こんにちは。ライターのねぎみじんと申します。

2010年代後半から、日本はインバウンド政策を進めた影響で海外からの観光客が激増しました。
そこで流行り出し始めたのがいわゆる“民泊”と呼ばれるサービスです。

民泊とは、住宅やマンション、アパートの一室を宿泊用に貸し出すサービスのことで、
宿泊施設の需要が増えたことによって欧米で昔から行なわれていた民泊サービスが日本でも一気に流行したといわれています。

コロナウイルスの影響で日本に来る観光客が減ったことと民泊が問題に挙がったことで、
新たに施行された民泊新法による制限も相まって一時落ち着いていた民泊サービスですが、
またコロナウイルスが収束していくと見られているなか、観光客は増加しつつあります。

あれ?これもしかして…空室を多く抱えるくらいなら民泊で補えるのでは…?
なんて思った人もいるかもしれません。

そんなわけで今回は「民泊のあれこれについて」まとめてみました。
よろしくお願いします。

 


 1. 民泊って何?


まず冒頭でもいったように、民泊とは住宅やマンション、アパートの一室を宿泊用に貸し出すサービスの事を指します。

元々日本では宿泊施設として営業するためには旅館業法による認可が必要でした。
しかしインバウンドの増加によって宿泊場所の需要が高まったことで一般の住宅を宿泊場所として提供するサービスが普及していきました。

旅行者や出張者にとっては「安く泊まれる」ことや「ホテルとは違った現地の生活を体験できる」などのメリットがあり、
運営者には「空室の活用」「海外旅行者と交流できる」などのメリットがあります。
双方にメリットがあれば当然流行ってしかるべきですよね。

また民泊斡旋サービスサイトのAirbnbなどのサービスも台頭し、日本中で民泊サービスが流行っていったわけです。

 2. 民泊がなぜ問題になったか


ではなぜそんな民泊サービスが問題になったのでしょうか。
ずばり主に海外からの旅行者と周辺住民の間でトラブルが頻発したことが原因なのです。

・宿泊者が騒いだりドアの開け閉めの音がうるさいといった騒音問題
・指定の日以外に大量のゴミを出したり分別されていないといったゴミ出し問題
・民泊サービスの運営者である貸し主の素性や苦情を言うための連絡先が分からない問題

これら3つの問題を主軸として様々なトラブルへと発展し大きな問題となってしまったようです。

運営者側として単にレバレッジを効かせる事だけを考えるならば、
あくまで文化の違いなだけであってどっちが悪いといった話ではないということで落ち着くことができるでしょうが、
かたや周辺住民からすればたまったものではないですよね。

こういった背景から2018年に住宅民宿事業法、いわゆる民泊新法というものが施行されたのです。



 3. 民泊を行なうための条件(民泊新法解説)


一定の条件を設けた上で、一般の住宅でも宿泊施設として貸すことができるようになったのが民泊新法という法律です。
民泊を行なうための条件を簡単にまとめると以下のようになります。

・行政への届出
・宿泊として貸し出せるのは年間180日以下
・「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」があって、実際に少なくとも年1回以上は居住用として使用している家屋であること
・非常用照明器具の設置や避難経路の表示、定期清掃など宿泊者の安全や衛生面の確保などが出来ていること
・騒音、ゴミ出しルールの周知、苦情への対応、連絡先の明記など周辺住民への配慮が成されていること

宿泊者の安全の確保や周辺住民とのトラブルがなるべく起きないよう運営することをルール化する事で、
それらルールを守れるならそのルールの範囲内でなら民泊やってもいいですよ、となったわけですね。

民泊新法についてはこちらを参照してみてください。
政府広報オンライン|民泊を利用する人も、民泊事業を始める人も ご存じですか、新しいルール「民泊新法」

 4. 実際に民泊を始めるためには?


では空室率を抑えるために民泊に変えてみようと思ったとして必要なものと費用感はどうなのでしょうか。
簡単に一覧にしてまとめてみます。

○初期投資
・民泊の届出
民泊の届出費用は数千円程度です。

・リネンや清掃備品
シーツ、布団カバー、タオルなど最低限のリネン費用は1室あたり3万円程度といわれています。
必要な掃除機やほうき、バスタブの清掃用などは大体2万円程度と考えて良いでしょう。

