ひと昔前までは、賃貸物件と言えば大家さん自らが管理を行う自主管理が一般的でした。しかし、昨今の賃貸物件の管理業務は、賃貸管理会社に委託する形が主流です。
賃貸管理会社に管理業務を委託する場合、当然ですが賃貸管理手数料を支払う必要があります。手数料は高いよりも安い方が助かりますが、安すぎるのもトラブルのもと。しかし不動産投資の経験がない、もしくは浅い場合、その手数料の相場がどのくらいなのかわからないものでしょう。

そこで今回は、管理会社に支払う手数料の相場から、良い管理会社を選ぶポイントや注意点までを解説します。



目次
1. 不動産を管理するために必要な費用
2. 賃貸管理会社が行う管理業務
3. 賃貸管理会社を選定するポイント
4. 手数料から見る管理会社選びの注意点
5. 管理委託のメリット
6. まとめ

1. 不動産を管理するために必要な費用


所有している不動産を賃貸物件として第三者に貸し出す場合、入居者の募集や家賃回収をはじめ、建物のメンテナンス、クレームやトラブル対応など、多くの業務をこなす必要があります。すべての業務をひとりで行うことは不可能ではありませんが、複数の物件を所有している場合などは難しいものとなるでしょう。

そのような管理業務を代行するのが、賃貸管理会社です。所有物件の賃貸管理業務を管理会社に委託する場合、“賃貸管理手数料”を支払う必要があります。


■賃貸管理手数料の相場
この賃貸管理手数料は定額ではなく、その物件から得られる総家賃の割合で決定するのが一般的です。
相場は家賃の5%前後であり、家賃が高く入居中の戸数も多いほどオーナーの負担も大きくなります。逆に家賃が低かったり、空室が多ければ負担は少なくなるでしょう。
中には、契約時や更新手続き時などに成功報酬が発生するケースや、空室時でも手数料が求められるケースもありますので、あらかじめ確認しておくことが重要です。


■サブリースの相場
賃貸管理を管理会社に任せるという点は共通しているものの、オーナーから賃貸物件を借り上げて転貸するのがサブリースです。すべての業務を一任できるほか、空室でも一定の家賃を受け取れるため、入居者がゼロでも安定した家賃収入が得られます。
その分、サブリース会社に支払う保証料は家賃の10~20%前後と、やや高めに設定されていることがほとんどです。


2. 賃貸管理会社が行う管理業務


管理会社に手数料を支払って管理を委託する場合、どこまでの業務に対応しているのか確認しておくことは必須。
ここでは一般的な例として、賃貸管理の業務内容を見ていきましょう。


■賃貸管理手数料に含まれている業務

・入居者募集
・賃貸契約書作成、締結、更新
・クレーム、トラブル対応
・集金管理、滞納催促
・退去立ち会い、精算
・原状回復見積もり

賃貸管理会社が行う賃貸管理は、主に入居者やお金に関する業務と、建物の維持管理業務です。
管理業務や内容は所有している物件の種類によって異なり、たとえば一棟マンションやアパートの場合は建物全体の清掃や点検も対応しますが、区分所有のマンションであれば建物全体のメンテナンスは含まれません。


■賃貸管理手数料に含まれていないもの

・リフォーム、クリーニング代
・設備交換代
・清掃、点検代

もちろん賃貸管理手数料の範囲で行う業務内容は各社で異なりますが、これらの業務は別料金になる可能性があります。管理会社が報告・見積もりを提示して、オーナーが最終的な判断をする形がほとんどですから、手間がかかることはないでしょう。




3. 賃貸管理会社を選定するポイント


賃貸管理会社であればどこでも良いとは言えません。物件の管理は、不動産投資が成功するか否かの重要なポイント。優良な委託先を見つけ出すことがそのカギになっていることは間違いないでしょう。
賃貸管理会社選びは、候補として数社を見つけたあと、比較して絞り込むという方法が基本です。
では比較する際、どこで判断するのが良いのでしょうか?


■管理戸数が多い
まずは管理戸数を確認します。優良な賃貸管理会社であれば、多くの不動産投資家に選ばれており、多くの管理物件を管理しているものでしょう。管理物件が多ければ管理業務のノウハウも蓄積し、スタッフや対応力も充実していることが期待できます。
多ければよいということではありませんが、管理物件数1万戸以上を目安にするとよいかもしれません。


■管理物件の入居率が高い
不動産投資における収益は、主に家賃収入です。そしてその家賃は入居者がいなければ得ることはできません。ならば、管理物件の入居率が高いかどうかは、大きな判断材料となるでしょう。
特に、収益の改善を目指しているのならば、空室を埋めることが大前提です。管理物件の入居率が高い会社は、空室を埋めるための対策も豊富であるということ。同時に、管理業務の質が高いということでもあります。
エリアや建物によって条件は異なるものの、入居率95%以上を判断基準にしたいところです。


■具体的な提案がもらえるか
こちらは入居率でも判断できますが、さらに踏み込んで判断したい場合は、空室を埋めるための具体的な提案がもらえるのかどうかを確かめておきましょう。広告掲載、敷金礼金の減額、入居可能条件の変更、リフォームの実施など、どのような施策で空室解消しているのか、事例を聞いておきます。

