるのです。


■取引に時間がかからない
通常の不動産投資であれば、投資物件の選定から融資の手続き、審査など、取引完了まで多くの時間と手間を要するものです。
その一方、同じ不動産が投資対象であるものの、REITは投資信託商品になります。つまり、株式の取引と同じように時間を必要とせず、自分のタイミングでの取引が出来るのです。


■専門家による運用
不動産投資は管理委託という方法はあるものの、基本的に自分での管理・運用になります。将来を予測しながら対策を立て、コントロールをしながら経営をするというのは、非常に自由度が高い反面、やはり手間やコストがかかることは間違いないでしょう。

REITのもっとも大きなメリットとして挙げられるのが、「専門家による運用」になります。
経験豊富なプロによって、不動産の選定から運用、専門の業者による管理業務などが行われるため、手間が一切かかりません。管理に自信がない、時間が取れないような方でも手軽に不動産投資を始めることができるでしょう。


■リスク分散が容易
投資につきものなのがリスクです。そのリスクをできるだけ引くするために取れる対策のひとつが“分散投資”になります。REITは同時に複数の物件に投資が出来るため、容易にリスク分散をすることができるのです。
いくら専門家が見立てた不動産とはいえ、大きな利益を出すものもあれば、そうでないものも存在しています。複数の不動産に投資し、組み合わせることで損失のリスクを軽減することができるでしょう。

不動産投資でも複数の物件を所有することによってリスクの分散をすることが可能ですが、その価格や手間なども含めて考えれば、やはりハードルが高くなってしまうのは否定できません。


■流動性が高い
不動産投資に必須の不動産は売却に時間を要するため、流動性が低いと言われています。
今売りたいと思っていても、買手が見つかるまでは売却することができません。売却期間はおよそ3ヵ月から6ヵ月が目安であり、売却するタイミングが重要であると言っても過言ではないのです。

REITは取引きの際に時間がかからないように、売却の際にも時間がかかりません。
リアルタイムでの取引が可能ですので、急に現金が必要となったときにはすぐ対応することが出来ます。この流動性の高さは、REITのメリットのひとつに含められるでしょう。




5. REITのデメリット


複数のメリットがあるREITですが、やはり投資である以上、注意しなければならないリスクがあります。
ここでは、REITを行う際に発生するデメリットを見てみましょう。


■不動産投資ならではのメリットはない
REITは不動産投資と同じように不動産を対象に投資を行いますが、不動産投資ではありません。
不動産投資の管轄は国土交通省である一方、REITの管轄は金融庁であり金融商品なのです。

そのため不動産投資を行う際で得られるメリットを享受することができません。
つまり、他の投資商品との損益通算や相続税対策といった、不動産投資ならではのメリットを受けることができませんので、そちらのメリットの享受を望むのであれば、REITではなく不動産投資を選んだほうが良いでしょう。


■上場廃止などのリスク
REITの投資法人も一般企業と同様、収益低下による倒産のリスクが存在しています。それにより、価格の下落が避けられず投資金額が返ってこない可能性もあるでしょう。また、上場廃止基準に該当してしまえば上場廃止となり、取引が困難になることも考えられます。

不動産投資であれば、不動産投資会社や管理会社が倒産したとしても、不動産自体は手元に残り失うということはありません。


■分配金減少のリスク
REITは年2回(または1回)の決算時に分配金としてお金を受け取ることが出来ますが、これは当然一定額ではありません。不動産投資と同じように、テナントの退去による空室の増加や金利上昇、さらには自然災害などの影響を受ければ、分配金が減少する可能性もあるのです。


■価格変動のリスク
不動産投資でも物件価格の変動はもちろん見られますが、日によって急激な変動が見られることはまず考えられません。しかしREITは投資信託商品であり、証券取引所に上場しているため、株式と同様に取引価格は日々変動します。同じ商品でも、購入や売却のタイミングによっては収益や損失に差が出ることも考えられるでしょう。


6. NISAでREITを始めるには


NISAで運用できる投資商品は決まっており、この中にREITは含まれています。つまり、NISA口座でREITを行うことは可能です。REIT銘柄も、オフィスビルから商業施設、物流、ホテルやマンションなどの住居、さらには複合型ものもあり、投資先はもちろん自由に選ぶことが出来ます。REITは銘柄によって当然差はあるものの、平均利回りも平均4%前後と安定しているのが特徴です。

NISAでREITを始めるにはいくつかの手順を踏む必要がありますが、まずNISA口座を開設しなければなりません。口座は証券会社だけではなく、銀行などでも開設することができます。口座開設と同時にNISAの申し込みが可能であれば、合わせて行っておくとスムーズになるでしょう。
ただし一般口座と異なり、NISA口座は税務署の審査があり開設までに時間を要しますので、急いでいる方はその時間も考慮に入れておくことをおすすめします。


7. まとめ


最長5年という期限はあるものの、非課税という大きなメリットが存在しているNISAと、比較的安定した家賃収入を得ることが可能なREITは、相性の良い組み合わせと言えるでしょう。

REITによる不動産運用はそれぞれの専門家が行いますので、不動産投資に自信がない方でも気軽に始めることが可能です。また、少額からでも購入できるREITは、始めるハードルの低さも魅力になります。
ただし、REITと不動産投資は似たようで大きく異なる上、メリットだけではなくデメリットも存在していることを見過ごしてはいけません。REITの運用を検討するのであれば、リスクも十分把握した上で活用するようにしましょう。

小雪