・民泊用の家具家電
例えばベッドや机、洗濯機や冷蔵庫が必要になりますが、質を高めるかどうかなどのコンセプトにもよりますが数万円~数十万円ほどでしょうか。

・民泊用の消防設備
一般的な消防設備設置の初期費用は非常灯や火災報知機などで20万円程度です。

○日常的な費用
・水道、ガス、電気代
1LDKの場合は水道3,000円、ガス4,000円、電気13,000円程度に抑えられるでしょう。
オススメは電気ガスをセットで加入して割引してもらうことですね。

・インターネット
回線にもよりますが、おおよそ4,000円~6,000円ほどです。
回線をイチから引っ張ってくるとなると工事の許可取りや余計な費用がかさむ場合がありますので注意しましょう。

・消耗品
ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ゴミ袋など一般的なものでOKですので1,000円程度でしょうか。

・広告掲載費(OTA費用)、募集サイトの広告費
Booking.comやAirbnbなどの手数料は、予約が成立した場合に宿泊売り上げの12~15%程度となっています。

・清掃費
民泊清掃会社に依頼すると1LDKで1回あたり約6,000円くらいです。

・交通費
これは管理者が現地に出向くまでの交通費用です。

・家具家電積立金
家具家電は急に壊れて使用できなくなる恐れがあるので毎月3,000円ほどは積み立てておくのがオススメです。

・火災保険
2年に1回で20,000円ほどです。

・施設賠償責任保険(民泊向けの商品等)
2年に1回5,000円ほどなので毎月200円程度の積み立てでも十分です。

・管理会社に依頼する場合の費用
管理会社への支払額の相場は売り上げに対して15~20%です。



 5. 投資物件で民泊をするメリット・デメリット


投資物件において民泊をする際のメリット・デメリットも考えていきます。

○メリット
一般的に賃貸より民泊のほうが利回りが2倍以上高いといわれています。
稼働率が高ければ回転の速い民泊のほうが大きな利益が出る可能性が高いかもしれません。

周辺に観光地やビジネス出張などが見込める施設があり、周辺の宿泊施設より安価で民泊を提供できるなら稼働率が上がる可能性は十分あります。
その辺りの見極めが大事です。

特に大阪では2025年に万博も開催されますし、万博が終わった後でも観光客数は日本2位で世界トップレベルの人気があるともいわれているので需要はあるかもしれません。

○デメリット
大きく4つ挙げられます。

まず法整備に関する問題です。
民泊新法はまだまだ新しい法律なので何かしらの変更が入る可能性があります。
その変更が良い方向に向かえばいいですが悪い影響を受ける可能性だってあるのです。

何らかの原因によるインバウンドの低下も考えられます。
いわゆるコロナのような大規模な影響が起こってしまうと民泊の利用者も減ってしまいます。

また1年間のうち180日までしか宿泊施設として貸し出せないというのもデメリットといえます。
1年間フルで稼動させられないので、それも計算した上で運用する必要があります。
例えば民泊として貸し出しできない期間はマンスリーマンションとして貸し出すなど何らかの対策を試みても良いかもしれません。

そして複数の部屋があるマンションやアパートは注意した方が良いでしょう。

どういうことかというと、周辺住民に説明して理解を得る必要があるのと、民泊として利用している部屋がある物件は居住用の賃貸物件としての人気が大幅に下がるリスクも考えられます。

賃貸物件を民泊に転用する場合には初期投資を回収できるだけの宿泊ニーズを慎重に見極める必要がありそうです。

 6. 区分マンションは民泊していいの?


区分マンションの場合は民泊として運用しても良いのか心配になるかもしれません。
そういった際は管理規約を確認しましょう。

 
【民泊禁止条項の具体例】
・区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行なって営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。
・区分所有者は、その専用部分を、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業を行なう用途に供してはならない。
・区分所有者は、その専有部分をいわゆるウィークリーマンション等不特定多数の者との1ヶ月未満の期間の契約を繰り返す賃貸又は転貸の用途に供してはならない。
・区分所有者は、その専有部分を不特定の者に短期宿泊目的で貸与する事業の用途に供してはならない。


上記いずれかの記載がされている場合は、民泊営業が禁止されている事を意味しています。
書かれている内容がよく分からなければ正直に管理会社に確認を取るようにしましょう。



いかがだったでしょうか。
今回は「民泊のあれこれについて」まとめてみました。

どうせ空室率が高いなら一般的に利回りが高いといわれる民泊に手を出してみたくもなりますが、
年単位で借りることが多い賃貸業と比べて短期間しか滞在しなくて外国人を主なターゲットにする民泊ではやはりどうしても安定性に欠けギャンブル性が高くなるように思えます。

周辺の状況や社会情勢を見極める慎重な判断が必要なのではないでしょうか。