中には、家賃を下げることのみを提案してくる管理会社も少なくありません。
もちろん家賃の引き下げもひとつの方法ではありますし、高すぎる場合は適切な水準にすることは必要でしょう。しかし、家賃の安さで魅力付けをするのは最後の手段です。最安値まで下げてしまえば、オーナーの収益を損ねるばかりか周辺エリアの平均家賃も下げてしまい、価格競争が激化する最悪の状況に陥るおそれがあります。
家賃の値下げ前に可能な手段を提案してもらえるかは、重要なポイントと言えるでしょう。


■レスポンスに問題はないか
問い合わせや依頼への反応がスピーディかどうかも確認しておきます。対応があまりにも遅い管理会社とは信頼関係の構築が難しいですし、スタッフが不足していることも考えられるでしょう。

また、トラブル発生時の対応体制が整っているかも判断要素です。対応が悪かったり放置されるような場合、入居者が退去してしまう可能性も否定できません。
判断はやや難しい内容ですが、管理業務に携わるスタッフが多いところを選びたいところ。トラブル対応窓口がある管理会社などは入居者の安心につながり、空室の発生リスクを抑えるでしょう。


4. 手数料から見る管理会社選びの注意点


賃貸経営を管理会社に委託するのであれば、管理会社に支払う手数料は必要コストであることは間違いありません。その負担をできるだけ軽いものにしたい、と考えるのは当然のことでしょう。
しかし、管理会社を選ぶ際に「手数料の安さ」だけで選ぶのは危険。その理由はこちらです。


■サービスの範囲が限定的
賃貸経営の成功は、管理業務の質が左右するというのは過言ではありません。
委託した管理会社による管理状態が悪ければ、解約が多発するリスクがあります。空室からは家賃収入を得られませんし、短期解約が頻発してしまえば原状回復費用や客付けの成功費用の発生回数も増え、その負担も大きなものとなるでしょう。

もちろん、管理手数料が安いすべての管理会社のサービスが悪い、というわけではありません。
とはいえ格安の管理会社であるほど、管理サービスの範囲が限定されていたり、管理業務の質が低いという傾向があるのも事実です。


■総合的なコストが下がるとは限らない
手数料が安い管理会社に委託先を変更したものの、総合的なコストは上がってしまったというケースもあります。実際、手数料を格安にし、追加費用を高く設定している管理会社も存在しているのです。
たとえば、原状回復費用などが管理手数料以外のコストに含まれますが、このような工事費用を割高にすることで管理手数料の低さをカバーしている会社もあります。また、解約に違約金が設定されており、高額な違約金を請求されることもあるようです。

そのため、委託先変更にコストカットを期待するのであれば手数料のみを判断材料にせず、総合的な管理コストで検討する必要があるでしょう。




5. 管理委託のメリット


自主管理であれば手数料を気にする必要がないのでは?と考える方もいらっしゃるでしょう。管理委託は委託手数料以外にも、原状回復費用などといった別途費用を請求されることもあるため、収入を増やすために自主管理を検討している方も多いかもしれません。
しかし、不動産投資初心者や兼業投資家ならば管理委託を選ぶことをおすすめします。


■オーナーの負担が少ない
管理委託の最大のメリットは、自分で管理業務を行う必要がないということ。入居・退去者対応や日常清掃、点検、クレームやトラブル対応、家賃催促まで、必要な管理のほとんどから解放されることになります。時間はもちろん、精神的にもゆとりを持てるという点は非常に大きいでしょう。
特に、副業として不動産投資している兼業オーナーであれば、手数料を支払うだけで本業に専念できる管理委託は必須と言えます。


■専門家のノウハウを学べる
管理会社は賃貸経営・管理のプロであり、その管理方法を間近で見られるのもメリットと言えるでしょう。
初心者が最初から完璧な管理業務を行うことはまず難しいため、豊富な知識を持つ管理会社に委託して方法を学ぶというのもひとつの手です。


■必要なアドバイスを受けられる
自主管理のデメリットに、頼れる相談者がいないといった点が挙げられます。不動産賃貸経営には法律や建築などの法的知識が必須のため、判断内容によっては違法行為になる可能性も否定できません。
また、専門家である管理会社のほうが営業力に優れているため、空室を埋めるのが早いという傾向もあります。適切な空室対策やリフォームのタイミングなどの相談も受けられるでしょう。


6. まとめ


今回は、賃貸管理会社に支払う管理手数料の相場と、賃貸管理会社選びのポイントなどをお伝えしました。

賃貸管理手数料の相場は5%前後ですが、サービスの内容や管理業務、さらには手数料外に発生する費用は管理会社によって大きく異なります。そのため手数料の金額だけで選ぶのではなく、どこまでの内容をカバーしているのか、さらには全体的なコストも確認した上で比較検討するようにしましょう。

不動産投資を行っているオーナーのほとんどは、自主管理ではなく管理委託を選んでいます。もちろん自主管理にもメリットはありますし、手数料のコスト削減は魅力的に映るものです。しかし、収益のうちのわずか数%のコストで賃貸経営の大半を任せられるというメリットは、簡単に覆せるものではありません。
賃貸管理の実力次第で不動産投資の成否が分かれることも少なくないため、けして手数料の安さで選ぶようなことはせず、適切な管理をしてくれる会社を選びましょう。

小雪