日本は自然災害が多い国です。地震や台風をはじめ、最近では大雨による水害や土砂災害も増加し、不安を感じている方も多いでしょう。不動産投資を検討している方の中には、災害リスクにどう対応すればよいのかわからず、二の足を踏んでしまっている方も多いかもしれません。

そこで、不動産投資における災害のリスクから、自然災害へ回避策などを詳しく説明します。



目次
1. 不動産投資と災害リスク
2. 代表的な自然災害
3. 災害リスクへの対策
4. 災害に強い不動産を見極めるポイント
5. まとめ

1. 不動産投資と災害リスク


日本で不動産投資を行う以上、災害リスクに備えることは必須となります。
災害に合わないで欲しい、なければいいななどという希望的観測ではなく、「もし災害が発生したら」を前提に、どの程度の被害を受けることになるかを考えることが必要です。

地震などはいつどこで発生するのかわからないため予知は難しいですが、地震や大雨に伴う土砂崩れ、または台風による河川の氾濫などに対しては、ある程度の被害規模などを予想することはできるでしょう。過去にその場所や似たような地形で発生した災害や被害の内容を知ることが出来れば、どのような対策を取ればよいのか見えてきます。

とはいえ、自然災害による被害規模は年々増加し、「想定外」や「数十年、数百年に一度」などという言葉も良く聞かれていることも事実です。対策はしていたけれど、これほどとは思わなかったというケースもめずらしくありません。
だからと言って、「どうせ被害が避けられないなら、対策をしなくても問題ない」ということではないでしょう。不動産投資を行うのであれば資産を守るという意味においても、今後もさらに被害が頻発化・甚大化することを念頭に置き、できる限りの対策をしておくことが重要なのです。


2. 代表的な自然災害


日本国内で発生する自然災害の中で、不動産投資に影響を与えるであろう代表的な災害はこちらになります。


■地震によるもの
地震大国でもある日本において、必ず備えておかなければならない被害が地震です。
2011年の東日本大震災をはじめ、2016年の熊本地震や2018年の北海道胆振東部地震などは記憶に新しいでしょう。各地で大規模な地震が発生しており、小規模や中規模な地震は頻繁に発生。もし大規模地震が発生した場合の被害は広範囲にわたり、場合によっては復興まで長期化することもめずらしくないのがこの被害になります。

さらに今後30年の間に、都市直下型地震や南海トラフ地震が70%程度の確率で発生すると言われているため、不動産投資を行うにあたって地震への対策をとることは必須であるとも言えるでしょう。


■台風によるもの
台風の大型化が進んでいると言われている近年では、台風による被害も甚大化しています。
2019年の台風15号では千葉県を中心に大規模な停電被害を、同年19号では関東及び東北において多くの河川の氾濫を発生させました。

台風による被害は強風による破損と停電、大雨による浸水や雨漏り、場所によっては土砂災害の影響も出てくるでしょう。


■大雨によるもの
大雨と言えば台風のイメージを持っている方も多いでしょうが、近年では大雨のみによる災害も頻繁になっています。
2012年7月及び2019年8月には九州北部豪雨、2018年7月には西日本豪雨が、2021年8月には線状降水帯によって西日本に災害級の大雨をもたらしました。2021年7月に発生した伊豆山土砂災害は、大雨が原因のひとつとも言われています。
大雨による被害は河川の氾濫による浸水だけではなく、こちらでも土砂災害が発生する可能性も非常に高くなります。




3.災害リスクへの対策


投資にはリスクがつきものとはいうものの、不動産投資にとっての災害リスクというものは特にダメージが大きいものです。予測不能なものであり確実に避けることはできませんが、有効な対策として挙げられるものがこちらになります。


■火災保険への加入
まずは「火災保険への加入」です。
火災保険は火災の際にしか補償が受けられないと思っている方も多いのではないでしょうか。一般的な火災保険であれば火災はもちろんのこと、落雷や爆発から、台風、風害、雹災、雪災、大雨による浸水などまで、多くのものをカバーしています。保険のプランや特約などによっても保障内容は大きく異なりますので、加入前にはしっかりと確認をしておきましょう。

基本的にローンを利用して不動産投資を行っているのであれば、ローンの利用条件に「火災保険の加入」が求められるため、すでに加入が済んでいるケースがほとんどです。しかし融資を受けていない場合は任意になることから、加入していない方も少なくありません。前述したように、年々台風の巨大化や被害の深刻化が進んでいることを鑑みても、リスク軽減のためにも加入しておくことをおすすめします。

なお、アパートやマンションなど1棟投資を行っている場合は、“建物”に対しての火災保険へ加入することが一般的です。各部屋については入居者がそれぞれ加入することになります。


■地震保険への加入
火災保険では“地震”を起因とした被害の補償はされません。たとえ火災が発生したとしても、その火災の原因が地震によるものあった場合、保険金を受け取ることが出来ないのです。そのため、地震へのリスク軽減を考えるのであれば、地震保険へ加入することが必要となるでしょう。
ちなみに地震保険への加入は、火災保険へ加入していることが前提となっています。

