収益物件は購入したらそれでおしまいではありません。状況などによっては、所持を続けるよりも売却したほうが良いという状況もあるでしょう。
しかし知識がないまま売却をした結果、「今はその時ではなかった」というケース、売り時に悩んでいた結果「売り時を逃してしまった」というケースもめずらしくありません。不動産売却は大きなお金が動くことになりますから、可能な限り失敗は避けたいところです。

そこで今回は、収益物件を売却するメリット・デメリットから、上手に売却をするコツや買い替えなどまでを解説していきます。



目次
1. 収益物件とは
2. 収益物件売却のメリット
3. 収益物件売却のデメリット
4. 収益物件売却で損しないためのコツ
5. 買い替えを行うという選択
6. まとめ

1. 収益物件とは


そもそも収益物件(投資物件)とは、第三者への貸出しや売却などによって“利益を得るため”に購入する不動産を指します。自分たちが住むために購入する居住用物件とは区別されており、購入する際には不動産投資ローン(アパートローン)を利用するのが一般的です。
基本は家賃収入から収益を得る目的であることがほとんどであり、一棟マンションから区分マンション、アパート、一戸建て、テナント、オフィスビルなどまで、家賃が発生するものはすべて収益物件に含められます。


2. 収益物件売却のメリット


まず、収益物件を売却することによって得られるメリットから見ていきましょう。


■まとまった資金を手にすることが可能
当然ですが、売却を行うことでまとまった資金を手にすることができます。急にお金が必要となった場合や、別の事業を始める初期投資金に利用することも可能でしょう。不動産運用を続けていくよりも、一気にまとまった金額を得られるというのは、とても大きなメリットと言えるでしょう。


■空室リスクの排除
収益物件とはいいますが、入居者がいなければ家賃を得ることができません。得られる収入がなくても、物件の管理費は必要となりますし、入居者を募集するための広告費用も必須となるでしょう。状況によっては収入が大幅に減ってしまう可能性も否めません。
空室リスクを売却によって排除することで、立て直しを図ることができるようになります。


■ランニングコストの発生や金利上昇リスクの排除
入居者がいれば毎月安定収入が得られるとされている不動産投資ですが、不動産は所有しているだけでも維持費が発生します。固定資産税などといった税金から修繕費などはもちろんのこと、設備の不具合が発生した場合にも対応しなければなりません。
もちろん安定した運用が続いていれば問題ないものの、金利の上昇やマンションの管理費・修繕積立金の値上げによって、そのバランスが崩れ一気に赤字に傾いてしまうこともあるでしょう。
このようなリスクごと手放すことができるのも、売却のメリットに含められます。




3.収益物件売却のデメリット


売却に伴うものはメリットだけではなく、デメリットも発生することになります。
考えられるデメリットはこちらです。


■定期的な収益が無くなる
収益物件を売却するということは、定期的な収益を得られる手段を失うことでもあります。生活費に充てていた場合は、影響を受けることも考えられます。
それでもまとまった資金が手に入るならと思う方もいるでしょうが、一時的な収益と定期的に得られる収益は性質が異なるもの。売却を行う場合は、長期的な目で見ることが必須です。


■売却に時間がかかる
メリットとして「まとまった資金が手に入る」とお伝えしましたが、即金として得られるわけではないため注意です。
不動産は流動性が低いため、売却までに時間がかかることも少なくありません。売却を開始してから完了するまでは早くても3ヵ月前後、遅ければ半年近くかかることもめずらしくないでしょう。もちろん、買主が現れなければもっと時間を要することになります。
特に築年数が経過している物件ほど売れにくくなり、リフォームが必要になるケースも。そうなればさらに時間がかかることになるでしょう。


■オーナーチェンジ物件ならではのトラブルも
入居者がいる状態で売却が行われている物件を「オーナーチェンジ物件」と言います。
買主側は利回りの計算がしやすく、購入後は即家賃収入が得られるというメリットがある一方で、購入前の内見が出来ない、入居条件や家賃の変更が不可能などというデメリットがあるため、購入者の幅がとても狭く売買価格も低いことがほとんどです。
また、購入前の入居者の状況の把握が難しいため、取引後にトラブルに発展してしまうなど、オーナーチェンジ物件ならではのトラブルも多くなっています。


