不動産投資を始めようとしている方の中には、頭金をどのくらい用意すればよいのかわからない、という方も多いのではないでしょうか?また、現在進行形で頭金の準備中という方もいらっしゃるかもしれません。
不動産投資の中ではお手頃と言われているワンルームマンションであっても、取得には数千万円以上かかるもの。そのうち数%の頭金と言えど、その額はやはり小さなものではないでしょう。「始めるためには高額な資金が必須」という点が、不動産投資に手を出しにくい理由のひとつになっているのも事実です。

そこで今回は、不動産投資ローンには頭金が必要なのか、相場はどのくらいなのかを詳しく見ていきましょう。



目次
1. 不動産投資ローンに「頭金」は必須か?
2. 頭金が必要なケースとは
3. 不動産投資ローンの頭金の相場とは
4. 不動産投資ローンに頭金を入れるメリット
5. 不動産投資ローンに頭金を入れるデメリット
6. まとめ

1. 不動産投資ローンに「頭金」は必須か?


結論から言ってしまえば、「頭金は必ずしも必要」というわけではありません。状況と条件次第では、頭金なしのフルローンも不可能ではないでしょう。

しかし逆を返してしまえば、頭金が必要になるケースもあるということです。
不動産投資の審査では、対象となる物件の収益性や資産価値などのほか、個人属性などを評価します。そこから融資の可否や融資限度額が決定されるわけですが、評価が低い場合は希望の融資額に満たないこともあるでしょう。この場合、頭金を用意することになるのです。


■自己資金との違い
頭金と自己資金は混同されがちですが、この2つは同じものではありません。
頭金とは、物件価格からローンの借り入れ分を差し引いた部分を指します。物件価格の一部を頭金として支払うことにより、ローンの総額を減らしつつ返済額を減らすことが可能です。

その一方で、自己資金は融資以外に用意する金額全てを指します。物件価格以外にかかる諸費用などを足したものであり、この中には頭金も含まれるのです。
つまり、頭金とは自己資金の一部であり、頭金と諸費用を合わせたものが自己資金になります。


2. 頭金が必要なケースとは


不動産投資ローンの審査の評価によっては、頭金を求められるケースもあるとお伝えしました。
ここでは、頭金が必要となる状況を見ていきましょう。


■希望の融資額に満たない
まずは、審査を受けたけれど、残念ながら希望の融資額に満たなかった場合です。
購入を予定している物件もしくは個人の属性の評価が低かった場合、審査自体は通ったとしても希望した金額を借りられないということもあるでしょう。そのような場合は、足りない金額分を頭金として用意しなくてはなりません。
それが難しいのであれば、限度額内で購入可能な物件に変更することになります。


■融資引き締めの時期
金融機関の融資姿勢は、常に一定というわけではありません。日本銀行の金融政策によって、融資に積極的な場合と、慎重な場合が存在しています。また、不動産が供給過多になった場合や、不動産価格が高騰した場合などにも、各金融機関の判断によっては融資を引き締めることもあるでしょう。
このような時期に融資を受けたいのであれば、金融機関からの信頼を高めるためにも頭金を用意する必要があるのです。




3.不動産投資ローンの頭金の相場とは


金融庁が2019年に発表した「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」によれば、“物件の購入金額の一部を顧客の自己資金で賄わせているか”という質問に対し、15%の銀行が「必ず行っている」、63%の銀行が「概ね3分の2以上の案件で行っている」と答えています。
対して「一切行っていない」というのはわずか5%のみ。つまり、およそ95%の銀行では頭金を求められる可能性があるのです。


■頭金の実際の相場
多くの金融機関では“2割程度”の頭金を求めると言われているようですが、実際の頭金の相場はどのくらいなのでしょうか。

このアンケート調査では、「自己資金を何割充当しましたか」の問いに対し、60%以上が2割未満と答えています。中には5割以上という返答もありましたが、2割未満を充当したという答えが最も多く、やはり頭金は“2割程度”が相場と考えても良いかもしれません。

もちろん前述した通り、その人や物件の条件次第では融資額や求められる頭金は大きく異なります。状況やその時の金利・政策によっても変化してくることは必ず抑えておきましょう。


