2021年以降、食品や日用品など多くのものの値上げが相次いでいます。
電気代も例外ではなく、複数の大手電力会社が「規制料金」の値上げを国に申請したこともあり、先行きを不安視している方も多いでしょう。不動産投資においても、電気代の値上げによって収支に影響が出ることも否定できないため、けして他人ごとではありません。
電気料金が高騰している理由や原因から、どのような対策が出来るのかを見ていきましょう。



目次
1. 電気代の値上げ状況と現状
2. 電気料金の内訳
3. 電気料金値上げの原因
4. 不動産投資に考えられる電気代高騰の影響
5. 電気代高騰対策と注意点
6. まとめ

1. 電気代の値上げ状況と現状


この冬、電気代の明細書を見て驚いた方も多いのではないでしょうか。
2021年から電気代は値上がりを続けていますが、いつまでこの状況が続くのでしょうか?


■電気代値上げの現状
大手電力会社10社のうち7社が、2023年4月以降の家庭向け電気料金の値上げを国に申請しました。
申請された値上げ幅は約28~46%弱であり、そのスケジュールは以下です。

▼2023年4月以降の値上げを申請
東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力
▼2023年6月以降の値上げを申請
北海道電力、東京電力


■4月の電気代値上げは先送りに
しかし経済産業省は、燃料価格の値下がりや円安が落ち着いていることを反映して、値上げ幅を圧縮して改めて申請し直すよう各社に指示を出しています。再計算には一定の時間を必要とするため、4月の値上げは先送りされる見通しです。
つまり、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の5社が予定していた4月からの値上げは、“延期”と考えても良いでしょう。

ただし、経済産業省はあくまでも「値上げ幅を小さく」というものであるため、値上げがなくなるというわけではありません。また、政府が現在実施している「電気・ガス価格激変緩和対策事業」に関しても、2023年9月の使用分からは補助額を半減するとしていることから、先行きを不安視する声も聞こえています。


2. 電気料金の内訳


電気代値上げの原因を理解するためには、まず電気料金の内訳を知ることが必須です。
電気料金はどのような仕組みで成り立っているのかを紹介します。

まず、一般的な電気料金は「基本料金」「電力量料金」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の3項目の合計値です。
このうち、基本料金は毎月定額、電気量料金および再生可能エネルギー発電促進賦課金の2つは月の電気使用量に応じて変動します。

昨今の電気代値上げは“燃料費調整単価の上昇”を要因としています。電気を作り出す燃料の調達コストが高騰したことによって、燃料費調達単価が上がりました。この燃料費調達単価は「電気量料金」に含まれているため、電気使用量はこれまでと同じでも負担する電気量の総額が上がってしまったのです。


■電気料金の上限が撤廃される?
電気契約プランによっては、電気料金に反映できる平均燃料価格に上限が定められています。この場合、燃料費が高騰しても上限以外の金額は請求されません。
なお、電気料金プランは大きく「規則料金プラン」と「自由料金プラン」の2つに分けられます。

・規制料金プラン
2016年4月の電力自由化以前から提供され続けている電気料金プランが「規制料金プラン」です。
今回各大手電力会社が値上げを申請したのがこの規制料金であり、基本料金や電力量料金を変更する際には国の許可が必須。そのため、価格が比較的安定しているプランでもあり、燃料費調整制度に上限が設定されていることから、比較的燃料費高騰の影響を受けづらいのが特徴です。

・自由料金プラン
その名の通り、電力自由化以降に誕生した電気料金プランが「自由電力プラン」です。
規制料金と違って法的制限を受けず、料金設定はもちろん上限設定の決まりもありません。つまり、各電力会社の判断で料金変更することが可能であり、燃料費調整制度の上限設定も撤廃も自由なのが特徴です。

実際、今回の燃料費高騰を受け上限設定を撤廃する動きが見られました。自由電力プランの場合は料金設定も各電力会社の判断で可能なため、場合によっては燃料費高騰による値上げの影響をもっとも大きく受けてしまうでしょう。
また、規制料金プランでも申請が承認されれば値上げが実施されるため、影響を全く受けないわけではありません。




3. 電気料金値上げの原因


電気代が値上がりを続ける理由は、「燃料費調整単価の上昇」であることをお伝えしました。
2021年以降、電力調達価格が悪化していることにより、新規申込受付の停止や料金プランの値上げをした電力会社や、燃料費調達額の上限を撤廃した電力会社も少なくありません。中には、業務停止を行う電力会社もあったほどです。
なぜここまで燃料の調達コストが上がってしまったのでしょうか。


