不動産を運用して利益を得る投資スタイルとして、一番名が知られているのは「不動産投資」でしょう。
そして、同じように不動産を対象にした「REIT(リート)」という投資方法が存在しています。
不動産投資を理解している人は多いでしょうが、「REIT」という名前は聞いたことはあるけれどよくわからない、仕組みが理解できないといった方も多いかもしれません。

ここでは、REIT(リート)と不動産投資の違いから、それぞれのメリットとデメリットをご説明します。



目次
1. 不動産投資とREITの違い
2. REITと比べた場合の不動産投資のメリット・デメリット
3. 不動産投資と比べた場合のREITのメリット・デメリット
4. 自分に合った投資方法を選ぶことが重要

1.不動産投資とREITの違い


「REIT」とは“R”eal “E”state “I”nvestment “T”rustの略で、不動産投資信託になります。投資家から資金を集め、その資金で不動産への投入を行い、得られた家賃収入や売価益を投資者に還元するという投資方法です。
元々アメリカで生まれたシステムのため、日本では日本の国内法に則った「日本版REIT(J-REIT)」を使うことになります。
ここでは、不動産投資とどのような違いがあるのか確認しましょう。

■不動産を所有する必要がない
REITが不動産投資と大きく異なるのは、不動産を自分で取得する必要がないという点です。
不動産投資で収益を得るためには、不動産の所有権がなければ始まりません。物件の選定からはじまり、資金の確保、所有するためには法的な手続きも必要ですし、多くの納税義務が発生することになります。
その一方で、所得税の控除を受けることが出来たり、所有している不動産を担保にして融資が受けやすくなるというようなメリットは存在しているのですが、基本的に手間がかかるものとなっております。

しかしREITでは自分で不動産を所有する必要がありません。
REITを通じて間接的に不動産のオーナーにはなるものの、実際に不動産の選定・購入を行うのはJEIT側になります。
実際に不動産を所有せずに、不動産を所有している会社の証券を購入する形になり、不動産運用の利益を分配金(株式でいう配当金に相当)として受け取ることが可能なのです。

■運用が不要
不動産を所有するだけで収益は得られません。第三者に住んでもらうことではじめて家賃収入を得ることが出来るため、不動産投資を行うのであれば賃貸契約が必須になります。そのためには入居者の募集や家賃督促から、トラブルの際にはその解決、建物が老朽化したらその修繕、退去後にはリフォーム手配など、様々な管理作業を行わなくてはなりません。管理会社に依頼することも可能ですが、一般的に家賃の数%を管理費用として支払う形になります。

REITはこれらが一切ありません。運営や管理はすべて専門家が行い、必要とされる作業は発生しないのです。
コストを差し引いた後の収益が分配金として年1~2回受け取ることが出来ますし、もちろん価格が上昇したときには売買することでさらなる利益を得ることが可能なのです。

■所得に違い
不動産の貸し付けによる所得は、「不動産所得」となります。
税率は所得税と住民税を合わせて最大55%ですが、不動産所得で損失が生じた場合、その赤字の全部または一部を“給与所得”の黒字と損益通算し、場合によっては税の還付を受けることもあります。

その一方で、REITで得られた分配金は「配当所得」、売却によって得られる所得は「譲渡所得(申告分離課税)」の2種類となります。
売却時に損失が発生した場合はREITでも損益通算が可能なのですが、REITは上場株式になりますので、その年度の上場株式等の配当金に係る“利子所得”の金額と損益通算することになります。

所得に違いがある分、損益通算の対象となる所得にも違いが出てきますので注意が必要です。

■利回りは一定範囲内
投資家としてはいちばん気になるのが利回り。
不動産投資の場合は運用する物件により差が大きく出てくるため、もちろん収益性も異なってきます。
築年数が経っているものや、駅から距離があるなど立地条件の厳しいような物件であれば、表面利回り15%以上で運用することが多くなっています。逆に、築浅のものや駅近、人気の高いエリアにある物件ならば、表面利回り5%ほどで運用するケースがほとんどとなるでしょう。

REITの利回りは銘柄ごとに異なるものの、想定利回りの相場は最低で2%ほどから最高6%ほど。
こちらも多少は差が出てくるものの、不動産投資と比べるとだいぶ幅が狭まっていると言えます。

■運用不動産の幅
基本的に個人の不動産投資家が投資物件として購入する物件は、主にマンション、アパート、戸建といった居住用物件がメインとなっています。他には駐車場やコインランドリー、最近ではトランクルームなども話題になってきていますが、従業員を必要としないコンパクトな規模の施設がほとんどです。

