不動産を購入するのであれば、新築にするか、中古にするかというのは、いつの時代になっても変わらない悩みです。
しかもそれが投資用のワンルームマンションであるのならば、悩んでしまうのはなおのこと。誰もが最初に引っかかる選択肢かもしれません。

実際にはどちらにもメリットとデメリットが存在しているため、どちらが良いとは簡単には言い切れないものでしょう。
しかし、どのような“スタイル”の投資をするかによって、新築が向いているか、中古が向いているかの傾向は見られます。
ここでは、自分の投資スタイルを考えながら、そのスタイルに向いた物件の選び方をご紹介します。



目次
1. どのような不動産投資をしたいのか
2. “新築マンション”のメリットとデメリットとは
3. “中古マンション”のメリットとデメリットとは
4. 返済年数から見た選択法
5. 自分の希望する「投資スタイル」から選ぶ

1.どのような不動産投資をしたいのか


ひとくちに不動産投資と言っても、大きく分けて2つの投資スタイルがあることはご存知でしょうか。
そのどちらをするかが、自分の「不動産投資のスタイル」になります。


■長期保有型
こちらはマンションを長期保有して、安定した家賃収入を得るスタイルになります。
この年数以上保有しているのであれば長期保存型、と定義されているわけではないためあくまでも傾向です。
周辺環境の大幅な変化や入居率の悪化などが起こらず、家賃収入が安定して得られる状態であれば、マンションを売却するという選択肢を選ぶことはほとんどありません。
最終的に不動産を売却して投資を切り上げる「出口戦略」を設定しないタイプとも言えるでしょう。
そのため、この型に向いているマンション、向いていないマンションがあります。

向いているマンションはこちらになります。
・通勤に便利など交通利便性が高い
・飲食店や商業施設が充実している
・人気があり担保評価が高いエリア
・マンションの管理体制が行き届いている


20年以上、30年以上と長期保有でコツコツと資金形成をしていくためには、変わらない需要が長く続くエリア・物件に限定されてしまうのです。


■短期保有型
その時点でのマンションの状態、周囲の環境の変化、収益性など様々な状況に応じて不動産の売却と購入を繰り返すスタイルになります。
こちらでもこの年数以下の所有であれば短期保有型であると言える定義はありませんが、5年以内で売却しようとすると短期譲渡となり、譲渡所得税が39%(所得税30%、住民税9%)とかなり高く徴収されるため、5年以上であることがほとんどです。
また、定期的な大規模修繕工事のための大幅な修繕積立金の増額など、投資効率低下の要因が発生する前に売却をするという戦略も。ほとんどのマンションでは、数年ごとに段階的な修繕積立金の増額が行われる“段階増額方式”が取られています。修繕積立金が上がればもちろん収益が減りますから、その前にマンションを売却して切り上げるという手段です。

これらのことから、約5~10年ほどを1サイクルとし、その期間家賃収入を得た後に売却するケースが多くなっております。
かなり短期的な計画になるため、投資利益の見通しが立てやすいというメリットがあるものの、短期で売却しても利益が得られるマンションの選別と、その売却のタイミングの見極めが初心者にはやや難しいという点がデメリットとなるでしょう。

他の投資と比べリスクが比較的少ないと言われている不動産投資でも、建物の経年劣化、周囲の環境の変化や人口減少による空室リスクなどは避けようがありません。その上で日々変化していく需要に合わせ、所有するマンションを変えていくというのがこの短期保有型になるのです。




2.“新築マンション”のメリットとデメリットとは


まずは、ワンルームマンション投資として“新築マンション”を選んだ場合のメリットとデメリットを見ていきましょう。
新築マンションは物件情報の集めやすさ、各住戸によって内容が違うといったこともありませんし、誰も1度も住んでいない状態ですから周囲の住民トラブル、さらには見えない部分の劣化などにも気をつける必要もないため、マンション投資初心者にも向いていると言えるかもしれません。


■新築マンションのメリット
・全ての設備が最新できれいな状態のため人気がある
・修繕金が抑えられる
・長期間の融資を受けることもできる
・減価償却終了までの期間が長い


やはり建てられたばかりのきれいなマンションというのは、それだけで人気が高くなります。新築プレミアムという言葉もあるほどで、家賃が周囲の相場よりやや高めに設定されていても、“新築マンション”というだけで入居希望者からは魅力的に映るのです。
また、同じような理由で全ての住宅設備機器は新しい状態ですから、築10年ほどの間は修繕費もかかりにくくなります。中古マンションのようにリフォームなどを行う必要も一切ありません。

それだけではなく、“減価償却”を長い期間受けられるのもメリットに挙げられます。
マンションの構造はほとんどがRC造(鉄筋コンクリート造)で建てられおり、その法的耐用年数は47年ほど。減価償却はその期間受けられますので、新築の状態で購入すれば、最大47年間も節税効果を活かすことも可能なのです。不動産投資ローンを30~35年で返済するのであれば、返済額が抑えられるこの効果は特に重要と言えるでしょう。


■新築マンションのデメリット
・物件の価格が高額
・購入後の資産価値の下がり幅が大きい


何よりも物件価格が高額になりやすいのが最大のデメリットです。
そのため自己資金がある程度以上必要となり、これがマンション投資を始めようと考える人たちのハードルのひとつとなっていると言えるでしょう。必要な自己資金が高額になればなるほど利回りは少なくなり、キャッシュフローも小さくなってしまうもの。しかし想定外の出費に備えないというわけにもいかないため、その分の予算も上乗せして確保しておかなくてはなりません。

