副収入を得られるだけではなく、節税対策や保険代わりなど、多くのメリットがある不動産投資。しかし不動産投資は、良い投資物件を購入すれば終了!というわけではありません。不動産の購入には非常に大きなお金が必要なだけあって、本当に自分にできるのかどうか、失敗に終わることはないのか、不安になるのは当然のことでしょう。

そこで今回は、多くの不動産オーナーが抱える悩みとその解決方法を、初心者の方でもわかりやすいように解説していきます。



目次
1. 不動産投資を始めかたは?
2. 物件購入後におこなうこと
3. 不動産オーナーが抱える悩みとは
4. 不動産投資の主なリスク
5. まとめ

1. 不動産投資を始めかたは?


不動産投資を始める前の漠然とした不安感の原因のひとつに、「不動産投資の始めかたがわからない」といったものがあります。
まずは不動産投資を始める前に行うことを見ていきましょう。


①資金調達方法の検討
不動産投資は、まず物件を所有しなければ始めることはできません。不動産投資物件は非常に高額なものなので、ほとんどの方は金融機関などから融資を受けて始めることになるでしょう。
さらにひとくちに銀行と言っても、メガバンクから地方銀行、信託銀行、ネット銀行と非常に種類が多く、金利や返済期間などの条件も大きく異なります。自分にとってもっとも良いと思える金融機関を選ぶことが重要なポイントです。


②物件選びと検討
資金の問題が解決したら、物件選びに入ります。新築か中古か、1棟か区分か、マンションか戸建てか、さらには都心か地方かによっても変わってくるため、慎重に判断しなくてはなりません。
また、建物の状況や周囲環境、競合となる物件が周囲にどの程度存在しているか、入居需要も調べる必要があります。そもそも入居者がいない限り収入は発生しないため、特に賃貸需要の調査は必須なもの。場合によっては現地確認も必要です。


③投資物件の購入
物件の検討が完了すれば、いよいよ物件の購入です。
仲介で購入する場合は、買い付け申込書を出して売買契約書を締結し、ローン審査が下りれば決済のちに引き渡しとなります。

なお、支払いは物件購入代だけではありません。購入後には建物の管理や維持費、賃貸ならばその広告費、さらには固定資産税や都市計画税などの税金も発生します。このようなランニングコストがどの程度になるか確認し、計画的に積み立てをしていきましょう。


2. 物件購入後におこなうこと


不動産はとても大きな買い物ですので、はじめての投資物件購入ならば緊張の連続でしょう。しかし、物件を購入してようやく不動産投資のスタート地点であり、まだまだ終わりではありません。
ここからは、賃貸物件のオーナーとして具体的な仕事を見ていきます。


①入居者募集
投資物件であっても、保有だけで利益が発生するということはありません。家賃収入は入居者がいない限り得られないため、まずは入居者募集を行います。

親戚や知り合いから探す、広告や張り紙などで周知させるといった方法もありますが、オーナーが独自に入居者募集するのであれば、賃貸情報サイトやアプリを活用するのが一般的です。
ただこの場合は仲介手数料が発生しないものの、契約の締結はオーナーが行わなければなりません。そのため、すべて自分で行いたい、できる限り広告宣伝費を押さえたいというわけでなければ、不動産会社に依頼したほうが良いでしょう。




②賃貸管理
入居者が見つかり、空室が埋まればようやく収入が得られます。
もちろんですが、その後も賃貸管理も行う必要があります。入居の契約を始め、退去の契約破棄手続き、家賃の回収と督促、備品整備、トラブル対応、修繕修理工事の手続きなどまで多岐にわたります。
場合によっては弁護士や税理士などを利用したほうが良いケースも多くなっています。


■管理会社に任せることも可能
幸いなことに、不動産投資はアウトソース(外部委託)の体制が整っている投資です。上述した入居者募集から大半の定型業務までは、管理会社に委託ができます。もちろんその分の委託料は必要になりますが、クレームやトラブル対応などをはじめとした多くの問題を管理会社に任せられるのは大きいポイントでしょう。
もちろん、不動産の価値を高めるための施策や予算額の決定など、その最終判断はオーナーが下す必要があります。ただしこの場合も第三者に相談が有効ですので、不安であれば上手に利用しましょう。


