前半では、2022年以降の不動産市況を動かす要因から、2022年問題の内容についてまでをご説明しました。
ではここから、2022年問題の影響があると予測されているエリアから、政府による対策などを見ていきましょう。



目次
5. 2022年問題の影響が予測されているエリア
6. 政府による2022年問題対策
7. 2023年以降の不動産市況の概観
8. まとめ

5. 2022年問題の影響が予測されているエリア


土地の価格が下がるならば、このチャンスに購入をしようと考えている方は多いかもしれません。
実際に2022年問題の影響を受けると予測されているエリアはどこなのでしょうか。


■生産緑地の場所と広さ
生産緑地自体は日本全国で6.6万ha程あるとされています。
その大半が「東京都」、「大阪府」、「愛知県」といった三大都市圏指定市内に集中しており、確かにそれだけの土地がすべて市場に流れ込んでしまったら、都心マンションの価格も一気に下がってしまうかもしれません。

しかし実際はその可能性は低く、例えば東京23区のうちでも生産緑地が集中しているのは

・練馬区
・世田谷区
・江戸川区
・杉並区

などといった山手線外側のエリアの区ばかりであり、内側には生産緑地は存在していません。さらに、都心6区をはじめとした人気の都心エリアにも生産緑地はないのです。
農地を今も多く見かける練馬区や世田谷区でも、駅などの利便性が高い場所には見かけることはなく、バスで10分以上離れた閑静な住宅街にあることがほとんどです。このような農地がたとえ宅地として売却されようとも、お世辞にも立地が良いと言えませんので、「通勤に便利なマンションが一気に建つ」ということはまずないでしょう。
市街化区域内であるとはいえ、生産緑地の多くが郊外に存在しています。つまり、ファミリー向けの住宅地などが影響を大きく受けるとの見解も示されています。

その逆に、不動産としての価値と需要が高い人気のエリアには生産緑地がそもそもないため、2022年問題の影響はさほどないのではないか、とも考えられているようです。


■それ以外のエリアの影響は?
生産緑地が最も多いのは東京都であり、大阪府や愛知県、さらには神奈川県、埼玉県、千葉県などといった東京周辺の3県にも点在しているため、場所によっては影響がないとは言い切れません。

ただし、それ以外の地方エリアでの影響を心配する必要はないでしょう。
生産緑地法は「緑地保全」が最大の目的であることから、都心部よりも人口が少ない地方では指定する必要がそもそもありません。実際に地方圏で指定されている生産緑地はわずか100ha程度ですし、たとえ地方に生産緑地があったとしても、1992年の生産緑地法改正と同時に認定を受けた可能性は低いため、2022年の時点で30年経過していることも考えにくいです。


6. 政府による2022年問題対策


国も2022年問題による不動産市場の急激な変動を予測し、また同時に都市における緑地の保全を図るため、様々な対策が取られています。


■市民農園等整備事業の改革と拡充
農地を「都市にあるべきもの」とし、都市農業を大事な産業として位置づけた政府は、市街化区域内の農地における従来の宅地化や転用促進の方針を転換。国土交通省は「市民農園等整備事業」で生産緑地の買取りを後押しし、生産緑地の減少を食い止める対策が進められています。

それに伴い、2017年から生産緑地の面積要件を500㎡以上から各自治体の条例によって300㎡にまで引き下げられました。市民農園や農業体験公園とするには“500㎡以上”では広すぎるという判断されたのと同時に、面積が要件に満たず宅地化するしかなかった小さな農地も、生産緑地として指定を受けられる可能性が生まれたのです。



■特定生産緑地の指定による延長
そのまま農地として所有し農業を続けていきたいと希望する層のため、「特定生産緑地制度」が新たに創設されました。これにより、農地所有者の同意があれば、区市町村による特定生産緑地の指定が可能となったのです。
新たに指定を受けることで、生産緑地の買取り申し出可能期間が10年延長されることになりました。
この特定生産緑地は従来の生産緑地制度とほぼ変わらないため、当然、税の優遇措置を引き続き受けることが出来ます。農地転用などの行動も引き続き制限されることとなりますが、“10年”という見通しが立てやすい期間となったこと、また、10年後には再び延長することもできることから、より指定を受けやすくなったと言えるでしょう。


■行為制限の緩和
生産緑地内に設置できる施設は厳しく制限されており、改正前は温室や集荷場、農機具収納庫、選果場など、あくまでも「農業などを営むための必要な施設」のみに限られていました。しかし改正後は農産物を利用した収益的事業のための施設も設置ができるようになり、農産物の直売所や加工のための製造施設、さらには農産物やその加工物を必要材料とした農家レストランなどの施設も設置も認められたのです。

これにより、農家の収益性を高めると同時に、安定した農地の維持が可能となるでしょう。


■都市農地の貸借の円滑化
都市農地賃借法が制定され、第三者への生産緑地の貸付けが容易になりました。

生産緑地は相続納税猶予制度の適用がされますが、受けるためには「終身営農」が必須であり、第三者へ貸し出した時点で納税猶予が打ち切られてしまうといったものでした。
都市農地賃借法では第三者に貸し出しても納税猶予が継続するように改善されたため、自身や後継者不足による農業の継続が困難な状態であっても、生産緑地を維持する義務を守ることができるようになったのです。