さらに資産価値の下がり幅が、新築マンションでは特に大きいことも注意です。
新築マンションは建築から1年が経過、または1度でも人が済めば新築ではなくなり、中古マンションになります。新築マンションから中古になることで下がる価値は、およそ20%ほどと言われています。再開発など周囲の環境の変化によっては、中古になってから価値がさらに上がるものもあるでしょうが、基本的には中古になったタイミングで資産価値はガクンと落ちることになるのです。


●新築マンションであれば長期保有型投資がおすすめ
減価償却を長い期間受けられること、購入後に資産価値が大きく下がり短期での利益が出しにくいことなどから、新築マンションは「長期保有型」の投資スタイルのほうが良いという結論になります。
新築マンションを投資マンションとして購入するのであれば、長く保有することを前提に、需要が続く立地条件の良い物件を選ぶことが重要でしょう。


3. “中古マンション”のメリットとデメリットとは


次に、ワンルームマンション投資として“中古マンション”を選んだ場合のメリットとデメリットを説明します。
不動産投資用の物件として中古マンションを運用するにあたって、中古マンションならではの大きなメリットもある一方、新築マンションと比較するとはっきりとしたデメリットがあることが特徴です。


■中古マンションのメリット
・物件の価格が控えめ
・利回りが高い傾向がある


新築マンションと比較すると、安価でマンションを購入することが可能なのが最大のメリットとなります。
特に注目すべきなのは、購入価格が安いことによる利回りの高さ。比較的新しい部類の中古マンションであれば家賃設定も高くすることが出来るため、新築よりも安く購入できる上に家賃収入を多く得ることも可能となり、高い利回りで運用することが出来るのです。
事前に入居状況や空室率、マンションの管理状態などを確認できるのも利点と言えるでしょう。

また、中古マンション投資の場合、マンションを購入するその時点で入居者がいるケースも多くなっています。
こちらはすでに居住している人をそのままにして不動産物件を売買する「オーナーチェンジ物件」と呼ばれるものになり、購入後すでに家賃収入を得ることが可能です。入居者集めに労力や費用をかけなくても経営を開始できるのは、中古マンションならではになります。


■中古マンションのデメリット
・修繕費が嵩む
・大規模修繕工事費の追加徴収の可能性
・家賃の下落
・空室リスク
・減価償却期間が短く低い


物件価格の安さや利回りの高さだけで判断することは、間違いなく失敗の原因となります。
いくら安値であったとしても、コンディションの悪いマンションを購入してしまえば、リフォームや機器交換などに多用の費用が掛かるかもしれませんし、マンションの大規模修繕を間近に控えていれば大幅に増額された修繕費を徴収される可能性もあります。表面利回りだけに気を取られて、実際には入居率がとても低く50%に満たないマンションも中にはあるでしょう。
マンション投資の失敗談のほとんどが、このようなリスクの高い物件を購入したことが原因となっているほどです。中古マンションを購入するのであれば、新築マンション以上に購入に慎重になる必要があるのです。


●スタイルはマンション次第
正直、デメリットのない中古マンションはほぼありません。そのデメリットを踏まえたうえで、メリットで十分カバーできるマンションであれば、「短期保有型投資」の物件として考えてよいかもしれません。譲渡所得と減価償却期間も踏まえると、やはり5~10年で売却して切り上げるスタイルが無難でしょう。

なお、中古マンションでも比較的築年数が浅く、建物の状態や管理体制が新築と大きな差もなく、立地条件にも問題がなければ「長期保有投資」が可能なマンションも存在します。




4. 返済年数から見た選択法


新築・中古マンションのメリットとデメリットをご紹介しましたが、最後に返済年数から考える選択法を見てみましょう。
それぞれに長期型、短期型と向いている投資スタイルがありますが、最終的には返済年数によって決定することになります。
例えば、4,000万円の新築マンションと、2,500万円の中古マンションがあるとします。
新築の返済年数は35年、中古は20年とし、どちらも金利は3.5%として考えてみましょう。


●新築マンションの場合
10年後、新築マンションの融資残高は17.5%減少し、約3,300万円のローンが残ってます。この状態で物件をたとえ売却できたとしても、新築マンションは購入後の資産価値の下がり幅が大きいため、売却価値だけでは融資残高の一括返済はかなり難しい状況です。
その結果、自己資金を返済金に充てなくてはならなくなります。


●中古マンションの場合
同じく10年後には融資残高は40.0%減少し、約1,500万円のローン残っています。新築では17.5%しか減ってないのに対し、こちらでは40%も減っていることがわかります。
この状況であれば、物件の売却価格で一括返済することが可能でしょうし、次の投資マンションを購入するための頭金分くらいは手元に残る可能性もあるでしょう。

このことから、「長期保有型は新築マンション」、「短期保有型は中古マンション」を選ぶことが望ましいことがわかります。


5. 自分の希望する「投資スタイル」から選ぶ


2種類の投資スタイルと、新築・中古マンションを購入した際のメリットとデメリットは理解できましたでしょうか。
投資用マンションとして新築を買うか、中古を買うかと悩む前に、まずは自分がどのようなスタイルの投資をしたいのかを考えておく必要があります。
その上で、

長期保有型:新築マンションまたは築浅中古マンション
短期保有型:中古マンション


これらを踏まえて、投資用のワンルームマンション探しを始めましょう。
不動産投資は新築マンションはもちろん、中古マンションであろうとも大きな買い物であることには違いありません。
不安を感じるようであれば信頼のおける不動産会社に相談しつつ、じっくりと検討を重ねて決断することが重要となります。

小雪