入居希望者が賃貸物件に求める条件のひとつである「防犯性」。昨今は部屋に侵入して金品を盗む“侵入窃盗”も巧妙化しており、その対策として賃貸物件にも十分な防犯性を求めるケースも増加しています。

適切な防犯対策を施すことで退去率の改善や資産価値の向上など、長期的な経営の安定化にもつながるため、不動産オーナーとしてもぜひ高めておきたいところです。
そこで今回は、今すでに所有している物件でも導入可能な防犯対策や、それによって得られる効果などまでをご紹介します。



目次
1. 侵入手段と防犯対策の必要性
2. 今からでも導入可能な防犯対策
3. 防犯対策で得られる効果
4. まとめ

1. 侵入手段と防犯対策の必要性


住まいを選ぶ時、なによりも「防犯性の高さ」を最優先する人は少ないかもしれません。しかし必要ないと考える人もほとんどおらず、物件選びの条件のひとつに含めているのではないでしょうか。
防犯性の高い物件にしたいのであれば、まず侵入者の“侵入口”を知る必要があります。


■住居への侵入口は?
窃盗目的の住居侵入には、留守の家に侵入する“空き巣”、就寝時を狙う“忍び込み”、住民がいるにもかかわらず隙を狙って犯行をおこなう“居空き”があります。
警視庁による情報サイト「住まいる防犯110番」によると、侵入窃盗犯が主に使う侵入手段として、「無締まり」「ガラス破り」「合鍵」の3つが上位を占めています。これは一戸建て・共同住宅(3階建て以下・4階建て以上)かによってやや変化しますが、どれもこれら3種が含まれていることに変わりはありません。

つまり、所有物件の防犯性を高めるのであれば、この3種類の侵入口への対策を施すことが必須であり、有効な手段であると言えるでしょう。


2. 今からでも導入可能な防犯対策


防犯のためには個人の意識を高めることも大切ですが、窃盗犯が「侵入したくない」と思うような物件にするのが重要です。そのためにオーナーができるのは、防犯を意識した設備を導入すること。ここでは、所有している物件に今からでも導入可能な防犯対策を説明します。


■スマートロック
侵入口として狙われるのは、玄関や窓の無締まりであることはお伝えしました。そして、用いられる割合が高いのは「玄関」です。つまり、玄関の無締まり対策するのが効果的でしょう。

スマートロックとは、カードキーやリモコン、スマホといった電子機器を利用して鍵の開け閉めをするものです。オートロック機能に対応していれば、無締まりを防止できます。施錠・解錠の履歴が記録できるもの、指紋認証機能に対応しているものなど多くの種類があり、必要に応じて選べるのもポイント。さらに、穴あけ・シリンダー交換など工事が必要なものから、テープを貼り付けるだけのタイプもあり、導入難易度もそれほど高くありません。
なお、玄関ドアの形状によって取り付けられない可能性があるため、施解錠方法や機能を含めた検討は必須です。




■防犯フィルム
無締まりの次に多いのが、ガラスを破って侵入されるケースです。施錠をしっかりしていたとしても、破壊されてしまったら元も子もありません。
樹脂中間膜を挟み込んだ強化ガラスの導入がもっとも効果的ですが、費用が嵩んでしまうのが難点。コストを押さえつつ防犯性を高めたいのであれば、防犯フィルムの導入が良いでしょう。窃盗犯は侵入までに時間をかけることを避けますから、刃物でも破れにくいフィルムを内側に張り付ければ防げます。
また、災害時の飛散防止フィルムとしても期待できるほか、断熱性を高めたり、室内が見えにくくなる効果を持つ製品もありますので、そのような機能で選ぶのも良いでしょう。


■ディンプルキー
合鍵を利用した侵入を防ぐには、ディンプルキーの導入がおすすめ。ディンプルはくぼみを意味し、その名の通り表面に複数の小さいくぼみがある鍵です。解錠方法は一般的なものとそれほど変わりませんが、くぼみの深さが精密に作られており簡単に合い鍵が作りにくいのが特徴です。
さらに鍵穴の内部も複雑な構造になっていますので、ピッキングに強いというメリットも挙げられます。

