不動産投資とは、マンションやアパート、一戸建てなど物件を所有し、それを第三者に貸し出すことで家賃収入を得るものです。家賃収入が定期的に得られるという事が最大の魅力になるわけですが、それには入居者がいることが大前提になります。入居者がいなければ収入を得ることは一切できないため、安定した収入を維持するためには「空室リスク」をいかに上手く抑えるか重要になるわけです。

その空室リスクを回避するためにもっとも重視しなければならないのは、やはり立地に他なりません。
今回は、物件選びの際の「立地」に焦点を当ててみましょう。



目次
1. 人口減少社会でも需要が続くエリアか
2. 新しい街づくり「コンパクトシティ」
3. 入居者ニーズの変化
4. 自然災害リスクを最小限に抑えられるか
5. 将来を見通しての慎重な物件選びが重要

1.人口減少社会でも需要が続くエリアか


現在、日本の人口は減少の一途をたどっています。
少子高齢化は今後さらに進み、近い将来には人口が1億人を切ると予想されているにもかかわらず、新築の供給は盛んでとどまることを知りません。その一方で日本の空き家は増え続け、7戸に1戸は空き家になっているという、やや不思議な状況に陥っているのです。

さらに郊外・地方からの人口流失も顕著になり、衰退を始めている地域も少なくありません。このまま有効な対策が打たれない限りは、過疎化に歯止めをかけることは難しいでしょう。人口が減少すればコンビニやスーパーなどの商業施設は採算が取れなくなり撤退し、同時に働く場所も数を減らします。そうなればわざわざそこへ引っ越そうとする人もいなくなりますから、不動産の需要も同じように減少。需要がなくなるのであれば、家賃相場や物件価格も下落するのは当然のことです。
このような場所の物件は安さが魅力なのですが、将来性は望めません。不動産投資は長期的な投資スタイルであるからこそ、将来性のないエリアでの物件の購入は避ける必要があるのです。

すでに不動産投資を進めている方の中には、そうしたエリアに物件を所有している方もいらっしゃるかもしれません。今後も不動産投資を続けていきたいのであれば、空室リスク問題が悪化してから動き出すのではなく、出来るだけ余裕のあるうちに物件の組み替えも視野に入れたほうが良いでしょう。

人口減少社会で投資用物件を選ぶには、40年先も需要が安定して維持できるエリアであるかどうかを見極める必要があるのです。




2. 新しい街づくり「コンパクトシティ」


コンパクトシティとは、その名の通り小さな都市ということになります。このコンパクトシティにはいくつかの定義があるのですが、生活をする上で必要不可欠となる商業地や行政エリアを一定範囲に集め、さらに居住区域・都市区域を定めることで生活圏をコントロールしていく構想を指します。

上述した通り地方都市の人口は下降傾向が見られています。若い世帯が都心部へ流れることで、税金を納める層が減るのと同時に出生率も減少。その一方で高齢者が増えることで介護・福祉サービスなどの需要は増加しています。放置を続ければ近い将来、地方自治体の財政状況は悪化の一途を辿ることが予想されているのです。
また現在、郊外や地方では生活に車が必要不可欠になっています。車の運転が出来ない高齢者などの生活利便性を確保するため、交通手段を整えて徒歩と公共交通機関だけで生活できるようなコンパクトシティが必要不可欠である、と考えられるようになったのです。

こういった取り組みが進めば、コンパクトシティの外に住む人はいなくなり、需要も価格も下がることになります。
勿論コンパクトシティにもデメリットも存在していますし、中には運営がうまくいかずに債務が増加したところも存在しています。しかし人口が減少している地方都市でのいわば生き残りをかけたものでもありますし、実際に成功し成果を上げている場所では地価の上昇も見られていますので、そのようなエリアで物件を探す際には注視したいところです。


3. 入居者ニーズの変化


不動産投資を成功させるには「入居者の気持ちになって不動産を選ぶ」と言われていますが、入居者のニーズはライフスタイルや価値観、さらには流行などにもよって年々変化をしていくものです。
かつては祖父母・父母・子の三世帯など複数の世帯で住むというのが一般的でしたが、就職や結婚で親元を離れるケースも今では珍しくなく、最近では核家族、特に単身世帯が増加。その結果、3LDK以上といった大家族向けの需要が減り、逆にワンルームから2DK程度のコンパクトな部屋の需要が高まっているようです。

また、学生や新社会人といった単身者向けに、お風呂やトイレが共有のアパートも需要が高い時期もありました。今の価値観や暮らし方から見ると不思議に感じるかもしれませんが、各部屋にお風呂を別々に設置するよりも価格が抑えられますし、その初期投資が抑えられた分、家賃を低く設定することが出来る上、その分多くの部屋を確保できるというメリットが大きかったのでしょう。
近年では似たような共同生活スタイルに“シェアハウス”が広く知られていますが、プライバシーやセキュリティーの問題といったデメリットも存在していますので、はっきりとした対策や特徴がない限り、扱うにはやや難しいかもしれません。

入居者が求めるニーズは変化していきますが、不動産にはネット回線や内装設備などの「変えられるもの」と、間取りや立地などの「変えられないもの」があります。不動産投資は長期投資だからこそ、将来を見通して「変えられないもの」を検討する必要があるのです。


4. 自然災害リスクを最小限に抑えられるか


災害大国である日本に住み続ける限り、災害リスクから逃れることは難しくなっています。地震をはじめ、津波や台風、それに伴った大雨や暴風、高潮、洪水、土砂災害、さらには豪雪や火山噴火など自然災害を受けやすく、近年では気象災害が増加傾向にあります。

特に、2019年に東京都心部を直撃した台風19号の水害は記憶に新しいでしょう。この台風によって、“ハザードマップ(災害予測地図)”の確認が重要であることを強く知らしめたのは言うまでもありません。これによって、水害で被害を受ける可能性が高い地域や、土砂崩れが発生する危険がある土地、古い住居が密集し大火災が予想されるエリアを知ることができるのです。
同じように地震でどれだけ揺れやすいかなど、地盤の状態を調査した結果も公表されていますので、物件選びの際にこれらをチェックすることは欠かせない作業となっています。

地震保険や火災保険などを利用する手もありますが、リスクの高いエリアは保険料も高く設定されています。その分コストがかかる上、もし被災した場合には保険料がおりたとしても大きな損失になることには間違いないでしょう。
災害が増加傾向にある近年だからこそ、災害が起こりにくいエリアを選ぶことがこれまでよりさらに重要になっているのかもしれません。




5. 将来を見通しての慎重な物件選びが重要


不動産は“不動”産であるため、動かすことはできません。また、他の投資商品と比較しても流動性が低いことに違いないでしょう。
しかし、状況次第では保有資産の組み換えや、物件の買い替えを行うこともあるかもしれません。もちろんそれらは可能ではあるのですが、売却するだけでもコストはかかりますし、売りたいと思ってもすぐ買い手が見つかるとは限らないもの。タイミング次第では大きな出費になる可能性もあるため、尻込みして動けずにいた結果、深刻なダメージを受けてしまったというケースもないとは言い切れないません。

だからこそ、将来性と安全性をしっかりと検証する必要があるのです。
今の状況や値段が気になってしまうのは仕方のないことですが、後悔をしないためにはじっくりと慎重に物件選びをしましょう。

小雪