4.収益物件売却で損しないためのコツ


収益物件を売却するのであれば、誰もが損をしたくないもの。
上手に売却を進めるためのコツはこちらになります。


■高く売れるタイミングを見極める
同じ収益物件であろうとも、状況によって高く売れるタイミングが存在しています。
ベストなタイミングとしては、

・物件価格が上昇している
・大規模修繕の前
・満室になっている

などが挙げられます。
大規模修繕は大きな費用がかかるため、修繕費用が売却価格を上回っているのであれば、その前に売却したほうが出費を抑えられることもできます。
また、「満室ならば売却しなくても良いのでは?」と考えがちですが、次の入居者が決まるまでの期間が長く、空室期間が続くことが増えたのであれば、入居者が見つかったタイミングで売却するというのも手です。入室状況は利回りや売却金額に直接影響するため、可能な限り満室に近い状態で売却することをおすすめします。


■準備期間を設ける
売却までは3ヵ月から6ヵ月程度かかるというのはお伝えした通りです。
ただしこれは不動産会社との媒介契約を結んだあとからの期間であり、準備する期間は含まれていません。ここからさらに、相場の把握や不動産会社による査定、書類を揃えるといった準備期間がプラスされることになるのです。これを忘れた結果、「高く売れるはずのタイミング」が過ぎてしまうという状況も考えられるでしょう。
早期売却を目指すのであれば、あらかじめ準備期間を設けることを忘れないようにしましょう。


■複数の不動産会社で査定を行う
できるだけ手早く済ませるためにと、一社のみにしか査定依頼をしないという方もいらっしゃるかもしれません。しかし、良い価格で売るためには複数の不動産会社に査定依頼をすることは必須となります。査定額は一定ではなく、不動産会社によって差が出ることがほとんどです。他の不動産会社のほうが高く売れる可能性もありますし、不動産会社によって相性も存在します。市場価格を把握する意味でも複数の査定を受けることは有効になるでしょう。
インターネットで簡単に依頼ができる一括査定サービスを利用するのも良い方法になります。




5.買い替えを行うという選択


収益物件の売却をする理由が「収益性の低さ」や「リスクの回避」なのであれば、収益物件の買い替えを行うというのも選択肢のひとつになります。
収益物件を買い替えることのメリットはこちらです。


■リスクが回避できる
まずは何よりも、古くなった収益物件を手放せるという点です。
築年数が高くなれば劣化も進み、入居率は下がっていきます。リフォームを行えばある程度ならば抑え込むことはできますが、やはりそれだけの費用が必要となりますし、修繕費だけでもかなりの額となってくるでしょう。無理に保持を続けるよりも、潔く売却を行ったほうが良いというケースもめずらしくないのです。

また、時代の流れによって「住みたい家」というものも変わっていくもの。1980年代に建てられたマンションの中には、当時流行した3点ユニットの狭小マンションも多く見かけることが出来ます。しかし現在ではこのようなマンションは避けられる傾向が強く、価格や賃料に期待することができません。
古い物件を手放しつつ賃貸需要に合わせた物件を新たに購入することで、このようなリスクを回避することが可能なのです。


■現在の金利への変更が可能
近年、超低金利時代が継続しています。しかし20年ほど前までは今よりも高金利であるのが一般的でした。
売却を行うことで高金利のローンを完済すれば、新しい物件は現在の金利で組みなおすことができるでしょう。
年数経過により、個人の与信枠も変化している可能性は高くなります。個人属性の状態によっては拡大していることも少なくないため、これを利用すればさらなるレバレッジを効かせられるようになるでしょう。


■全体のバランスが見直せる
不動産運用が軌道に乗り、所有物件が増えてきたのであれば、買い替えは全体のバランスを見直せるチャンスでもあります。
収益性が低く、リスクを抱えた物件を手放すのはもちろんのこと、相続を見据えて収益物件を見直すことは重要です。また、手間を必要とする一戸建てやアパートを手放し、運用の手間が少ない区分マンションに買い替えるというのもひとつの手段となります。
収益性はもちろん重要なことですが、「今」や「将来」を見据えることも大切なのです。


6.まとめ


この記事では、収益物件を売却することで得られるメリットから注意すべきデメリット、さらには買い替えという選択肢までをご紹介しました。

売却すれば当然ながらまとまった資金が手に入りますし、空室の発生や金利の上昇などといったリスクを回避することが出来ます。しかしその一方で、定期的な収入を得る手段の喪失、オーナーチェンジ物件ならではのトラブルの発生などといったリスクを伴うことになることは、必ず念頭に置いておかねばなりません。

売却による損をしたくないのであれば、まずはしっかりと「タイミングを計る」こと。そこからさらに「準備期間」を設け、計画に基づいて進めていきましょう。なお、査定は「複数の不動産会社に依頼する」ことは必須となります。

また、収益物件を売却する理由が不動産投資からの撤退でなければ、買い替えを視野に入れるのもよい方法でしょう。売却に伴うデメリットの回避にもなりますので、ぜひ選択肢に入れてみることをおすすめします。

小雪