「ファクタリング」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。ファクタリングとは、資金調達手段のひとつです。
不動産投資に限らず、事業を行うのであれば資金調達を求められる場面があるでしょう。そのような際、保有している売掛債権を売却することで、資金を手に入れることが可能なサービスです。早期現金化が可能なため、負債の返済が難しい状態での資金調達手段として有効な手段ではあるものの、上手に利用するためにはまずその仕組みを理解する必要があります。

そこで今回は、ファクタリングの基礎知識や仕組みから、注意点などまでを解説します。



目次
1. ファクタリングの基礎知識
2. ファクタリングの仕組み
3. ファクタリングのメリット・デメリット
4. ファクタリングの種類と注意点
5. まとめ

1. ファクタリングの基礎知識


ファクタリング(Factoring)とは、企業間の取引で発生する売掛債権を現金化する仕組みです。

売掛債権は、取引先や顧客から代金の支払いを受ける権利を指します。日本企業の多くは、先に商品やサービスを提供し、支払いは後に受けるという「企業間信用」を行っています。
例えば、1,000万円の商品を納品しても即金で代金を受け取れることはほぼなく、入金は数ヵ月先に振り込みなどでの支払いになることもめずらしくありません。また、入金期日通りの回収ができないこともあるでしょう。
たとえどれだけ高額な売り上げが発生しても、納品から支払時期までにタイムラグがあれば「売り上げがあっても資金がない」状態になり、黒字倒産に陥る可能性も否定できないのです。

ファクタリングはそのような企業から売掛債権を買い取り、管理や回収を代行するサービスになります。
すぐに現金化できるため、「今すぐに資金がほしい」と状況ならばまさに利用タイミングであると言えるでしょう。


2. ファクタリングの仕組み


ファクタリングの契約形態は、売掛先へ通知の有無で「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類に分けられます。
それぞれ仕組みが異なるため、詳しく見ていきましょう。


■2社間取引
サービスの利用者(債権者)と、ファクタリング会社の2社間で行うのが「2社間取引(2社間ファクタリング)です。

まず、利用者がファクタリング会社に売却を申し込むことで審査が開始。審査完了後の合意で契約が結ばれ、手数料を引いた現金をファクタリング会社から受け取ります。
その後、取引先(売掛先)から入金されたら、売掛金全額をファクタリング会社に支払うという仕組みです。

利用者とファクタリング会社の2社間のみで完結しているため、取引先に債権売却の事実を知られることがありません。また、手続きも少なく現金化までのスピードに優れているのも2社間取引きの特徴と言えるでしょう。
ただし、ファクタリング会社が取引先を直接審査できない点から、売掛金を回収できないリスクが存在しています。そのため、手数料が高めに設定されている傾向があるようです。


■3社間取引
サービス利用者とファクタリング会社に、取引先を加えたのが「3社間取引(3社間ファクタリング)」です。

最終的に、利用者からファクタリング会社に売掛債権が譲渡される点は変わりません。しかし、3社間ではファクタリング会社と取引先も契約が必要であり、取引先から直接ファクタリング会社へ支払いが行われるという仕組みです。

そのため、取引先にファクタリングの事実を知られてしまうのは必須でしょう。その後の影響が懸念されるのであれば、事前に説明するなど慎重に進めなくてはなりません。また、2社間よりも手数が増えるため、現金化までに時間がかかりやすい点なども3社間取引きの特徴となります。

その一方で、ファクタリング会社と取引先が直接やり取りが可能なことから売掛金未回収のリスクが減り、手数料は低めに設定されていることが多いようです。




3.ファクタリングのメリット・デメリット


売掛債権の支払期限を気にする必要がなくなるなど、多くのメリットが存在しているファクタリング。しかしメリットがあれば、デメリットも存在していることも事実です。利用を検討する前に、よく確認しておきましょう。


■メリット
ファクタリングは「売掛債権の売買」であり、負債(ローン)ではありません。つまり返済義務もなく貸借対照表での借入金に相当しないため、負債項目は増えず財政状態に影響を与えることがないのです。
また、取引先の未払いリスクはファクタリング会社が負担するため、未払いリスクを回避できる点もメリットでしょう。万が一、取引先が倒産して売掛金を回収できなくても、利用者が責任を負う必要はありません。

さらにファクタリングは「利用者の業績」に左右されず、あくまでも“取引先の信用力”が審査対象です。
通常の融資であれば業績に問題があれば審査は通りませんが、ファクタリングの場合はすでに所有している売掛債権の売却ですので、こちらの業績は審査の対象に含まれません。中小企業や個人事業主はもちろん、たとえブラックリストに載っていても、資金調達できる可能性があるのがメリットと言えます。


■デメリット
ファクタリング会社を通しますから、当然その手数料が引かれてしまうのがデメリットです。
手数料の目安は、2社間取引では売掛金の10~20%程度、3社間取引で売掛金の3~5%程度になります。3社間のほうが未回収リスクが低いことから、手数料は比較的安価です。しかし、取引先に債権譲渡の事実を通知する必要があるため、状況によっては2社間を選んだほうが良いというケースもあるでしょう。