3.不動産オーナーが抱える悩みとは


不動産を所有し、いよいよ不動産投資が始まったとしても、不安や悩みは尽きないもの。
では実際に、多くの不動産オーナーが抱える悩みとはどのようなものがあるのでしょうか。


■入居希望者が見つからない
もっとも多いケースがこの「入居者がいない」というものです。入居者がいなければ収入はありません。空室でも維持費が必要ですから、その状態が続いてしまえば資金繰りがうまくいかなくなってしまうこともあるでしょう。
賃貸需要はあるのに空室が続くという場合は、競合相手が多いことが考えられます。

同じ立地・類似条件の物件の中から選んでもらうためには、「他の物件との差別化」が必要です。
もっとも手っ取り早い方法として考えられるのは、家賃の再設定でしょう。利回りは犠牲になるものの、空室率をカバーできるのであれば機会損失にはなりません。
とはいえ、家賃を下げることによって価格競争に発展することも少なくないため、可能であれば外装や設備などのほか、ペットや楽器を可能にするなどの条件の追加、敷金・礼金など初期費用の引き下げなど、競合物件にはない魅力付けをして差別化を図りましょう。


■退去が多い
入居者は見つかるもののすぐ退去してしまう、入居率が安定しないケースも多いもの。退去する理由は多くありますが、大きく分けて「防ぎようのない退去」と「防げる退去」の2種類が存在しています。
例えば、進学・就職・転勤などが理由の場合は、どれだけ良い物件であろうとも防ぐことはできません。
その一方で、住環境の不満が理由の退去は防ぐことが可能です。設備の老朽化、管理会社の対応不足、さらには住民トラブルが発生している可能性もあるでしょう。もし退去者が出た場合は、負担にならない程度のアンケートを取ってみると、その問題が発覚するかもしれません。


■入居者とのトラブル
中には家賃を滞納する入居者も少なからず存在しています。
家賃滞納する理由は、忘れていた、出張・旅行していた、病気・ケガをした、そもそもお金がないなどが挙げられますが、中には最初から支払う気がないといった悪質なケースもあるでしょう。法的手段として「契約解除」「差し押さえ」「明け渡し請求」などがあるものの、そのためには多くの手間と費用をかけることになります。

これらを可能な限り防ぐためには、契約前の審査を慎重に行うことが望ましいでしょう。特に属性に問題がある人が多い地域では、不動産管理会社と協力したほうが良いかもしれません。


■キャッシュフローが安定しない
上述した入退去の問題が存在したままだと、キャッシュフローは安定しません。
不動産運用においては、手持ち資金の余裕は重要なポイントです。家賃収入がなくなったときも手持ちがあればローン返済が補えますし、急な設備の修理や交換にも対応できるでしょう。万が一の時のために、キャッシュフローの安定は軽視してはいけないのです。

それでもまだプラスならば長い目で見ることもできるでしょうが、マイナスが続いているようであれば物件売却も視野に入れる必要があります。



■物件利益が低い
不動産投資は金融機関から融資を受けて物件を購入するのが基本です。
しかし、物件や属性によっては銀行から融資を受けられず、金利の高いノンバンク系を利用する人もいるでしょう。たとえ銀行から借り入れられたとしても、条件が悪く金利が通常より高い場合もあり得ます。
このような場合はローンの返済に追われ、収益が出せていないこともあるでしょう。

そのため、融資を受ける前にあらかじめ事業計画および返済計画をきっちりとたてなくてはなりません。
また、返済実績があると金利の交渉がしやすくなる傾向があります。借入額が減れば実績や信頼構築につながるため、低金利交渉するのも手です。場合によっては借り換えを検討しても良いかもしれません。


■突発的な支出
意外に多いのが、設備や建物の破損などで修理費を求められるケースです。退去後のメンテナンスやリフォーム、交換などにかかる費用も、通常使用の範囲内であればオーナー負担になります。手元に現金を残していなければ、このような突発的な支出への対応ができません。定期的な修繕工事を行っていたとしても、何らかの不都合により急に故障してしまうことはめずらしいことではないのです。
放置してしまえば、例えば外装であれば景観は損なわれますし、設備などであれば快適度が低下し、ひいては空室リスクにつながる恐れもあるでしょう。

対策方法としては、修繕積立金として備えておくことが重要です。家賃収入のすべてを返済に回してしまうのではなく、突発的な出費に備えて資金を手元に残しておきたいところです。