しかしREITは複数の人間から資金を集めている上、専門家の目利きによって不動産の取得、管理、運営が行われますので、購入する不動産の幅はとても広いものとなっています。マンションはもちろんのこと、ホテルや旅館、オフィスビル、大型商業施設、物流施設など、まさに多種多様。個人的な不動産投資では高額で手が届かない、難しい不動産にも投資できるというのはREITの大きな特徴のひとつなのです。




2. REITと比べた場合の不動産投資のメリット・デメリット


REITと不動産投資の違いが理解できたところで、“REITと比較した場合”の不動産投資のメリットとデメリットを考えてみましょう。

■不動産投資のメリット
収益・リスクのコントロールがある程度ではありますが可能であるというのがメリットに挙げられます。
例えば入居率が低いといった空室リスクに対しては、家賃の値下げをはじめ、設備の見直し、リフォームや空室保証を付けるという手を取ることもできます。自然災害や建物の老朽化といった問題については、耐震診断や補強工事の実施、土地・建物保証を付けるなどといった、様々な対処方法が考えられるでしょう。

REIT(不動産投資信託)は自分で運用しなくては良いものの、コントロールすることは一切できません。

■不動産投資のデメリット
やはり、取得や管理などといった運用はオーナー自らがしなければならない分、手間やコストがかかることがデメリットになります。

投資物件である不動産を取得した際には登録免許税と不動産取得税が、所有した後も毎年固定資産税をそれぞれ納税する義務が発生。税金だけでなく、取得時には法務局による所得手続きを行わなければなりませんし、仲介業者からは重要事項説明も受ける必要があったりと、取得するだけでも非常に手間がかかることは間違いありません。

無事に賃貸運用が始まったとしても、不動産会社と相談をすることも幾度とあるでしょうし、入居者の退去時にはリフォーム依頼、客付け対策なども行います。
賃貸経営の業務全般を管理委託として管理会社に任せる方法もありますが、やはりその分コストがかかることになります。

不動産投資はREITと比べると自由がある分、運用の手間もコストも必要になると考えても良いでしょう。


3. 不動産投資と比べた場合のREITのメリット・デメリット


今度は逆に、“不動産投資と比較した場合”のREITのメリットとデメリットを確認しましょう。

■REITのメリット
REITは投資信託ですから、一般株式の配当と同じように証券を保有していれば分配金を得ることが出来ます。中には年に1回というものもありますが、多くは年に2回決算が行われ、2回分配金が受け取ることが出来るという事です。

売買のタイミングは自分で行う必要があるものの、それ以外の維持管理はほとんど労力を要しないにもかかわらず、利益が獲得できるというのはREITの最大の魅力でありメリットであると言えます。

■REITのデメリット
不動産への投資であるREITは、賃貸市場や売買市場といった不動産市場だけでなく、株式と同じように経済情勢の影響も大きく受けます。
資産流動性が高いという点はメリットになるのですが、相場が暴落すれば同じように大きく値崩れする可能性も高く、価値や分配金が減少する恐れもあります。

維持管理は必要ないとはいえ、定期的に不動産市場や経済情勢に注目し把握しなければならないというデメリットが存在しているのです。




4. 自分に合った投資方法を選ぶことが重要


不動産投資とREITの違いと、メリット・デメリットは理解できましたでしょうか。
投資においてはリスクをしっかりと把握する必要がありますので、良いところだけでなく悪いところもきちんと見定めなければなりません。

■不動産投資に向いている人
一般的に、現物を確認し納得してから投資をしたい、利益やリスクを自分でコントロールしたい、担保価値を利用して徐々に投資対象を広げていきたいなどという方には「不動産投資」が向いていると言えるでしょう。不動産投資は基本、物件を長期保有し、長い時間をかけて収益を上げるというスタイルです。管理に不安があるのであれば管理会社のサポート受けることも可能なため、初心者にもはじめやすいという点も挙げられます。

■REITに向いている人
その一方で、投資のリスクや手間などをかけずに収益を得たい、比較的少額から投資を始めたい、維持費のような余計なランニングコストをかけたくないといった方は「REIT」が向いています。こちらは現物資産に投資しないため、維持費・税金がかかることがありません。入居者の募集をかける必要もありませんし、管理の手間もないので、本業との両立もしやすいのもポイントになります。また、売却も簡単にでき、いざという時には早い現金化も可能なのもメリットでしょう。


REITと不動産投資は同じように不動産を対象にする投資方法ですが、実際にはかなり異なっていることがわかりましたでしょうか。しかしどちらも不動産マーケットの影響を受けるというのは共通ですので、市場の傾向を確認する習慣をつけておくことも必要と言えます。

それぞれの特徴やメリット・デメリットを確認し、比較した上で自分がどちらに向いているのか判断して、これから始める投資方法を検討してみてはどうでしょうか。

小雪