鍵紛失時の複製費用が高額になる、時間がかかるなどのデメリットはありますが、防犯意識の高い物件であるというアピールポイントにもなるでしょう。


■防犯カメラ・ライト
防犯カメラの設置によって、犯罪率が低下したというデータがあります。窃盗犯は「人目につくこと」を嫌がり、誰の目にも触れずに侵入できる建物をターゲットに選びます。そのため、防犯カメラを設置して死角をなくすことは、犯罪行為の抑止力になると言えるのです。たとえ犯罪が発生したとしても、犯人を捜す手掛かりにもなるため、住民に安心を与えられるでしょう。
防犯カメラの導入には費用がかかるという点には注意。本物の防犯カメラとダミーを混ぜてコストを抑えるという方法もあります。同時に防犯ライトを付けるのもおすすめです。


■モニター付きインターホン
ドアを開けずに訪問者を確認できるモニター付きインターホンは、もはや今では必要不可欠といえるかもしれません。直接顔を合わさずに対応できますので、望まない客が玄関に侵入することを防ぎます。
録画機能がついているものであれば、犯罪が発生しても証拠として提示することも可能でしょう。


■共用部の定期的な清掃
共用部の定期的な清掃も防犯対策のひとつです。日常の掃き掃除から、敷地内の草刈り、植え込みの剪定、駐輪場の整理など、管理が行きとどいている建物は狙われにくい傾向があります。共用部分を清潔にしておくことで、防犯対策や治安維持につながることはもちろん、イメージが良くなることで入居率向上にも期待できるでしょう。




3. 防犯対策で得られる効果


費用をかけてまで防犯対策を施す必要があるのか、と考えている方も中にはいらっしゃるでしょう。しかし、不動産投資において所有物件への防犯対策は、入居者だけが受けられるメリットではありません。
防犯対策で得られるオーナー側のメリットとしては、以下が挙げられます。


■リスクの軽減
所有物件で実際に侵入窃盗が発生しても、オーナーが直接被害を受けるわけではありません。しかし、侵入時に破壊行動をおこなう傾向が強く、その修繕費が必要になるケースが大半です。
そして被害を受けた入居者は、同じ目に遭いたくないと退去する可能性が高まります。犯罪によって発生する空室リスクを避けることは難しいでしょう。

なお、空き巣などの侵入窃盗は事故物件に含まれないため、次の入居希望者への告知義務はありません。しかし、もしも知らないまま入居した後に何らかの方法で知った場合、トラブルに発展することも考えられます。軽微なものであったとしても、犯罪が発生した部屋に住みたいと考える人は多くはないのです。
所有物件への防犯対策は、このようなリスクを軽減する上で必須だと言えます。


■アピールポイントになる
入居者が物件を探す際、防犯設備の有無を判断材料にする人は少なくありません。かつては女性のひとり暮らしや、子ども連れの家族などがその中心でしたが、今では性別や世帯構造を問わず重視されているのです。
所有物件の防犯対策が行き届いていればアピールポイントとなり、速やかな入居者獲得につながるでしょう。


■資産価値の向上
防犯対策を施すことで、物件全体の資産価値を上げる効果も期待できます。安心感を与えることができれば入居者の定着率は上がり、退去率や空室率をおさえられるでしょう。
物件の売却時にも防犯設備の内容や質が価格に影響を与えるため、有利になることが考えられます。


4. まとめ


犯罪数そのものは減少傾向にあるものの、その手口は巧妙化しているため、住居に「防犯性」を求める傾向が強まっています。
侵入窃盗による侵入手段として用いられることが多いのは、無施錠のドアや窓、ガラス破り、合鍵の3種類です。この3種を重点的に防犯対策を施すことで、入居希望者に検討してもらえる可能性が高まるでしょう。

防犯対策には内容によって多額の費用がかかるため、躊躇している方もいらっしゃるかもしれません。しかし、トラブルやリスクを回避し、物件の資産価値の向上も期待できる防犯対策は、賃貸経営をする上では必須とも言えるものです。防犯対策は「コスト」ではなく「投資」。出口戦略を考慮に入れた上でも、所有物件に適した防犯設備の導入をおすすめします。

小雪