■家賃の下落リスク
家賃は設定すればずっとそのまま、というわけではありません。新築物件であれば相場以上でも問題ないでしょうが、築年数の経過に併せて家賃を設定しなおす必要があるのです。
固定資産税評価額は3年ごとに見直され、基本的に築年数が増えていけば評価額は下がり、それに伴って税額も下がっていく傾向があります。しかし、必ずしも毎回のように固定資産税評価額が減少するということではありません。
それでも家賃を下げなければならない状況になってしまえば、キャッシュフローが悪化し赤字経営に陥る可能性も否定できないのです。

このような場合は、適切なリフォームやリノベーションするという方法があります。
ある程度まとまった資金は必要となるものの、内容によっては賃料を値上げもできるでしょう。


4.不動産投資の主なリスク


不動産オーナーが抱える悩みはいくつもありますが、これらは大まかに5つにわけられます。
これは不動産投資のリスクでもあるため、おさらいとしてまとめてみました。


■入居者リスクと空室リスク
不動産投資で家賃収入を得たいのであれば入居者がいることが必須であり、入居者がいればそれにまつわるトラブルは避けられません。空室リスクと入居者リスクは表裏一体となっています。空室が長引けば賃貸経営が成り立たないため、一刻も早く入居者を見つけたい!となりがちですが、ここで入居者審査を怠ってしまえば、もっと大きなリスクを抱えることになるでしょう。
どちらかに重きを置くのではなく、入居者信用リスクと空室リスクでバランスを取らなくてはなりません。入居審査を入念に行いましょう。


■管理会社リスク
空室が長く続く、入居者からのクレームが多いなどの場合、委託している不動産管理会社に問題があるかもしれません。
どんなに良い物件でも、積極的に営業しなければ入居希望者に見つけてもらえません。清掃や建物管理を怠っていれば、入居者からのクレームが入ることになるでしょう。また、管理委託などの場合は家賃収入がなければ手数料がもらえないため、入居審査をゆるくしているケースもあります。そうなれば入居者リスク・空室リスクなどにもつながり、放置しておけば深刻な問題に発展する恐れがあります。
管理会社の変更は難しいものではないため、問題があると感じたら乗り換えを検討しましょう。



■金利リスク
投資物件を購入する際はローンを利用するのが一般的であり、不動産投資と金利を切り離すことはできません。住宅ローンでは固定金利が多い一方で、不動産投資ローンなどでは変動金利で融資を受けている方がほとんどでしょう。
金利が上昇すれば利息が増えます。支出が増えればその穴埋めの資金が必要になり、家賃収入で賄えなくなれば破綻する可能性も否定できません。

あらかじめリスクを考慮した上でのローンや物件を選ぶことによって、ある程度ですがリスクの回避はできます。また、利回りを高めておく、資金を手元に残しておくといった方法も挙げられます。


■老朽化リスク
建物の老朽化現象は避けられません。老朽化で資産価値は年々下がる一方で、その対策のためには修繕費用が必要になります。
老朽化した物件は入居者が集まり辛く、空室期間が長くなり稼働率は低下します。対策として賃料を大幅に下げてしまえば、いずれメンテナンス費用を賄えなくなるでしょう。メンテナンスしなければ、老朽化はさらに進むことになるのです。
家賃下落リスクのスパイラルを回避するためには、やはり修繕工事を欠かすことはできません。長期積立をしておくことをおすすめします。


■災害リスク
災害の多い日本に住んでいる以上、そもリスクから逃れることもできないのは事実です。
地震、災害、洪水や浸水などの自然災害のほか、火災などのリスクもあります。地震に強い地域を選ぶ、耐震性に優れた物件を選ぶのも手です。特にマンションは耐震性はもちろんのこと、台風や洪水の影響も受けづらいため、災害リスクが低めであると言えるでしょう。
可能であれば火災保険や地震保険に加入し、入居者の加入も義務付けると安心です。


5.まとめ


今回は不動産投資を始める前の悩みから、始めた後のよくある実際の問題や、その解決法などをご紹介しました。

不動産投資は始めるために大きな金額が必要となるため、なかなか開始に踏み切れないという方は少なくありません。投資初心者であればなおさら不安が強いものです。
しかし不動産投資は、あらかじめ備えて対策が出来る投資でもあります。どのようなリスクや悩みがあるか知っておくことで、あらかじめ先手を打って失敗する確率を軽減できるでしょう。

小雪