また、農地法による賃貸借契約の自動更新が生産緑地では適用外となったため、安心して農地を貸せるようになったというのも、農地所有者にとっては大きなメリットでしょう。



●農地の大量放出の可能性は低い
2022年問題は2017年頃から話題に上がるようになり、地価下落を不安視している人はもちろんのこと、不動産購入のチャンスだと期待している人も中にはいたことでしょう。
しかし農業と緑地の重要さが再認識され、保護しようという動きが強くなっている現在、都会に残された生産緑地は大切に維持される時代へと変わっています。その上、生産緑地で育てられた農産物は「都会で作られた希少な野菜」としての注目も集め始めており、このまま農業を続けていきたいという所有者も少なくありません。

つまり、2022年問題の影響をまったく受けないわけではありませんが限定的であり、「懸念するほどの影響はないのではないか」との見方が強くなっています。このまま維持される農地が大半であり、市場へ大量放出される可能性は低いと言っても問題ないでしょう。


7. 2023年以降の不動産市況の概観


不動産投資を続けるにあたり、注視しなければならないのは2022年問題だけではありません。
2022年問題を超えた先、2023年以降の不動産市況はどう動いていくのでしょうか?


■2023年の景気動向予測
新型コロナウイルスの影響によって低迷が見られましたが、現在の首都圏の不動産価格や取引件数は落ちるどころか逆に伸びています。とはいえ、これは一時的なものである可能性も否定できません。中でも都市部のオフィス需要についてはこれまで以上に動きに警戒する必要が出てくるでしょう。

・2023年問題
2022年問題の次に訪れるのが、「2023年問題」と呼ばれるものです。
日本の人口はすでに減少を始めているものの、単身世帯や核家族の増加により世帯数自体は上昇を続けていました。しかしこの世帯数の増加も、2023年をピークにして減少に転じると予想されているのが“2023年問題”になります。
世帯数が減れば住宅需要も当然減ることになりますので、現在のままでは住宅の過剰供給になり、家賃収入の低下はもちろん住宅価格自体も下落する恐れがあるでしょう。

ただし、東京など人口が密集している都市圏はその減少率が穏やかであるため、急激に需要が低下することはないであろうとの見方もあるようです。


■大阪万博開催による不動産への影響
東京2020オリンピックの次に日本で開催される国際的大イベントが、2025年に大阪の夢洲(ゆめしま)で開催される大阪万博です。1970年に同じく大阪で行われた大阪万博も想定以上の来場者となり、大成功に終わったため、2025年の開催も大きな期待が寄せられています。
現在でもすでに再開発や交通インフラ事情が進んでおり、予定通りに開催できれば大阪府を含めた関西圏の不動産価格の上昇と需要増加が望めるでしょう。



■2025年には人口減少の顕著化も
超高齢化が進む日本では、「2025年問題」も見逃すことができないものとなっています。
2025年問題の背景には日本人口で最も多い“団塊世代”が絡んでおり、この世代全員が75歳以上の後期高齢者に突入するのが2025年にあたるのです。日本の全人口の18%程度の人が後期高齢者になるのですから、医療や介護といった社会保障が問題となるのは当然でしょう。

不動産投資においても、この2025年問題から逃れることはできません。
団塊世代の多くが不動産を所有しているため、これまで以上に不動産の相続が増加するでしょう。しかし相続しても放置される物件、そもそも相続者が見つからず手が付けられないといった物件も増えることが予想されています。空き家が増えれば不動産価値の低下につながり、出口戦略としての売却も難しくなるでしょう。
また、高齢化により人口が減少すれば入居需要も低下し、賃貸物件の需要と供給のバランスも崩れます。空室リスクも加速化し、家賃を下げても入居者が見つからないといった状況に陥ることも考えられるのです。

・政府による空き家問題対策
年々深刻化している空き家問題は、長い間各自治体に対処が任されていました。しかし社会問題にまで発展してしまったため、空き家に対して合法的に対応できるよう、2015年にようやく“空家等対策特別措置法”が制定。これにより、適正な管理を行わない所有者に対し、自治体が助言や指導、勧告などから、命令や行政代執行までを行うことが可能となったのです。


8. まとめ


現状のままの場合、2022年をはじめしばらくは大きな変動が見られる可能性は低い見通しとなっています。
2022年問題、2023年問題などと「〇〇年問題」と呼ばれるものをよく耳にしますが、不動産投資においては「この年に絶対価格が下がる」などといった確定的なものはありません。例えば2022年問題の場合でも、影響が出る場所または出ない場所、時期についても条件が異なるため、全国的な相場推移や不動産市場に多大な影響を与えるほどではないのです。

しかしあくまで可能性であり、やはり確定ではありません。
小さな変動にも対応ができるよう、常に情報収集を欠かさないことが重要と言えるでしょう。

小雪