昨今、円安が急激に進んだことによって、海外在住・外国籍の方が日本の不動産に注目し、購入を検討している人が増加しています。その目的は、居住、投資、ビジネスと理由はさまざまなもの。しかし、日本国籍日本在住の方と違って必要手続きも異なるため、どうすれば良いのかわからないと疑問を持っている方も少なくありません。
そこで今回は、海外在住・外国籍の方が日本で不動産を購入するために必要な手続きと流れ、さらに注意点などを前半・後半に分けて解説します。



目次
1. 海外在住・外国籍で日本の不動産は購入できるのか
2. 不動産を購入するまでの流れ
3. 日本で不動産購入するために必要なもの
4. 不動産購入後にやるべきこと

1. 海外在住・外国籍で日本の不動産は購入できるのか


現在の日本には、海外在住・外国籍の方に対して不動産購入に関する法的規制がありません。土地の所有権にも制限がないため、日本に永住権を所有していなくても、ビザの種類も関係なく、不動産を購入することが可能です。

基本的に日本人と扱いは同じであり、海外在住や外国籍だからといって税金が別に追加されることもありません。
ただし当然ですが、日本の不動産を購入すれば所得税や固定資産税の納税義務が発生する点には注意しましょう。


■海外在住・外国籍の場合の注意点
日本で不動産売買する場合、取引のトラブル防止のために「不動産会社」を仲介するのが基本です。
そのため、まず不動産会社を選ぶところからスタートするのですが、この際“外国人の不動産取引経験が豊富な不動産会社”を選ぶようにしましょう。
購入時に問題になるのは言葉の壁だけありません。必要手続きや書類、送金方法などが日本在住の日本人と異なることから、外国人の不動産購入サポートに慣れた不動産会社であることが必須なのです。


2. 不動産を購入するまでの流れ


日本在住の日本人でも海外在住の外国人でも同様に、日本では不動産を購入することが可能です。
ただし、不動産を購入するまでの流れはやや異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

①不動産を探す
居住用なのか投資用なのかを明確にし、その目的にあった不動産を探します。
探す方法としては、インターネットなどを用いる方法が一般的です。英語や中国語などに対応したサイトも増えています。

②物件を下見する
気になる物件が見つかったら、下見をします。オンライン内見という選択肢もありますが、物件の現状や周囲環境などは、実際自分の目で見なければわからないことも多いでしょう。可能な限り、来日して直接下見することが望ましいです。

③買付証明書を提出
購入を希望する物件が見つかったら、購入の意思を伝える買付証明書を提出します。
なお、これを提出したら必ず購入しなければならないという法的拘束力はありません。

④支払方法を確認
現金で全額支払うのか、住宅ローンを利用するのか支払方法を決めます。
住宅ローンを利用するのであれば、金融機関に申し込みの手続きを進めましょう。

⑤重要事項の説明を受ける
物件や権利などに関する重要事項説明を受けます。
理解しにくい、不明な点があれば説明をし、内容をよく確認しましょう。

⑥売買契約書の締結
重要事項説明の内容に問題がなく、売主・買主の双方の意見が合致すれば売買契約を締結します。
このとき、手付金として物件購入価格10~20%ほどの手付金を支払うのが一般的です。

⑦決済と登記
売買契約の締結後、不動産購入の資金決済および、不動産の所有が転移したことを記録する登記手続きを済ませます。
引き渡しの手続きが完了した時点で所有権が転移し、入居が可能になります。

⑧財務大臣へ報告
外国籍の場合は、財務省へ事後報告します。
国籍が日本であれば必要ありませんが、外国籍の方が日本の不動産を取得した場合、外国為替及び外国貿易法(外為法)により不動産取得後20日以内に財務省への報告が義務付けられています。

報告が完了した時点で、不動産購入は完了です。




3. 日本で不動産購入するために必要なもの


不動産を購入するためには、購入費用をはじめ多くの書類が必要になります。


■不動産購入のための費用
日本で不動産契約時に発生する費用は、基本的に国籍や居住地で変わることはありません。
日本の不動産を購入する場合は、物件購入価格以外に以下の諸経費がかかります。なお、物件購入価格のおよそ8~10%ほどが目安とされています。

・税金
印紙税
登録免許税
固定資産税・都市計画税
不動産所得税

・金融機関を利用した場合
融資事務手数料
ローン保証料
金銭消費貸借契約書に貼る印紙税

・不動産仲介会社を利用した場合
不動産仲介手数料

・保険に加入した場合
火災保険料・地震保険料

・司法書士に依頼した場合
司法書士報酬


■準備しておく書類
国籍や居住地によって準備しておくものが異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。

・日本国内に居住する外国人の場合
外国人住民票
在留カード
印鑑証明書
印鑑

・海外在住の外国人の場合
住民票の代わりの書類(宣誓供述書など)
印鑑証明書の代わりの書類(サイン証明書など)
パスポート
実印

・海外在住の日本人の場合
在留証明書
パスポート
印鑑証明書またはサイン証明書
印鑑

日本では契約時などに書類に印鑑を押しますが、海外では印鑑を使う国はそれほど多くありません。
しかし日本においては、高額な金銭の取引が行われる不動産売買時には印鑑が欠かせないため、物件の下見時などで来日した際に作っておくと良いでしょう。




4. 不動産購入後にやるべきこと


無事に不動産購入が完了したとしても、まだすべてが終わったわけではありません。
不動産購入後にやるべきことはこちらです。


■不動産権利書の受け取り
不動産を取得後、およそ1週間前後で不動産権利書が発行されます。
海外在住の場合は、発行された書類を手元まで送付してもらうか、日本国内の親族に預けておくか、不動産管理会社に管理してもらうか、その扱いを事前に決めておきましょう。


■納税管理人の決定
日本で不動産を購入したのであれば、不動産所得税や固定資産税などが発生します。これは実際の居住に関わらず、税務署から税金納付書が送付されてきますので、期日までに税金を納めなくてはなりません。投資用であれば、確定申告も必須です。
そのため、日本で納税手続きを代行する「納税管理人」を決めておく必要があります。依頼できるような人物が日本にいない場合は、その不動産を管理する不動産管理会社に相談すると良いでしょう。


後半ではさらに、海外在住・外国籍ならではの注意点を詳しく見ていきます。

小雪