こんにちは。ライターのねぎみじんと申します。

どういう経緯で本サイトに辿り着いて頂いたかは分かりませんが、
僕の記事を読んで頂いているということは、
不動産投資に少なからず興味を持って絶賛勉強中のみなさんがほとんどだと思います。

そんなみなさんにお聞きしたいのですがイールドギャップという言葉をご存知でしょうか?

簡単に説明すると、投資総額に対する年間収入の割合を示す利回りと、
借入れ総額に対する年間返済額の割合を示すローンとの差を求めた指標で、
物件選定やローンを活かせているかどうかの指標になります。

もし初めて聞いたという方や聞いたことはあるけど詳しくは知らないという方ならば、
ぜひこのイールドギャップを覚えて頂ければと思います。

物件選定時の参考にするのはもちろん、
キャッシュフローの予測やローンをしっかり活かせるかどうかを判断出来るようになりましょう。

というわけで今回は「イールドギャップについて」解説していきたいと思います。

 


 1. イールドギャップとは?正しい解釈


というわけでさっそくイールドギャップについて説明していこうと思うのですが、
そもそもイールドギャップとは英語でYield gapと書きます。
「イールド(Yield)=利回り」の「ギャップ(gap)=差、ズレ」といった意味になりますね。

これは何も不動産投資に限った言葉ではなく、
投資における投資利回りと長期金利の差の事を指します。
不動産投資においては「投資物件の実質利回りとローン定数との差」となります。

実質利回りとは年間の実質的な収入のことで、
ローン定数(K)とは借入れ総額に対して年間いくらの返済が必要かを示すもののことで、
それぞれの計算式は以下のようになります。

・実質利回り=(年間総収入-各種費用)÷不動産購入額×100(%)
・ローン定数(K)=ローン年間返済額÷ローン残高×100(%)


つまりイールドギャップとはこの2つの差となるわけなので計算式にすると

・イールドギャップ=実質利回り-ローン定数


となるわけです。

もっと噛み砕いた言葉で説明するなら、
物件に投資をしようとした時に自己資金だけで投資をした場合は、
もちろん諸経費を引いた利益は全て投資家が受け取れるわけですが、
自己資金+借入れもした場合は借入れの返済が必要なので受け取りの割合を考えなくちゃいけないですよね。

そこで指標となるのがイールドギャップというわけです。
ローン定数分は金融機関へ、イールドギャップ分は投資家へといったイメージです。

つまりこのイールドギャップがプラスになる場合は、
ローン返済額を除いたとしても収益が上がる投資という風に判断できます。
しかしイールドギャップがマイナスになる場合は、
ローン返済とのトータルでは収益が期待できない投資と判断できることになります。

またイールドギャップが大きければ大きいほど、
レバレッジ効果が大きい=融資を受けて効率的に投資を行なえるだろうという判断が付くと分かります。

実際に計算をする際にイールドギャップの事を「物件の表面利回りと借入れ金利の差」として、
例えば「利回り10%で金利が3%だからイールドギャップは7%」といった解釈があります。

この解釈には落とし穴があります。

まず表面利回りは諸経費を差し引いた計算ではないため実際の収益性を判断できません。
さらに借入れ金利で計算してしまうと返済期間を度外視してしまうことになります。

本来、月々の返済額というのは融資金額と金利、そして返済期間を基に確定するものなので、
正しいイールドギャップを計ることが出来ず間違った判断をしてしまうことになるので注意しましょう。

そのためイールドギャップを算出する際は、
「実質利回りとローン定数の差」で計算する必要があるというわけです。



 2. イールドギャップの正しい解釈での算出例


それでは簡易的なイールドギャップと正確な解釈でのイールドギャップを
具体的な物件例で算出して見比べてみましょう。

物件例:某一棟アパート

1年間の満室家賃収入:900万円
空室率:10%
維持管理経費率:5%
物件取得費:9,000万円

表面利回り:10%
実質利回り:8.5%


この物件を金利3.2%、ローン借入額8,000万円で購入したとして、
・簡易的なイールドギャップで計算した値
・返済期間15年とした場合のイールドギャップ
・返済期間を30年とした場合のイールドギャップ

この3つで比較してみます。
先に返済期間15年と30年のローン定数は以下のようになります。

・返済期間15年
毎月の返済額:672万2316円
ローン定数:8.4%

・返済期間30年
毎月の返済額:415万1688円
ローン定数:5.2%


では見てみましょう。

・簡易的なイールドギャップ
表面利回り10%-ローン金利3.2%=6.8%

・返済期間15年とした場合のイールドギャップ
実質利回り8.5%-ローン定数8.4%=0.1%

・返済期間30年とした場合のイールドギャップ
実質利回り8.5%-ローン定数5.2%=3.3%


このように簡易的なイールドギャップでは予測が実態とかけ離れて良く見えます。
この数値を信じて運用を始めてしまっては前項でも説明した理由から失敗の原因になってしまいます。

また正確な解釈でのイールドギャップで比較してみると、返済期間によってローン定数が変わってくるため
返済プランをしっかり考える必要がありそうだなというのが見えてくるかと思います。

今回は分かりやすいように金利を一定にしてみましたが、
実際には融資を受ける金融機関を選ぶ際に返済期間や金利が変わるため
一見金利が高そうに思えても返済期間が長くイールドギャップが高く取れるなら
キャッシュフローが潤沢に回ると判断出来るケースがあります。

