不動産投資を含め、事業を始めるときや規模の拡大など、ある程度まとまった資金が必要になることは多いでしょう。そのような際に利用できるのが「ビジネスローン」です。
しかしビジネスローンとはいっても種類が多いため、どれがどのようなものかわからないという方も少なくありません。

そこで今回は、ビジネスローンの仕組みから種類、利用するメリットやデメリットなどから、どれを選択するべきなのかを考えてみましょう。



目次
1. ビジネスローンとは
2. ビジネスローンの種類
3. ビジネスローンを利用するメリット
4. ビジネスローンを利用するデメリット
5. まとめ

1. ビジネスローンとは


ビジネスローンとは「事業資金専用のローン」であり、法人経営者または個人事業主が利用可能なローンです。
さらに資金の利用先は、新規事業の立ち上げ資金、設備投資資金、運転資金など“事業に関わる資金”のみに限られており、事業以外の用途は認められていません。
また、ビジネスローンを取り扱っているのは大まかに分けて3種類あり、融資基準や金利、融資限度額など、その提供会社によって大きく異なっているのが特徴です。


■プロパーローンとの違い
企業への融資と言えば、「プロパーローン(プロパー融資)」も存在しています。
このローンの最大の特徴は“保証会社を介さず金融機関がリスクを負担している”こと。金融機関側にも貸付金利を得られるというメリットがある一方で、融資金を回収できない可能性という大きなリスクも負うことになるため、おのずと審査は厳しいものになります。一定以上の融資実績と高い信用度がないとプロパーローンを受けることはできません。

プロパーローンを利用できない中小企業・個人事業主向けに作られたローン商品が、ビジネスローンです。


2. ビジネスローンの種類


ひとくちにビジネスローンと言っても、提供会社によって条件などが大きく異なります。
金利や借りやすさにおいてそれぞれ特色があるため、まずはひとつずつ詳しく見ていきましょう。


■消費者金融系
一般的に「ノンバンク系」とも言われるのが消費者金融系のビジネスローンです。
借りやすいというのが最大の特徴で、独自の審査システムにより審査スピードが速く、審査も甘い傾向があり、さらに無担保・保証人なしで融資が受けられます。

気軽に借りられるその反面、金利が高く借入限度額が低いという点がデメリットでしょう。ある程度のまとまった資金が必要になった場合や、長期的な返済を計画している場合などは、消費者金融系のビジネスローンは避けたほうが無難です。
少額かつ早急に資金が必要になった場合や、短期での返済が可能であるならば、消費者金融系のビジネスローンを選ぶと良いでしょう。


■銀行系
ビジネスローンの種類の中でも、比較的低金利で限度額も高い傾向にあるのが銀行系ビジネスローンです。
その分、他のビジネスローンより審査が厳しく、起業したてや事業が安定していない場合は審査が通りにくいというデメリットがあります。

とはいえ、銀行融資よりも審査時間が短く必要書類も少ないという点が魅力でしょう。中には返済期間が長いケースもありますので、取引経験があり事業が安定している方であれば銀行系ビジネスローンの活用をおすすめします。




■信販系
主にクレジットカードを発行している事業者が扱っているのが信販系ビジネスローンです。
消費者金融系より借入限度額が高く、銀行系よりは審査が厳しくないため、ちょうどその中間的なビジネスローンと考えても良いでしょう。

ただし信販系を利用する際は、それがビジネスローンなのかカードローンなのかを確認することは必須です。
どちらも“お金を借りる”という点は変わりませんが、

・資金用途
・融資スピード
・金利
・総量規制
・融資限度額

の5つが異なっています。
ビジネスローンの資金用途は事業用に限られていますが、カードローンは使い道に制限がありません。ビジネスローンはその制限がある一方で、融資限度額が高く総量規制の対象にはならないのです。
状況や条件によってはカードローンを活用したほうが良いケースもありますので、必ず確認しておきましょう。


