ひと昔前までは「入社から退職までずっと同じ会社に勤め上げる」というスタイルが一般的でしたが、昨今では働き方も多様化し、ひとつの会社にこだわることが少なくなっているようです。終身雇用を見直す企業も増え、入社したから安心とは一概に言えなくなってしまいました。退職金に期待することもできず、老後の年金もどれだけ受け取れるのかすらわからないのが現状であり、漠然とした不安感を拭えない方もいらっしゃるかもしれません。

そんな中、資産運用に興味を持ち20代で投資を始める人が増えています。特に長くできる資産運用として、「不動産投資」に注目が集まっているものの、「不動産なんて高いものは自分には買えない」と思っている方も多いのも事実でしょう。
そこで今回は、20代から不動産投資を行うメリットと、注意すべきポイントなどを解説します。



目次
1. 20代でも不動産投資は可能か
2. 20代から不動産投資を始めるメリット
3. 20代から不動産投資を始めるデメリット
4. 失敗しないためのポイントとは
5. まとめ

1. 20代でも不動産投資は可能か


20代と言えば、ようやく社会人への仲間入りを果たしたばかりの方から、働き始めて数年経過し、ようやく仕事に慣れてきたという方がほとんどでしょう。まだ月々の収支のバランスがうまくとれていない、貯蓄があまりできていないという方も多いかもしれません。
そんな状況なのに不動産投資はできるの?と考えてしまうのも当然です。しかし、20代でも不動産投資は可能であるどころか、むしろ20代だからこそぜひ不動産投資は考えておきたいことなのです。
その理由をひとつずつ見ていきましょう。


■投資規模の選択ができる
不動産投資には莫大な資産が必要と考えている方もいらっしゃるでしょう。確かに、都心のマンションを一棟買いするような投資規模であれば、億単位の資金が必要になります。
しかしワンルームマンション投資(区分マンション投資)なら、投資額を抑えて不動産投資を始めることが可能なのです。中古の物件であればさらに資金のハードルは低くなります。
入居需要の見込める立地の物件を選ぶことによって長期的な家賃収入が期待できますので、「資金は少ないけど現物不動産での投資をしたい」という方は、ワンルームマンション投資を選択すると良いでしょう。


■会社員であればローンが組みやすい
おそらく、20代で不動産を買えるだけの資金があるというケースは稀です。いくら中古のワンルームマンションの購入ハードルが低いとしても、やはり不動産ですからある程度の資金は必須となります。
しかし不動産投資には“不動産投資ローン”があるため、資金不足が大きな問題になることがありません。
特に会社員であれば、収入が安定しているため審査時に有利になりやすい傾向が強くなっています。新入社員の場合だと年収と勤続年数の問題がやや気になりますが、「これから先、長い間勤続できる」と判断されれば返済能力を認められて長期ローンが組めるという可能性もあるでしょう。


■不動産投資は副業に該当しないことが多い
副業を解禁している会社が増加しているとは言われていますが、依然として副業禁止としている会社は少なくありません。そのような副業禁止の会社でもあっても、「不動産投資は認めている」ケースが一般的です。
その理由として、不動産投資(不動産経営)を一律禁止してしまえば、相続や譲渡で引き継いだ不動産の運用が出来なくなる、というものが挙げられます。また転勤の際、一時的に自宅を賃貸に出すということすら認められないことになるでしょう。そのため、会社としては不動産投資を“副業”として禁止することが難しいのです。
ただし中には不動産投資も副業に含めて禁止している会社もありますので、念のために勤務先の就業規則を確認しておいたほうが良いでしょう。


2. 20代から不動産投資を始めるメリット


20代でも不動産投資は可能であることはご理解いただけたでしょうか。
不動産投資を始めるのに年代はそれほど問題にはなりませんが、20代から始める不動産投資には多くのメリットがあります。


■収益を得られる期間が長くなる
不動産投資は長期投資であり、継続的な利益(リターン)を長い期間得ていく投資方法です。一般的に期間が長くなればなるほど資産が増やせることになります。

不動産投資の主な収入源は家賃収入です。例えば、家賃10万円のワンルームマンションを所有していたとしましょう。年間にすると120万円、10年間であれば1,200万円もの差が出ます。
実際には家賃がそのまま手元に入ることはありませんし、年数の経過によって家賃額が下落することがほとんどのため、ここまで極端になることはないでしょう。とはいえ、不動産の運用期間は長くなるほど利益が得られるということは事実です。


■返済期間の長いローンを組むことが可能
金融機関によって異なるものの、不動産投資ローンは満80歳までの完済が条件とされています。
借り入れ期間は最長で35年ですが、例えば60歳でローンを組んだ場合は80歳になるまでの20年しか借入することができません。借入期間が短くなれば月々の返済額が大きくなるため、その負担も大きなものになるでしょう。
その逆で、20代で組んだ場合は完済時年齢に余裕があるため、最長35年の融資が受けられることがほとんどです。2件目、3件目と規模を拡大する際にも、若いほうが返済期間の長いローンを組みやすい傾向があります。これは若い人ならではのメリットと言えます。


■早い段階で実績が作れる
経営状態の良い物件を所有していれば、“不動産投資の実績がある”と認められるでしょう。そうなれば、次の物件を購入する際に融資が受けやすくなるという点が挙げられます。信用に基づき、金利を下げるなどより良い条件で契約を行える可能性もあるでしょう。
投資の規模拡大のためには金融機関からの信用は必須となりますので、20代という早い段階から実績を積み重ねられるのは大きなメリットになります。