ただ、地震保険で保障される金額は、火災保険の保険金額の30~50%ほどの範囲であり、限度額も“建物5,000万円”、“家財1.000万円”となっています。地震保険はあくまでも「被災者の生活の安定」が目的であり、住宅を建て直すための保険ではないからです。しかし、地震による被害を補償する保険はこの地震保険しか存在していないため、大規模地震の多い日本では加入しておいた方が安心でしょう。


4. 災害に強い不動産を見極めるポイント


リスクに備えることは大切ですが、それ以前に「災害に強い不動産」を購入するということも有効なリスク対策になります。リスクをゼロにすることは不可能でも、最初からリスクが低い不動産を見つけ出すことが必要なのです。
では、購入時にどのような点に注目すればよいのでしょうか?




■強い地盤であるか
地震の被害の大きさは地盤の強さによって変化します。いくら地震に備えた対策を取っていても、地震に強い建物であったとしても、地盤が軟弱であれば意味がありません。地盤次第では地震によって液状化し、建物が倒壊するおそれもあるからです。

そのため、地盤の強い土地に建てられている建物を購入することがポイントです。
地盤の強さは建築前に調査され、「地盤調査報告書」で確認することが出来ます。中古物件の場合はこの報告書が失われていることもあるため、その場合は近隣の地盤調査データを確認するか、改めて地盤調査を行うことになるでしょう。


■ハザードマップの確認
購入候補物件が見つかったら、その不動産周辺のハザードマップも確認しましょう。各市区町村のホームページなどで見ることが出来ます。
河川の氾濫による浸水、土砂崩れが発生する可能性、地震による液状化現象が予測されているエリアなどが記されており、災害リスクの高い不動産を購入することを防ぐことができるでしょう。

とはいえ、災害のリスクが高くない地域でも“絶対に被害を受けない”ということではないため、油断してはいけません。


■新耐震基準が適用されているか
不動産投資以前に、日本では“耐震性の高い物件”を選ぶことは大前提であると言えます。
建築基準法には現行の「新耐震基準」と、改正される前の「旧耐震基準」の2つがありますが、より高い耐震性の物件を購入したいのであれば、このうち新耐震基準の物件を選びましょう。
それぞれ耐震基準が異なり、

旧耐震基準:震度5程度の揺れで倒壊しないことが基準
新耐震基準:震度5程度ではほとんど破損せず、震度6~7程度でも倒壊・崩壊しないことが基準

となっています。改正が行われたのは1981年であるため、それ以降に建てられた物件を購入することが地震への対策となります。
しかし1981年以前のものはすべて不可ということではなく、その場合は耐震補強工事を行い新耐震基準を満たしているかどうかが判断のポイントとなるでしょう。


■高い耐震等級の物件を選ぶ
耐震基準とは別に「耐震等級」というものが存在しており、この耐震等級が高い物件であるほど、地震に対して強い物件となります。
“耐震等級1”では新耐震基準と同様な耐震性能、“耐震等級2”で耐震等級1の1.25倍の地震への耐震性能、最高の“耐震等級3”では耐震等級1の1.5倍の地震への耐震性能を保有していることになるのです。つまり、できる限り耐震等級が高い物件を選ぶことが安心へつながることになるでしょう。


■制震・免振構造であるか
投資先にマンションを選ぶ場合は、構造にも気を配らなくてはなりません。
構造には“制震”、“免振”、“耐震”の3つがあり、このうちの制震・免震構造のものを選びましょう。
どれも似たようなものと考えられがちですが、

制震:地震の揺れを吸収する
免振:地震の揺れを受け流す
耐震:地震の揺れに耐える

と異なっています。
このうちの耐震構造は建物自体の堅さと強さで地震に対抗するのですが、一定以上の地震の場合は耐えることが難しくなり、柱や梁、壁などが欠損する恐れが出てきます。地震のエネルギーを吸収・受け流す制震及び免振に比べて建物自体の揺れも大きくなるため、被害が大きくなりやすい傾向があるようです。
だからと言って「制震・免振構造であれば被害を受けない」わけではありません。あくまでも1つの判断材料として抑えておきたいポイントとなります。


5. まとめ


今回は、不動産投資における最大のリスクともいえる「災害リスク」についてお伝えしました。
不動産投資には空室リスクや家賃下落リスクなど、いくつかのリスクが存在しています。その中でも災害によるリスクは、破損による高額な修繕費の発生や入居者の流出による収益の減少、最悪のケースでは不動産を失う可能性も否定できません。

自然災害による被害が増加している現状で、取れる行動は災害リスク自体を可能な限り回避すること。その上で、万が一災害が発生してしまった場合を考え、被害を最小限に抑えるための対策を行っておくことが重要なのです。
不動産投資において不動産は欠かせないものであり、大切な資産でもあります。それらを守るために、災害のリスクを想定してしっかりと備えておきましょう。

小雪