3.ビジネスローンを利用するメリット


ビジネスローンは一般的な融資よりも金利がやや高めで、すぐに融資が受けられる特徴があります。
ビジネスローンを利用することによって得られるメリットはこちらです。


■総量規制の対象にならない
まず、ビジネスローンは総量規制の対象になりません。
貸金業法で「個人の借入金額は、年収の3分の1まで」という規制があり、これを“総量規制”と呼びます。企業の場合は関係ないのですが、個人事業主にはこの規制が適用されてしまうため、「事業拡大のための資金がほしい」「早急に資金が必要になった」などという状況でも、規制を超えてしまえば借りることができないのです。

しかしビジネスローンならばこの総量規制の対象外とされているため、個人事業主でも年収に関わらず十分な融資を受けられる可能性があります。


■融資スピードが速い
申し込みから融資までにかかる日数が短いという点もメリットです。
公的機関やプロパーローンなどは金利が低いという傾向がある反面、審査に時間を必要とします。最短でも1ヵ月前後、中には3ヵ月ほどかかることもめずらしくありません。

ビジネスローンは審査を簡素化している提供会社が多いため、およそ1週間から10日前後、場所によっては即日融資を受けることも可能でしょう。


■保証人を必要としない
無担保・無保証で融資が受けられるのもビジネスローンのメリットと言えます。
不動産や売掛債権を担保として求められるものもありますが、多くの提供会社では無担保で利用が可能です。
中小企業や個人事業主は特に「担保に入れる不動産を所有していない」「保証人になってくれる人がいない」ということも多いでしょう。そのような場合でも、ビジネスローンならば借り入れがしやすいのです。




4.ビジネスローンを利用するデメリット


中小企業や個人事業主にはありがたいビジネスローンではありますが、もちろんデメリットもあります。
どのようなものがあるのか、しっかりと確認しておきましょう。


■資金用途が限定されている
“ビジネス”のローンなのでその使用用途は自身の事業にのみに限られています。事業以外に使用することは認められていませんし、事業を営んでいない個人は融資を受けられません。
事業以外の利用であれば、別のローンを利用する必要があります。


■金利が高い
ビジネスローンの金利は高く設定されていることがほとんどです。
無担保・無保証で、審査も甘い傾向にあるビジネスローンは、借りる側としてはとても便利な反面、貸す側からすればリスクが高いものとなります。その分、金利が高くなるのは当然のことでしょう。金利が高くなれば返済総額も高額になるため、緊急時の短期間での活用は良いですが、長期間の利用は避けたほうが無難です。


■借入限度額が低い
ビジネスローンでは大きな金額を借りることはできません。限度額は提供会社によって異なるものの、およそ数十万から数百万円を上限にしていることがほとんどです。中には1,000万円を限度額にしているものもありますが、あくまでも最高額であり個人事業主ではそこまで借りることは不可能でしょう。
大きくまとまった資金を調達したいのであれば、ビジネスローンは不向きであると言えます。


■他のローンの借入審査に影響が出る
住宅ローンや車のローンなどと同様、ビジネスローンでも新規借入時には、他での借り入れがないか審査が入ります。必要書類の中に決算書が含まれている場合があり、この中の貸借対照表でどれだけ借り入れがあるのかを確認されるのです。
いくら審査が甘いと言われているビジネスローンであろうとも、返済能力に問題があると判断されてしまえば、審査に落ちてしまうこともあります。


5.まとめ


不動産投資と言えば不動産投資ローンが存在していますが、不動産投資ローンの用途は投資物件の購入や建築などに限定されています。しかし、運用を続けていけば資金が必要になることはあるでしょう。その際に利用できるのがビジネスローンです。
ビジネスローンは中小企業や個人事業主向けのローン商品で、借入難易度が比較的低く融資スピードも速いという特徴があります。保証人や担保も必要としないものも多く、総量規制の対象外でもあることから、利用しやすいのがメリットです。

ただし便利なだけあって金利が高く、借入限度額も低く設定されているため、長期的な借り入れには向いていません。また、事業以外での用途も認められていないため、事業以外の場合は別のローンを検討する必要があります。
ビジネスローンを利用する際は、借入総額と返済能力のバランスを考慮し、検討に検討を重ねた上で活用することをおすすめします。

小雪