前半では、日本における不動産購入の流れから、必要なものまでを解説しました。
ここからは、海外在住・外国籍ならではの注意点などを見ていきましょう。



目次
5. 住宅ローンは利用できるのか
6. 海外在住のまま日本で不動産投資をしたい場合
7. 海外移住を考えている場合の注意点
8. まとめ

5. 住宅ローンは利用できるのか


居住用の不動産を購入する場合、住宅ローンを使うのが一般的です。
しかし、日本の金融機関で海外在住・外国籍の方が住宅ローンを組むのは簡単なことではありません。住宅ローンを利用するためのポイントと注意点を押さえておきましょう。


■永住権の有無
日本国内の金融機関の多くは「日本国籍であること、または永住許可を有すること」を融資条件として挙げています。
住宅ローンの返済は長期に渡ることが大半です。完済までの長期間、日本に滞在する意思があるかどうかを判断するものがこの“永住権”なのです。つまり、日本での永住権を持っており融資審査が通れば、日本人同様に住宅ローンを利用できるでしょう。


■永住権がない場合
永住権がない場合、国内銀行での住宅ローン利用は難しくなります。
しかし母国の金融機関が日本に支店を構えている場合、そちらの銀行で住宅ローンの相談をしてみるのも手です。また、アメリカ・イギリス・カナダ国籍を有している場合は、外資系ノンバンクの住宅ローンが利用できる可能性があります。

なお条件によっては、永住権がなくても国内銀行の住宅ローンを利用できるケースも存在しています。金融機関が十分信用に値すると判断しなければ融資は受けられませんが、条件を満たせば外国人でも住宅ローンや不動産ローンの相談ができる場合もあるようです。




6. 海外在住のまま日本で不動産投資をしたい場合


日本人でも海外在住のまま、日本国内で不動産投資をしたいと考える方も多いでしょう。
このケースで注意すべき点はどこなのでしょうか。


■住民票の問題
日本国籍を持っていても、日本国内に居住していなければ住民票が存在しません。そのため、日本で不動産投資しようと考えるのならば、住民票の代わりとなるものを用意する必要があります。
日本大使館や領事館で在留証明書とサイン証明書を取得できれば、住民票や印鑑証明の代用にできる可能性もあるでしょう。


■ローンの問題
海外在住の場合、日本国籍を有していても日本国内でローンを組むことは難しいと考えられます。また、住宅ローンは「居住するための不動産を購入するためのローン」であり、収益物件の購入時には使用できません。
手元の資金のみで購入可能な不動産を検討することになるでしょう。


7. 海外移住を考えている場合の注意点


日本で不動産投資をしているけれど急に海外転勤が決まった、または海外移住を考えている方も少なくありません。しかし、この場合でも気をつけなければならない点が存在しています。




■必須手続き
日本国内に不動産所得がある場合、海外移住後も確定申告および所得税の納税義務があります。
そのため、出国前には必ず日本で確定申告や納税手続きを代行する「納税管理人」を選任し、その届け出を税務署に提出しておきましょう。住民税に対しては市町村への届け出が求められるケースもあります。
あらかじめ出国前に、金融機関から自動的に納税できる「振替納税制度」の利用手続きを済ませておくのもおすすめです。


■借主へ通知
借主が法人の場合、オーナー(貸主)に発生する「家賃収入の所得税の源泉徴収とその納付の義務」が借主に移ります。何も聞いていない借主が放置してしまえば、借主に対して“不納付加算税”や“延滞税”が発生してしまうのです。
家賃を支払って借りているだけの借主にさらなる負担を課すことのないよう、借主のオーナーに通知した上で、納税管理人に依頼するか上述の「振替納税制度」を利用しましょう。


8. まとめ


現在の日本の法律では、日本の不動産を購入する条件に国籍や居住地は含まれていません。そのため、海外在住者・外国籍の方でも問題なく不動産を購入できます。
特に、外国籍でもすでに日本に居住している場合は、必要書類や手続きなどにそれほど大きな違いはなく、永住権を取得していれば住宅ローンを利用することも可能でしょう。その一方で、海外居住の場合は必要手続きや書類の準備を考えると、やや難しい部分も少なくありません。できる限り外国人のサポートが得意な不動産会社を選ぶことをおすすめします。

また、海外から日本国内での不動産投資を計画している方や、日本国内で収益物件を所有したまま海外移住を考えている方は、「日本国内での納税義務」があることを忘れてはいけません。最悪のケースでは不動産が競売にかけられる恐れもあるため、納税管理人を選任するか、口座から自動に引き落とされる振替納税制度の利用手続きを済ませておきましょう。

小雪