というわけで、正確な解釈でのイールドギャップを把握しておくことで、
物件の選定、ローン返済計画、キャッシュフローの比較的正確な予測そしてレバレッジ効果を判断できることになり、
結果として不動産投資を成功に導くための指標となり得るわけですね。



 3. イールドギャップの向上方法と目安、注意点


イールドギャップの向上方法や目安、注意点についてもまとめてみます。

○イールドギャップを向上させるには
イールドギャップを上げるためには実質利回りを高めることとローン定数を小さくする必要があります。

具体的に挙げます。

実質利回りを高める方法としては、
家賃を引き上げるか入居期間を長くする事を心がけましょう。
どちらにせよ入居者(もっと言えばターゲット層)の満足度、ニーズを高める必要がありますね。

築年数が新しいに越したことはないですが、導入設備の強化などで改善できる可能性はありますし、
設備投資以外の部分でも空室リスクの低い物件や立地で選んでみたり、
他にも維持管理を含む経費が高くない方が実質利回りを高めやすいでしょう。

またローン定数を小さくする方法としては、
ローン金利と返済期間をしっかりと見定めローン年間返済額を小さくすることです。

分かりやすい例だとローン金利が同じであるなら、
返済期間が長い方が年間返済額としては小さくなるのでローン定数も小さくなるわけです。

○イールドギャップの目安
適正目安は1.5%~2.0%以上ともいわれていますが、
不動産の利回りというのは物件の様々な要素が絡んでくるため一概に○%以上と決め打つのは難しいでしょう。

項目2.イールドギャップの正しい解釈での算出例で挙げた例で見てみると、
返済期間15年のケースで0.1%、返済期間30年のケースで3.3%なので、
比較して考えると返済期間30年のケースの方が物件収益とローン返済のバランスが良いと考えられます。

結局のところイールドギャップとは不動産投資をする上で収益と返済のバランスを考える指標となる存在なので、
前述したような向上方法を参考にイールドギャップが低い原因を見極め、
改善させていく動きも必要だといえます。

例えば返済期間15年のケースでイールドギャップが低く感じたのであれば、
金利を下げてもらうような交渉をするかローンの返済期間をもう少し長めにするような行動を取ってみるのも手です。

ローンが安く出来るかもしれない借入れについては、以下の記事で解説しています。

    不動産投資

不動産投資ローンの借り換えは必要?メリットとデメリットを解説


○イールドギャップの注意点
散々説明してきたようにもちろん重要な指標となるイールドギャップですが、
それだけで判断してしまうと状況によっては合わない場合などもあります。

目安の項目でも説明したようにあくまで、
収益と返済のバランスを考える指標に過ぎないということを忘れてはいけません。

勘違いしやすいのが「物件自体の指標」と捉えてしまうことです。

イールドギャップの事を考え出すとそればかりになってしまう人もいますが、
重要なのはあくまで不動産投資で成功することです。

不動産投資というのは物件によって状態や条件も異なりますし、
投資家によって投資目的いわゆる何をもって成功とするかも異なります。

不動産収益よりもローン返済が多くなってしまうと、
キャッシュフローが十分に回らず自己資金を追加して返済する必要があったり、
空室や設備修繕など突発的な支出などで運用が出来なくなってしまうと困るので
ある程度の目安を判断するためにイールドギャップを算出するのです。

イールドギャップが多少低いからといって単純にその物件や各条件が全く良くないという風には言い切れません。

中にはインカムゲインではなくキャピタルゲインを目的とするケースもあるかもしれません。
その場合は、物件売却時に収益が上がる事に対して重きを置くべきです。

あくまでもイールドギャップは指標であり物件選びの判断基準の1つにしか過ぎないのです。



 4. 目的によってはイールドギャップを気にしなくてもいい?


前項でも触れましたが、目的によっては、そこまでイールドギャップを気にし過ぎる必要はないかもしれません。
不動産投資を副業として考えているのであれば、
本業で安定した十分な収入があるなら問題はないはずですよね。

とはいえイールドギャップが極端に低い、例えば大きなマイナスの状態であれば、
シンプルに損していることになるので、あまり好ましくないかもしれません。

不動産投資においてメリットとも言うべき、
家賃収入による節税対策や将来の年金対策のような副収入を目的とするならば、
イールドギャップを出来るだけ大きくするような物件を血眼で探す必要は無いでしょう。

特に東京都内の好立地で新築物件などは、
物件費用が高くなるため実質利回りが低くイールドギャップも低く見えがちですが、
人口減少の影響も他の地域に比べて少なく入居率も高いです。

つまり長い目で見た時の資産価値、安定的な家賃収入の面から見ても安定性は高いと考えられるので、
節税対策や将来の年金対策、副収入の確保といった観点で見れば、
十分に不動産投資の目的と合致するのではないでしょうか。

    不動産投資

【初心者シリーズ】区分マンション投資はなぜ東京(23区)がオススメ?





いかがだったでしょうか。
今回は「イールドギャップについて」解説してみました。

簡易的なイールドギャップの算出結果を見せられて、
「イールドギャップが良いから投資しましょう!」という売り文句で営業されてもしっかりと反論できるように、
知識を付けるのはもちろん自分の目指す投資目的を明確化できるようにしておくと良いかもしれません。

イールドギャップが低くても目的がしっかりしているなら、
無理のないキャッシュフローなのかどうか不動産会社ときちんと相談できるでしょうし、
また1つ失敗を避けることが出来るのではないでしょうか。