■ウクライナ侵攻の影響
もっとも大きな原因となったのは、ロシアによるウクライナ侵攻であることは間違いありません。
ロシアへの経済制裁の一環として、欧米諸国がロシアからの資源供給を抑える動きを取ったことは連日ニュースになりました。
しかし、ロシアは資源大国であり、これが抑えられてしまったことで国際的なエネルギー争奪戦に発展。多くの資源・燃料を他国からの輸入に頼っている日本は、その影響をダイレクトに受けてしまったのです。


■円安の影響
2022年には急激に円安が進みました。円の価値が下がれば、海外の輸入コストは上がります。日本は電力の7割近くを火力発電で賄っていますが、火力で発電するためには燃料となる石炭、液化天然ガス、原油が必須。ウクライナ情勢によるエネルギー争奪戦と同時に、円安の影響で燃料の購入にかかるコストが高騰したことも原因のひとつに挙げられます。


■託送料金の値上げ
託送料金とは、電気を送るための送配電ネットワークの利用料金です。電力を消費者に届けるためには、この送配電ネットワークを利用しなければなりません。そのため、電気を利用するのであれば託送料金は支払う必要があるのですが、2023年4月には託送料金の改定(レベニューキャップ制度)が予定されているのです。
新制度ではいずれ値下げが期待されているものの、当分は送配電ネットワークの強化やデジタル化のための投資などに充てられるため、多くのエリアで4月以降からの託送料金が値上がりすることになっています。


4. 不動産投資に考えられる電気代高騰の影響


不動産投資も例外ではなく、電気代高騰の影響を受けています。
不動産賃貸業を行うにあたって、どのような影響が考えられるのでしょうか。


■共用部に使用する電気代の負担増
一棟マンションや一棟アパートを運営している場合、マンションやアパートの専有部分の電気料金はそれぞれ住民が支払いますが、共用部分の電気代はオーナーが負担します。
たとえば、エントランスや廊下の照明、オートロック、エレベーター、機械式駐車場、浄化槽などが挙げられ、電気代が値上がりすればその負担も大きくなるでしょう。


■オール電化マンションへの影響
電気代高騰の影響をもっとも大きく受けたのは、オール電化マンションを含むオール電化住宅です。この冬、高額電気料金で頭を抱えた家庭も少なくありません。
オール電化マンションは火災リスクが低い、災害時に電気は比較的復旧が早いなどといったメリットがある一方で、電気代高騰の影響を非常に受けやすいというデメリットが存在しています。一時は「光熱費が抑えられる」と人気が高まっていましたが、電気代値上げの影響をダイレクトに受けているのが現状です。

なお現時点では、オール電化マンションのイメージが大幅低下している、急激に資産価値が下がっているということは見られません。ただしこのまま電気代の高騰が続き、イメージが低下していくのであれば売却を検討に入れる必要があるでしょう。




5. 電気代高騰対策と注意点


電気代が上がれば経費が増え、利回りは低下します。
どのような対策がとれるのか、またどのような注意点があるのでしょうか。


■照明のLED化
共用部の電気代で大部分を占めているのは、ほとんどのケースで“照明”です。電気代を節約するのであれば、手始めに照明設備から見直すのがよいでしょう。まずは、共用部分の照明を蛍光灯からLED照明に交換したいところ。消費電力が蛍光灯の約3分の1になる上に、寿命が長いため交換回数も抑えられます。
また、場所によっては人感センサーや照度センサーなどのほか、タイマーで点灯・消灯する照明の導入もおすすめです。


■電力会社・電気料金プランの見直し
大元である電力会社や電気料金プランを見直して、電気の単価そのものを下げる方法です。
現在契約している電力会社内はもちろん、別の電力会社のプランと比較し、より安いほうへ乗り換えれば電気代の削減もできるでしょう。
ただし、大手電力会社以外の新電力は民間会社であるため、倒産、撤退、値上げリスクは常に存在します。また、決められた期間内に解約した場合は、違約金や解約手数料が発生する可能性がある点にも注意です。


6. まとめ


大手電力会社による4月からの値上げは先送りされたものの、ウクライナ情勢などによる資源価格の高騰や、円安は引き続き続くという見通しです。そのため、電気料金もしばらくは落ち着かない可能性は高いでしょう。今回はあくまでも“4月の規制料金の値上げ”の延期であり、中止されたわけではないからです。

電気料金の値上げは、投資物件の利回りにも影響してきます。オーナーとしてできることはそれほど多くはありませんが、照明のLED化やプランの見直しを行い、コストを抑えて値上げの波を乗り越えていきましょう。

小雪