■失敗してもリスタートしやすい
リスクが低いとされている不動産投資でも、確実に成功するとは限りません。どれだけ綿密な計算と計画を行い、様々なリスクを最小限に抑え込めるだけの対策をしたとしても、リスクを発生する可能性をゼロにすることはできないのが現実です。例えば地震や風水害などといった自然災害は、対策はできても避けることできません。

このようなことから、最悪のケースでは不動産投資が失敗に終わることもあるでしょう。定年後、退職金をもとに不動産投資を始めるというケースは多いですが、失敗した場合にもう一度やり直すという機会は年齢的に厳しいと言えるかもしれません。
しかし20代であれば、気力も体力もあるため立ち直せる時間は十分にありますし、その失敗を次のチャンスに生かせる機会も多くなるでしょう。




3.20代から不動産投資を始めるデメリット


もちろんメリットだけではありません。
20代という若さがデメリットになってしまうケースはこちらです。


■融資が通らないケースがある
会社員であればローンを組みやすいとはお伝えしましたが、やはり個人属性や自己資金額などで不利になりやすい傾向が見られるようです。
不動産投資ローンの融資審査の際、購入を予定している物件の評価や事業性に加えて、契約者本人の属性も審査対象になります。年収、勤務年数も審査対象に入るため、社会人になって間もない20代の場合は融資が受けられないことも少なくないのです。

個人属性が低い場合でも、自己資金が十分あれば融資を受けられたというケースもありますが、20代であればまだ収入が少なく、十分な貯蓄が出来ていないことが考えられます。すぐに自己資金を貯めるということは難しいため、不動産投資を意識し始めた時点で資金の準備に取り掛かると良いでしょう。


■返済比率が高くなりやすい
自己資金が少ない場合は、頭金が必要のないフルローンや初期費用もすべて含めたオーバーローンという選択肢もあります。これらは自己資金の少なさをカバーできるものの、返済比率が高くなるというデメリットが存在しています。
不動産投資における返済比率とは、家賃収入に対する返済額の割合のことです。家賃収入が高額であったとしても返済比率が高ければ、実際に手元に残る利益は少なくなります。それでも順調であれば問題ないものの、突発的な出費や空室の発生に対応することが難しいため、赤字経営となり最悪の場合は失敗へと繋がってしまうこともあるでしょう。

安全な返済比率のラインは一般的に50%と言われています。20代はたとえ融資審査に通過できた場合でも、金利や返済期間などの条件が良くないことが多いので、この返済比率をしっかりと考慮する必要があるのです。


4.失敗しないためのポイントとは


投資の中でも比較的リスクが低いとされている不動産投資ですが、やはり投資である以上“確実”はありません。
とはいえ、できるだけ失敗は遠ざけたいもの。不動産投資を20代から始めるとした場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。


■不動産投資の勉強は欠かさない
話題のエリアの人気物件を購入したからと言って、必ず成功するとは限らないのが不動産投資です。
不動産投資に失敗する理由の多くは“知識不足”によるものがほとんどになります。知識がない段階で不動産投資を始めてしまえば、リスクを回避することも備えることも難しくなりますから、失敗に終わってしまうのも当然のことでしょう。
しっかりとした知識を得ておけば、専門用語を多用したセールストークに翻弄されることも、不動産の収益性の低さに気づかないまま購入してしまうことも避けられるのです。

不動産投資では幅広い知識が求められるため、すべてを勉強するということは難しいかもしれません。そこでまずは必要最低限の内容を身につけ、そこから実際に経営をしつつ必要に応じて知識を増やしていくことをおすすめします。



■背伸びをしすぎない
無理な借り入れは失敗のもとといっても過言ではありません。返済比率の項目で解説した通り、自己資金の少なさをカバーするために高額な融資を受けることは避けましょう。
安全な不動産投資を行いたいのであればけして背伸びをしすぎず、自分の収入額や自己資金額に見合った物件を選ぶことが大切なのです。


■メリットだけを強調した物件は要注意
良い投資物件の見極めには、様々な物件を見て比較することが必須となります。多くの物件を不動産営業マンに紹介してもらうことになるでしょうが、すべての会話を鵜呑みにすることは非常に危険な行為です。特に、メリットばかりを強調する営業トークには要注意。中にはほとんど利益が出ない物件や、入居付けが難しい物件であるにもかかわらず、良い点だけを伝えて売りつけてしまおうと考えている可能性も残念ながら否定できません。
もちろんすべての不動産営業マンがそのような行為をしているわけではないものの、知識や経験が少ない20代はターゲットにされやすい傾向が強くなっています。

絶対に失敗しないという投資物件は存在していません。リスクは多少なりとも必ずあるものであり、それを把握して対策することができるのが不動産投資です。自分で判断できるよう、しっかりと知識を押さえておきましょう。


5.まとめ


今回は20代から始める不動産投資のメリットとデメリットから、特に注意すべき点について解説しました。

不動産投資は長期投資であり、長い期間をかけて資産を形成していく投資方法であるため、早い時期から始めることによって将来に備えやすくなります。20代という若さで不動産投資を始めれば、より長い期間にわたってリターンも得られますし、ローンの完済を早いうちに終えることもできるでしょう。また、不動産投資で得た知識を、今後に生かすことも可能です。
その一方で、属性や資金の不足から融資審査に通りにくい、知識不足や経験の浅さを狙われやすいなど、若さゆえのデメリットも存在しています。

メリットを最大限に生かし、デメリットを可能な限り軽減したいのであれば、まず不動産投資について勉強するところからスタートしましょう。必要最低限の知識を身につけ、現実的なシミュレーションができたのであれば、ぜひ不動産投資を始める第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

小雪