また、メリットとして利用者の業績には左右されない点をあげましたが、こちらはデメリットにもなります。こちらの業績がどれだけ良くても、取引先の信用状況や経営状態によっては利用できないことも考えられます。

手早い資金回収ができるファクタリングではありますが、あくまで「売掛金の先払い」であることを忘れてはいけません。根本的な問題を解決しない限り、ファクタリングの利用を繰り返す可能性があります。手数料が引かれる分、本来の決済額よりも受け取る現金は少なくなるため、頻繁な利用は資金繰りをさらに悪化させることも否定できないのです。


4.ファクタリングの種類と注意点


ファクタリングには種類があり、目的に応じて使い分ける必要があります。
それぞれの違いと特徴はこちらです。




■買い取り型の特徴
取引きで発生した売掛債権を、ファクタリング会社に現金で買い取ってもらうのが「買い取り型」です。
一般的に“ファクタリング”といえばこの買い取り型を指し、迅速な資金調達の手段として選ばれることが多くなっています。また、ファクタリング会社からお金を受け取った後、取引先が倒産してしまった場合でも返還義務がありません。

ただし手数料が高く、銀行融資の金利よりも高い設定であることがほとんどのため、本来得られるはずの利益が減ってしまいます。時間に余裕があるならば、銀行融資を利用することをおすすめします。
緊急に資金が必要かつ、取引先の支払い能力に不安があるようならば買い取り型ファクタリングを選ぶのが良いでしょう。

なお買い取り型には、不動産で得られる将来的な収入を債権として売却する「家賃収入ファクタリング」、金融機関が一括して買い取る「一括ファクタリング」、海外輸出を伴う取引の際に利用ができる「国際ファクタリング」、診療報酬債権を現金化できる「医療ファクタリング」など、さらにいくつかの種類があります。仕組みとしては通常の買い取りファクタリングと同じと考えて問題ありません。

●買い取り型の注意点
取引先との契約書に「売掛債権の譲渡を禁止する」という記載がある場合、ファクタリングの利用はできません。当然ですが、支払期限を過ぎた不良債権も対象外です。

また、取引先の信用情報によっては利用を断られてしまうケースもあるほか、取引先に通知されない2社間取引でも、債権譲渡登記などから売却の事実を知られてしまう可能性も否定できません。中には債権譲渡登記なしでファクタリングが行えるケースもありますので、こういった会社を選ぶのも良いでしょう。ただし、ファクタリング会社のリスクもさらに高まってしまうため、手数料もさらに高くなる点には注意しましょう。


■保証型の特徴
保有している“売掛債権に保険を掛ける”のが「保証型ファクタリング」です。

買い取り型との大きく異なるのは、“売掛債権をファクタリング会社に売却しない”こと。売掛債権をファクタリング会社に保証してもらうことで、取引先の貸し倒れリスクを避けるサービスです。従って、取引先が倒産や支払不能になった場合は、ファクタリング会社から売掛金に相当する金額を契約の範囲内で受け取れます。

保証型ファクタリングの基本として、保証金が受け取れるのは「取引先が支払不能になった」場合のみです。早期に資金回収したいのであれば保証型は向いていません。未回収資金を発生させないためのファクタリングサービスなのです。

●保証型の注意点
万が一を考えて利用する保証型ファクタリングですが、その万が一が発生した際には即支払いが行われるわけではありません。ファクタリング会社が回収不能であると判断するまでは、補償金は受け取れないのです。
一般的に保証適用とされているのは、倒産や破産手続きの開始、会社更生手続き、民事再生手続きの開始、受取手形の不渡りなどが確認されたケースです。入金遅れなどは保証適用外ですので注意しましょう。

保証型「ファクタリング」とついているため買い取り型と混同されがちですが、保証型では資金調達を行うことはできません。早期資金調達が目的であれば買い取り型を、貸し倒れリスクを下げたいまたは確実に資金回収がしたい場合のみ、保証型ファクタリングを選択すると良いでしょう。


5.まとめ


今回は、ファクタリングの基本知識から、利用するメリットとデメリット、注意点などまで紹介しました。

ファクタリングは売掛債権を早急に現金化する資金調達方法です。急いで資金を手に入れたい時や、銀行融資が難しい場合はおすすめの方法になります。
また、売掛債権の未回収リスクを抑えることもできるため、安心して取引をしたい方にもファクタリングは良い選択肢と言えるでしょう。

ただし、特に買い取り型のファクタリングは売掛金の先払いであるため、利用しないと経営が難しいというのであれば根本的な問題を解決する必要があります。手数料がかかるため、頻繁な利用はさらなる資金繰りの悪化を招きかねません。
利用の際にはメリットだけではなくデメリットもおさえつつ、計画的に利用するようにしましょう。

小雪