4.不動産投資ローンに頭金を入れるメリット


頭金の相場はわかったものの、頭金を入れたほうが良いのか、自己資金として手元に残しておいたほうが良いのか、判断が難しいのも事実です。
判断材料にするためにも、まずは頭金を入れるメリットを確認していきましょう。


■審査時に有利
金融庁のアンケートで明らかになったのは「多くの金融機関では頭金が求められている」ということです。必ずではありませんが、あったほうが審査時に有利になりやすいというのが事実でしょう。
頭金を入れれば十分な自己資金があるという証明になり、金融機関の信頼を高めることができるのです。
また、自己資本比率(総資産に占める自己資本の割合)を高めることにもなりますので、2件目以降のローン審査でも有利になる可能性があります。


■月々の負担を抑える
頭金を入れることで、借入額はその分だけ小さくなります。借入額が少なくなれば、月々のローン返済額と利息負担額を抑えることも可能でしょう。毎月手元に残る現金が増えれば、突発的な出費への対応も容易になりますし、繰り上げ返済を行うことで更に安定した運用ができるようになります。


■金利上昇リスク対策
現在、日本では歴史的な超低金利が続いています。しかし、この状況がいつまで続くかの保証はなく、その予想は専門家であろうとも正確に示すことはできません。借入れた直後に大幅に上昇してしまう可能性もゼロではないのです。頭金を入れることで融資額が減り、それに伴って利息も少なくなります。たとえ金利が上昇したとしても、その影響を小さく抑える効果が期待できるでしょう。
なお、頭金を入れることで金利優遇が受けられる金融機関も存在しています。




5.不動産投資ローンに頭金を入れるデメリット


不動産投資ローンで頭金を入れるメリットは大きいですが、やはりデメリットがないわけではありません。
メリットだけではなくデメリットもしっかりと確認し、理解しておくことが重要です。


■資金準備に時間がかかる
不動産の購入には中古でも1,000万円以上になることがほとんどであり、その2割程度と言えども金額はけして小さいものではありません。用意するまでに時間がかかればかかるだけ、投資をスタートさせる時期は遅くなります。その分、利益を得られる期間が短くなってしまうことは大きなデメリットでしょう。
特に不動産投資は拡大するのに時間を要するため、スタートが遅れたことによる機会損失がまったくないとも言い切れないのです。


■レバレッジ効果が得にくい
不動産投資ではレバレッジ効果を得るため、ローンを利用して物件購入することが基本です。
レバレッジ効果とは「テコの原理」の意味であり、小さな力で大きな効果を生み出すこと。不動産投資に置きかえれば“少ない資金で大きな投資効果を上げる”ことであり、自己資金だけではなく借入金を併用することによって、見た目の利回り以上の収益が得られるようになるのです。

このレバレッジ効果は、投資総額に対する自己資金の割合が小さいほど効果が大きくなるのが特徴です。頭金を入れてしまえば、自己資金の割合が大きくなってしまうのです。つまり、レバレッジ効果を最大限に生かしたいのであれば、頭金なしのほうが有利になると考えられるでしょう。


■想定外の支出への対応が難しくなる
頭金を入れてしまえば、その分手元資金が減少することになります。何も問題がないのであれば良いのですが、開始直後に設備の故障や災害などが発生する可能性も否定できません。この際、すぐに動かせる資金が少ないと、対応が難しくなることが考えられます。


6.まとめ


不動産投資を始める際、頭金の必要性と相場、入れることによるメリットとデメリットについて解説しました。
申請者によって状況や条件が異なるため一概に言い切ることはできませんが、95%ほどの金融機関では頭金を必要とし、その相場はおよそ2割程度となっているようです。メリットとしては、頭金を入れた分だけ借入金額を抑えることが出来、ローンの返済負担を軽減することができるでしょう。ただし、資金の準備に時間がかかること、想定外の支出への対応が難しくなることから、ある程度の資金を手元に残しておくことをおすすめします。

不動産投資に「正解」はありません。どちらのメリットもデメリットもしっかりと確認した上で、より良いと思ったほうを選ぶようにしましょう。

小雪